表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/137

キャロラインの遺物(10)

本部の中は、どこも白い。

思えば、俺がユニフォームを貰った部屋(親父曰く、俺のための空間だったらしい)も真っ白だった。

宝箱を運び込んだこの部屋も白い。

やっぱり金星人は純白が好きなんだと確信した。


本部に戻ると、親父が俺に向かって

「リドレイたちのところへ行きたいところだが、先にコイツを届けておこう」

と宝箱をポンポン叩きながら言った。

「当然だよ!早く持ち主に返さなくちゃな」

「で、中身を貰うつもりなんだろ」

親父はニヤニヤとしている。

「まったくアタルは、わかりやすいの」

伯父さんまで、俺が巨大な真珠をゲットしたくてウズウズしていることに、すっかり気づいているようだ。

そうして、宝箱を運び込んだのがこの部屋だった。

それにしても、『いくつかは貰えるだろうし、なんなら全て貰えるかも』なんていう伯父さんの口車に乗っちゃったけど、本当に貰えんのかなぁ。

「伯父さん」

ふわふわ浮いている宝珠に声をかけた。

「お宝貰えるって言ってたけど、本当かよ・・ですか?まさか、俺のこと騙したりしてねぇですね?」

親父がプッと吹き出した。

「お前、緊張してんのか?それとも貰うことに必死になってんのか?なんか変な敬語になってるぞ」

「間違いなく、後者だの。本当に貰えるさ。俺からも言ってやろう」

「え!マジ!?いくつも入ってんだろ?そん中から自分で選びたい!」

「できれば全て欲しいのだろう?」

「当然だよ!一番デカいのを選ぶんだもんね〜」

ウキウキしている俺を見て、2人で

「まったく、強欲だの」

「本当ですね。でも今回頑張ってくれましたし、ご褒美ですね」

と言って笑い合っていた。

その時、サッと宝珠が床に降りた。

「あれ?伯父さん?」

親父の方は、肘を曲げて床と水平になるまで腕を上げ、拳と拳を胸の前で突き合わせている。

このスタイル、前にも見たことがある。

何が始まるんだ?と2人を交互に見ていたら、伯父さんが朗々と話し始めた。

「藍善にございます。ご無沙汰しておりました。長老様におかれましては、ご無事でおられ、何よりでございます。このような姿となりましたゆえ、床への着座となりますこと、何卒お赦しください」

しばらくの静寂の後、

「なぁんだ、バレてしもうたか」

という声がして、


にょろん


今回もまた浮きでて来たかのように、フンニャリとしたモノが現れた。長老だ!

「うわぁ!出た!」

はっ!しまった!

思いがけないところから登場したので、思わず叫んでしまったけど、こんな言い方したら、じいさんを崇めている伯父さんに大目玉をくらう。

「き〜さ〜ま〜・・」

げぇっ!? 宝珠から炎が!?

「フォッフォッフォッよいよい。それより、久しいのぅ藍善。死んではおらぬとわかってはいたが、杳として行方が掴めぬ。どこぞに囚われているのではないかと、気を揉んでおったぞ」

「畏れ多いことにございます」

あ、鎮火した。

よかった〜。じいさんのお陰で助かったぜ。

それにしても、伯父さんってばめっちゃ畏まってるじゃん。俺たちには偉そうにしてるくせしやがって。

親父の様子を伺うと、微動だにもしていない。

こないだは、じいさんと親しげに喋ってたけど、伯父さんのこんな様子を見たら、そんなん無理だよな。

そんなことを考えていたら、

アタル、何をしておる!ボケッとしおって!」

と伯父さんにどやされた。

「藍善は変わらんのぅ。しかし、そんなに堅苦しくすることはないぞ。アタエも、お主がいるといないのとでは、態度が180°違うわい。どうしてもアタルを相棒にしたいと言って、小芝居をさせおったわ」

「なんと!?」

あ、宝珠出火。

「なんだアタエ、そのポーズが気に入ったのか。ほれ、あのおかしなポーズも、アタルを騙すためにと言って、アタエが考えたのだ」

「ちょ、ちょっと!長老それ言っちゃダメなやつ・・」

「え!?あのポーズって嘘だったの!?」

親父が慌てている。プッ。ダッサ!

「あれはなかなか面白かったのぅ。フォッフォッ。アタルなぞ、わしをジジイと呼ぶのでな、長老と呼べと言ったのだ」

げっ!俺に飛び火した!!

「あわ、あわわわ、別に俺は・・」

やべぇ!宝珠から火柱が!

「き〜さ〜ま〜ら〜・・・」

「うわぁ!誤解ですってぇ!」

伯父さん、もとい怒れる火の玉に追いかけてられて、親子で必死に逃げまわった。

「待って、待ってくださいよ!これには訳が!」

「訳など聞かぬ!貴様ら親子は長老様になんて無礼を!」

逃げ回る俺たちを見て、じいさんはウハウハ楽しそうに笑っている。ここはお笑い劇場じゃないってぇ!!

「じいさん!止めてくれよぉ!」

ゴォッという音を立てて、火柱が一層燃え上がった。

「貴様!性懲りもなく、そのような呼び方をするとは無礼千万!!」

「ひえぇ〜!」

散々笑ってようやく満足したのか

「これこれ!落ち着け藍善」

と声をかけた。

途端に宝珠が炎を消火して動きを止め、じいさんの前に降り立つ。

「申し訳ございません。なんとお詫びをすれば・」

「フォッフォッ。詫びなどせんでよいわ」

と笑っていたが、不意にブルブルした頭を傾げると

「ふむ。詫びるとな・・・」

なんてことを言い出した。

え!?なんかさせる気?

突然、詫びを入れろと言われてドキリとした。

まさか、ドラマみたいに「死んでお詫び」なんて言わないよな。

絶対言うわけない。

多分言わない・・と思う。

いや絶対有り得ないんだよ。わかってる。

でもさ、伯父さんの剣幕を見ると、砂漠の中の砂粒一つ分くらい、有り得なくもない気もする。

「な、なんだよ、お詫びって。死んでお詫びってやつじゃねぇよな?そ、そんなの親父が可哀想じゃねぇか」

「は!?お前、何言ってんの?」

突然自分が名指しされて、親父が驚いている。

「だだだ、だって、元はと言えば親父のせいだし」

「はあぁ〜?」

親子喧嘩勃発寸前で、じいさんが「ほれほれ」と笑いながらやっと止めに入った。

「だって、じいさんが詫びを入れろって言うからじゃん!」

「貴様!またしてもジジイなぞと!」

ゴォッと音を立てて宝珠が発火したけど、構うもんか!

鼻息荒く肩で息をしていると、

「コラコラコラコラ!どいつもコイツも失礼な!」

そう言って、じいさんは真珠色の頭がピンクになった。


シューッ


「アタル!わしは『詫びる』と言っただけで、『詫びを入れろ』とは一言も言っておらんぞ!」


シューッ


「藍善!アタルは『ジジイ』とは言っておらんだろう!」

シューシュー言っているじいさんは、まさしく湯気を出したタコクラゲのようだ。

「いやはや面目ない」

親父は、伯父さんが小さくなっている(宝珠だけど)のを見てニヤニヤしている。ざまあみろとでも言いたげだ。


プシューッ


じいさんは「まあよい」と言って、ようやく元の色に戻った。

「詫びると言ったのは、キャロちゃんのことでな。お前たちに申し訳ないと泣いておるのだ。合わせる顔がないと言うので代わりにわしが来たのだが、詫びさせるので、許してやってはくれまいか」

「キャロちゃん?」

「キャロラインのことだよ」

「じいさんもキャロラインさんのこと知ってんの?」

「知ってるもなにも、キャロちゃんはわしのアイドルじゃ。スラリと長い足に、ふっくらとした薔薇色の頬、長い睫毛、抜群のスタイルで上品な立ち振る舞い。まさに理想なのじゃ」

じいさんが急に、ホンワカした夢見るジジイになった。

オエッ 気持ち悪っ

「これも我らの任務の一つ。滅相もございません」

伯父さんが恭しく答えている。

お?もしかしてこれは・・・

チャーーンス!

恩を売るチャーーンス!!

「おおっ!許してくれるか!」

「もちろんですよ!長老様」 

俺は、親父と伯父さんを押しのけて、颯爽とじいさんの前に進み出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ