今日から騎士団は解散だ!
この世の中は恋愛至上主義だ。
どこもかしこも色恋にまみれて、うざったい。
と、ただいま恋愛に失敗した男が語っております。
そうです。今失恋したのです。
今目の前にいるブレスレットさんに告白して失敗したのです。
「ごめんなさい、いきなりはちょっと…」
至極真っ当です。俺はあなたとそこまで話してないんだから。デートとかしてないんだから。
関係のかの字も始まってない人にいきなり言われたら怖いでしょう。馬鹿です。
俺が黙っていると、彼女はこう切りかえしてきた。
「…あとその、私今月いっぱいでやめようと思ってるんです、騎士団」
嘘だろ!?
騎士団の主力のブレスレットさんが居なくなったら、俺たちパーナ騎士団は存続できないじゃないか!
もしかして俺の事嫌いだったのかな、
「いえ、そういう訳では無いんですほんとに。実は、私子供が出来ちゃったみたいで」
嘘だろ!?
もはや恋愛の土俵にも俺は入ってなかったということか!?ていうか子供!?
「まだ、わかんないですけど。念の為もう辞めようかと思って」
「まさか結婚してたなんて…。あ、だいじょぶですよ。団長には言わないんで」
団長はそういう恋愛沙汰には厳しい。ルドルフがそんな色恋の噂が出た時もなんか呼び出してたし…。
ここは言わない方がいいだろう。
「いえ実は団長さんからも告白されまして…」
「団長からも!?」
団長!あんたもかよ!狙ってたんかい!?
あんなに色恋に厳しかったのって、騎士団の規律をあげるためじゃなかったのかよ!
「三年前に」
さ、三年前。ととと、と、ということは。団長の子供…??
3年前といえば、ブレスレットさんが単独でスーパードラゴンを倒した時だ。確か単独といっても騎士団が干渉してなくもないな。あの時に、そうか。
「でもお断りしました」
「え。なんで」
普通に直球に聞いてしまった。
団長年収いいって聞くし、相手としては結構いい方だと思うんだけど。
まあ、それは個人の選択でしかないが。
「シャルベーニャ伯爵公に恋をしてしまいまして…!」
シャルベーニャ伯爵公。女遊びが酷いと聞く。髪が長く、目までおおってほとんど顔の全貌が見えない。国王式典で見た時目が見えなかった。だが、雰囲気はめちゃくちゃあった。若く、背も高くて、いけ好かないがまあ、いい男なのだろう。性欲はウサギなみだが。
そんな男と恋に落ちた…?
恋に落ちたのは彼女だけで伯爵公は彼女を肉体だけでしか見てない可能性が非常に高いぞそれは。
「もうほんとにカッコイイんです!背も高くて顔も可愛くて、ギャップ萌えって言うんですか!なんかもう全部最高で」
なんか、なんだろう。俺なんでここでこの人に告白しようと思ったんだろう。俺は好きな人がいる女性も判別できないほど鈍っているのか。
この人の目は本物だ。誰かに恋している人の目だ。なんで今まで気が付かなかったんだろう。
「…って言ったらもう次の返事が可愛くて可愛くて、でも男らしいところはちゃんとしてるんですよねー!もうそれが最高で!!」
「あの、もういいですか。自分から聞いといてなんですけど。俺はあなたに告白しに来たのであって、あなたの惚気けた話を聞きに来たわけじゃない。どうぞその話は別のところで。では、」
俺は個室の扉を開けた。