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プロローグ 〜金星フォーエバー(1)〜

∈<∴∂△≧☆*∀=♭$⊃♯

ア・・シツレイ。キンセイゴ ワカラナイヨネ。

うぅん!あー。あー。よし!翻訳機能セット完了。


ボクはナノ。

金星人に作られた、頭脳を持ったロボット。

地球では人工知能搭載ロボットっていうらしいね。

ただボクは、ロボットっていっても、柔らかくてふわふわなんだよ。

どんなふうに「ふわふわ」かって?

表面が少しボツボツしてる柔らかい透明なボールの中に、いくつもの小さなボールが浮いている。この小さなボールには、それぞれに異なる機能や知識が入っていてるんだよ。見た目は、地球の生物でいうとボルボックスに似てるかもしれない。でもボクには目があるし、感情に合わせてボウっと光ることもできるんだ。ヒヨヒヨと浮かぶことだってできちゃう。可愛いでしょ!


まずは、金星について説明するね。

金星って知ってる?

太陽系第2惑星。地球のお隣の星だよ。

大きさも組成も地球とよく似ていて、双子みたいって言われることもある。夕方の西の空か、明け方の東の空で一際光り輝いているのが金星だよ。ほら!「明けの明星」とか「宵の明星」っていうでしょ。

明るくて美しいから、ビーナスって呼ばれるようになったらしいよ。太陽の光が反射してるだけなんだけど、空で輝いてるってだけで特別感があるよね。

地球とそっくりだけど、そっくりじゃない。

金星の自転を地球時間に換算すると、243日にもなるんだ。逆にいえば、金星時間に換算すると、地球は途方もないスピードで自転してるってことになる。ボクは、フィギュアスケートのスピンを観てると、速すぎて目が回っちゃうんだけど、金星も地球を見てたら、ボクと同じように目が回っちゃうかも!

他にも色々な特徴があるんだよ。

例えば、金星は全体が硫酸の雲で覆われているから、太陽の光はその雲に反射されちゃって、少ししか地表に届かない。だけど、分厚い二酸化炭素の大気に覆われているから、地表の熱が宇宙に逃げることができなくて、太陽に近い水星よりも地表の温度が高いんだ。太陽系の惑星の中で最も暑い、いや、熱いんだよ。

おまけに、皮膚に触れただけで酷い火傷になる硫酸の雨が降るんだ。雨っていっても、金星が熱すぎるせいで、地面に落ちる前に蒸発しちゃうから、正確には雨じゃないんだけどね。

美しさの裏には、激しい一面がある。皮肉だね。


でもね、みんなは知らないけど、金星も昔は地球みたいに生き物が住めたんだよ。

昔っていっても、途方もない昔、20億年も昔だけど。

38億年前に、「隕石重爆撃期」っていう、金星にも、地球にも、火星にも、隕石がシャワーみたいに降り注いだ時期(月にあるクレーターの多くも、この時作られてるんだよ)が終わると、地球より一足早く生命が誕生したんだ。

金星の生命進化のスピードは、ものすごく早かった。原初の金星人が誕生した時、地球ではようやく、シアノバクテリアがせっせと酸素を作りはじめた頃だった、って言えば、どれだけ早かったのかわかるかな。

まあ、金星人っていっても、正確には「人」ではなくて進化した頭足類なんだけどね。

金星の進化の過程は、地球と同じようなものだけど、地球の場合、大量絶滅で進化が大きく影響を受けたりしたから、金星より進化が遅れていても仕方がない、と思うよね。実は、大量絶滅には金星人が関係していたり、地球の進化をコントロールしたこともあるんだけど・・・その辺は、おいおい話すことにするよ。

ともかく、金星に現れた頭足類は進化して金星人になったというわけなんだ。

ちなみに、頭足類って何かわかるかな?

頭足類はイカやタコの類で、貝の仲間の軟体動物なんだよ。地球でも、タコは学習能力もあるし頭が良いってことが知られてるよね。そもそも地球のタコでさえ9個の脳みそがあるんだから、それがさらに進化したといえば、いかに金星人の知能が高いかわかると思う。

金星に現れた頭足類も、初めは五角形の小さな貝のような生き物だった。そこから枝分かれしながら進化を続けて、地球でいうタコ?になったところから、グッと進化が加速した。地球も大量絶滅がなかったら、今の金星人みたいだったかもしれないよ。


金星人についても説明しなくちゃね。

金星人の見た目は、タコというより、ちょっとクラゲっぽいかも。地球人が想像するタコよりずっと可愛いと思うよ。

もともとは、真珠みたいな白くて虹色に輝く色なんだけど、周りの景色に色を合わせることができる。そこはタコと同じだね。

まん丸で大きな2つの目は少し離れていて、そのかわり視野はとっても広い。地球人が左右で見える角度は200度くらいまでがせいぜいなんだけど、280度くらい見える。足は10本あって(イカと同じだ!)、そのうちの4本が手の役目をしてるよ。場合によっては、残りの6本も手のように使うことができる。だからとっても器用なんだ。おまけに体の硬さや形を自在に変えられるから、狭いところも簡単に通り抜けられるんだ。声帯がないから声は出せないけど、そもそもテレパシーが使えるから会話には困らない。

残念ながら、テレポートする能力まではなかったけど、そのかわり「テレポステーション」略して「テレステ」を開発したんだ。テレステ内に入ると、体が瞬時に分子レベルにまで分解される。そして、目的地のテレステで、改めて体が再構築されるんだ。

テレステは金星のあちこちに設置されていて、これを利用すれば、どこへでも行くことができたんだよ。金星は陸地が少なくて、ほとんどが海だった(ちなみに、海水は地球みたいに塩辛くなくて、ちょっと酸っぱかった)から、海の中と空に文明を築いていたんだけど、テレステを使えば深海だって天空だって、どこへでも瞬時に行くことができたんだ。地球で旅行に行くよりお手軽かもね。

金星人はとっても温和で、諍いもなくのんびり暮らしてたんだ。だけど、人口(っていうのかな?)が増えてくると、生まれ故郷である金星をだんだん大切にしなくなって、二酸化炭素がどんどん増えてしまった。もちろん、金星人ほどの能力があれば、二酸化炭素を分解する機械を作ることもできたけど、色々な資源を使い果たしちゃった金星人は、新天地を求めて金星を出ることにしたんだ。大きな火山の噴火も予測されてたしね。

そしてその新天地に選ばれたのが、地球ってことさ!

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