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◇第一話 新人宮女、〈伏魔殿(ダンジョン)〉に捨てられる

 転生主人公×後宮×ダンジョンという異色な組み合わせです。

 どうぞよろしくお願いします。


 ――どうしてこんな事になったのだろう。


 目前に巨大な穴がある。


 まるで奈落のような大穴で、底は闇に覆われて見えない。


 もしここから落ちたなら、上から助けが無い限り登って戻る事も不可能だろう。


「お前も災難だったな」


 後ろに立つ衛兵が、哀れみの声を発する。


梅衣(メイ)様の機嫌を損ねてしまうとは」

「哀れむ必要は無い」


 衛兵の隣に立った宦官が嘲笑する。


「後宮では位が全て。妃嬪(ひひん)とは、皇帝陛下の寵愛を賜る選ばれし者。その立場である梅衣様に粗相を働いた以上、どんな目に遭ったとしても文句は言えまい」


 偉ぶった台詞を述べる宦官に対し、衛兵も言いたい事はあれどもそれを胸の内にしまい、代わりに溜息を漏らす。


「あの、一つ確認ですが」


 そこで――。


 大穴を前にして立っていた女性が、振り返って宦官に問い掛ける。


 石壁に設置された松明の灯りに照らされ、彼女の顔がハッキリと見えた。


 衛兵は思わずゴクリと喉を鳴らす。


 端正な顔立ちに、凜々しい表情。


 体型も均整の取れたもので、頭から足下まで芯が通っているように姿勢が良い。


 後宮に仕える宮女の服を着ているし、性別こそ女性だとわかる。


 だが、どこかそんなものを超越した気配を感じる。


「もしも、朝まで生き残ることが出来たなら、この大穴から引き摺り上げるための縄を落としていただけると」

「……ふんっ」


 長い(まつげ)に縁取られた、水晶のように澄んだ美しい眼。


 その余裕に満ちた目で見詰められているのが気に食わないのか、宦官は少しイライラした声で答える。


「ああ、生き残れたならな」

「そうですか」


 彼女は顔を前に戻し、もう一度大穴を覗き込む。


 その瞬間だった――静かに彼女の背後へと近付いた宦官が、背中を押した。


 目を見開く衛兵、高笑いを上げる宦官。


 瞬く間に、彼女の体は穴の中を転がり落ちていく。


「………」


 彼女は斜面を転がりながら考える。


 この大穴は、縦穴ではなく微妙に斜面となっているようだ。


 その構造を理解すると同時、勢いを殺して加速をしないよう、動きを意識。


 的確に回転を制御する。


 ……やがて、穴の底へと辿り着いた彼女は、即座に体を起こす。


 見上げると、大穴の入り口は遙か上空。


 ふと、横へ伸ばしていた手に何かが触れた。


 徐々に暗闇へ目が慣れてきて、彼女は自身が触れたものが何だったのか理解する。


 横たわった、白骨死体だった。


(――どうしてこんな事に……)


 ここは、龍塒国(りゅうじこく)


伏魔殿(ふくまでん)〉と呼ばれる地下迷宮が各地に存在する、大国。


 そして今し方、その〈伏魔殿〉の一つに突き落とされた彼女の名は――野兎(ノト)


 国を司りし皇帝の住まう宮廷……その中の後宮に遂先日雇われたばかりの、新人宮女である。




 ■ □ ■ □ ■ □




 ――自分には前世の記憶がある。


 その事に野兎(ノト)が気付いたのは、旅の雑技団に拾われたばかりの頃だった。


 前世ではもっと文明の進んだ、現代のニホンという国で暮らしていた野兎。


 趣味はキャンプや山登りで、結構アクティブな趣向の人間だったようだ。


 まぁ、その趣味が災いし、ソロキャン中に崖崩れに巻き込まれ事故死してしまったようなのだが。


 野兎が自身の内に宿る異質な記憶に気付いてから、数年が経過した――そんなある日の事。


 雑技団が、突然潰れた。


 孤児だった野兎を拾い長年こき使っていた団長夫婦が犯罪に走り捕まったため、運営に関わっていた団員達もなけなしの資産を奪って方々に逃げ出し、事実上解散となったのだ。


 住む場所と働く場所を一気に無くした野兎。


 しかし、それは彼女だけでは無かった。


『野兎お姉ちゃん……あたし達、どうなっちゃうの?』


 野兎と同じ境遇で拾われ、同じく雑技団で働いていた幼い弟分・妹分達も路頭に迷う事になってしまった。


『……心配要らないよ』


 野兎は、不安そうな表情を浮かべる少年少女達に微笑む。


(……この子達を見捨てられない)


 幸か不幸か、ちょうど巡業で立ち寄っていたのは、この国でも最大の都――皇都だった。


 野兎はひとまず職を探す事にした。


 すると偶然、街中で後宮の宮女を選別している採用会が開かれているのを発見した。


 宮廷勤めとなれば、良い待遇を受けられるかもしれない。


 飛び入りだが申し込んでみたところ、なんと、採用官のお眼鏡に適い見事後宮に召し抱えられる事となった。


 流石に幼い子供達も宮廷に連れて行く事はできないが、後宮で働いた分の給金を外で暮らす皆に渡してもらえるという約束は認可された。


 信じられない程の好待遇に、野兎は思わず『本当に良いのですか?』と採用官に尋ねてしまった。


 中年の宦官と思しき採用官は、にこやかな笑顔で頷いた。


『容姿も申し分なく、雑技団で長年働いていたため体力にも自信あり。力仕事が得意という部分も気に入った。正に求めていた人材だからな』


 そう言った後、声を潜めてボソリと呟く。


『……君なら、梅衣様の宮に仕えても長持ちしそうだ……』

『……?』


 よく聞こえなかったが、とにもかくにも願った以上の食い扶持を手に入れられ、野兎も文句は無い。


 数日後――宮廷は後宮へとやって来た野兎は、晴れて新人宮女となった。


 後宮――皇帝陛下の側室達が住まう、女の世界。


 今日から、ここが野兎の寝泊まりする家にもなるのだ。


 さて、後宮内における基本的な知識を学び、準備を終え――数日後、野兎は梅衣という名の妃嬪の宮で働く事を命じられた。


 梅衣の宮へと向かい、同じく抜擢された同期の宮女達と並んで出迎えの準備をする。


『最初のご挨拶なんだから気の抜けた顔をしないように! シッカリ頭を下げて礼儀良く応答! 質問されたらキビキビ答える! 口答えなんてもってのほか! 許可されるまで笑うな、歯も見せるな!』


 先輩の宮女が、野兎達の周囲を歩き回りながら厳しく指導していく。


『わ、わぁ……なんだか、思った以上に大変な世界っぽいね』


 野兎の横から囁いて来たのは、同じく同期採用された新人宮女だ。


 そばかすの散った顔の、素朴な少女である。


 思わず不安から弱音を漏らしてしまったのだろう。


 野兎は、鼻先に指を当てて『しっ……』と囁く。


『無駄口を叩くと叱られるよ』

『そこ! 何をブツブツ話している!』


 先輩宮女が、内緒話をしていた他の新人達を叱咤している。


 それを見て、そばかすの子もピシッと背筋を伸ばした。


 野兎も口を閉ざし、自分達が今居る部屋を見回す。


 野兎達が仕える梅衣は、『海妃かいき』という称号を持つ妃の一人である。


 後宮で暮らす皇帝の側室達には位が設けられているらしく、その中でも特に寵愛を授かっている立場の妃嬪には、称号が与えられる。


 現在、称号は十個存在し、陽妃(ようき)水妃(すいき)金妃(きんき)地妃(ちき)火妃(かき)木妃(もくき)土妃(どき)天妃(てんき)海妃(かいき)冥妃(めいき)、となっている。


 そして、称号を持たない妃嬪達は貴人(きじん)と呼ばれ、称号持ちよりも下の扱いとなる。


 つまり、海妃である梅衣はこの国の全女性の中で、上位十名に入る存在。


 正に、選び抜かれた皇帝陛下の側室だ。


 梅衣の宮を訪れた際、その屋敷の大きさと絢爛豪華さに思わず野兎も驚いた。


 下々の民には想像もつかないような、豪勢な生活を送っているようだ。


 他の称号持ち達も、同様の待遇なのだろうか?


『一同、頭を下げよ!』


 そんな事を考えていると、先輩宮女の声が走り、新人達は一斉に頭を下げさせられる。


 ゆっくりとした足取りで現れた誰かが、野兎達の前に立つ。


 野兎はチラリと視線を上げる。


 ……豪奢だ。


 そう、素直に思った。


 高級な着物――襦裙の上に披帛を纏った華麗な姿。


 濡れたように艶のある髪を簪で纏めている。


 紅を目元と唇に差しており、目立たせるだけあって目付きも口元も艶めかしい。


『この者どもが、本日より梅衣様の宮に仕えさせて頂く新人達です』


 先輩宮女が野兎達を紹介する。


『ふぅん』


 気怠く呟き、梅衣は口元を覆うように手にした扇子を広げた。


『ねぇ、ちょっと臭わないかしら?』


 瞬間、梅衣のお付きの者が瞬時に動き、野兎達の服に何やら液体を振り掛けてきた。


 酔いそうなほどの甘い匂いがする。


『も、申し訳ございません。何分、先日後宮に入ったばかりの者達のため、いくら着飾っても体に染みついた下賤の臭いまでは誤魔化せぬようで……』

『わたくしの宮に仕えるのだから、下等な臭気を漂わせないで』

『よ、よく言い聞かせます』


 先輩宮女が『お前達も謝れ』と、更に新人達に頭を下げさせる。


 後宮に住まう側室――殿上人。


 流石の人間性だ。


 野兎はいちいち感情的にならないよう、淡泊な思考を心掛ける。


 その後、新人達は一人一人挨拶をさせられた。


 梅衣は興味無さそうに、その挨拶を聞いている。


 名前を覚える気も無いのだろう。


 しかし野兎が顔を上げると、その時だけ梅衣は視線を向けて来た。


『アナタ……話は聞いているわ。元雑技団の出身で、演舞では男役を務めていたとか』

『はい』


 どうやら、採用官と面接をした際の情報がたまたま耳に届いていたようだ。


『ふぅん……』


 梅衣は、野兎の全身に視線を巡らせていく。


『なるほどね……確かに顔立ちも悪くないし、化粧をしたら……』


 ふっと、梅衣は笑う。


『気に入ったわ。最近退屈気味だったけど、ちょっとは楽しめそうね。アナタ、今夜の宴で舞ってみなさいな』




 ■ □ ■ □ ■ □




 ――そして、その日の夜。


 梅衣の命令により、野兎は演舞を披露することとなった。


 教坊(宮廷内で音楽・歌舞等を行う部門)から楽団を呼び寄せ、本格的な装いが出来るよう衣装から化粧道具まで用意されて。


(まさか、後宮に来ていきなり演舞をさせられようとは……)


 でも、まぁいい。


 慣れた事だし、舞台の上に居る間は、物語の中の英雄になりきるだけだ。


 男装を纏い、化粧を施し、野兎は頭の中で物語の内容を繰り返す。


 いつも行っていた集中力を高めるための儀式を終えると、大広間の舞台へと進み出る。


 野兎は、雑技団に所属していた頃、演舞の主演を務めていた。


 彼女が主役を担う男舞は人気が高く、各地の観客達を魅了した。


 今夜の演目は武侠物語。


 野兎は、武器を使った演舞をする。


 手にしているのは演舞用の柳葉刀だが、雑技団時代は本物の武器を使わされていたので遙かに扱いやすい。


 舞台の上、軽やかな剣術と優雅な舞を披露する野兎。


 その麗人の劇は、男も女も関係無く引き込まれる。


『ほう……』と、思わず誰かが溜息を吐く。


 堂に入った野兎の姿を前に、その場にいた宮女も宦官も、皆が心を奪われている。


 流石の梅衣も、瞬きを忘れて見入っていた。


 その時だった。


 一人の宮女が粗相を犯してしまった。


 野兎と同じく入って来たばかりの新人――あの気弱そうな、そばかすの宮女だ。


 温燗の入った陶器を持って梅衣の傍に控えていた彼女は、野兎の姿に意識を取られ、思わず手を滑らせてしまったのだ。


『あっ!』


 零れた温燗が運悪く、梅衣の着物に掛かってしまった。


『お前ッ! わたくしの服に何をしてくれてるの! 今日おろしたばかりなのよ!』

『も、申し訳ありません!』


 温燗が掛かったのは着物だけで、彼女の体は汚れていない。


 しかし、それが問題ではない。


 お付きの者達がすぐさま着物を替える中、梅衣は平伏し震える新人を睨み続ける。


亜紺(アコン)

『はっ!』


 梅衣は、控えていた宦官の一人を呼ぶ。


『この小娘を、宮廷の外れにある〈伏魔殿〉に放り込みなさい』


 梅衣の発言に、宴会場の空気が凍り付いた。


『〈伏魔殿〉に……ですか』

『そうよ。それくらいの罰を与えて当然でしょう』

『お、お許しを……他の罰なら、何でも受けますので……』


 怯える新人宮女を前に、梅衣は邪悪な笑みを浮かべる。


『安心しなさいな。朝まで生きていたら、穴から引き摺りだしてあげるから』

『どうか、どうかお許しを……』


 新人宮女の怯え方は尋常ではない。


 それもそうだろう。


〈伏魔殿〉に身一つで落とされるなど、死ねと言われているのに等しい。


『わたくしに逆らうつもり!?』


 しかし、その新人宮女の態度が、溜飲を下げるどころか更に梅衣をイラつかせたようだ。


 梅衣は新人宮女の落とした陶器を掴み、思い切り彼女の体に向かって振り下ろした。


 その時だった。


 まるで一迅の風の如く、舞台から野兎が駆け付けた。


 蹲った同期を庇うように立ち、振り下ろされた陶器を手にした柳葉刀で弾く。


『きゃっ!』


 悲鳴を上げる梅衣に対し、威嚇するように剣先を向ける野兎。


『お、お前……』


 その鋭い眼光に射貫かれ、梅衣は顔を青くする。


『貴様! 梅衣様に刃を向けるとはどういうつもりだ!』


 しかし、流石にそれはやり過ぎだったようだ。


 妃嬪に殺意を向けるに等しい行為に、梅衣のみならず宦官達も怒りを露わにする。


『罰は私が受けます』


 そこで、野兎は口を開いた。


『この子の代わりに、〈伏魔殿〉には私が落ちます』




 ■ □ ■ □ ■ □




「……そうだ、そんな経緯があったからだ」


 記憶を振り返り、思考を整理する。


 気弱そうな仲間の新人宮女を庇った事で、野兎はここに落とされたのだ。


 後宮にやって来たばかりだというのに、いきなり大変な事になってしまった。


(……でも、仕方が無い)


 あの子を見ていたら、外に残してきた弟分・妹分達の姿が頭を過ぎったのだ。


 断片的な前世の記憶の中でも、かつて野兎は十人兄弟の長女だった。


 貧乏な家庭で、親がほぼ育児放棄していたので、自分が妹と弟達の親代わりだった。


 前世でも毒親、今世でも毒親。


 そういう星の元に生きることを宿命づけられているのかもしれない。


 どちらにしろ、見過ごせなかった。


「……それに」


 誰かを庇って〈伏魔殿〉に落とされるのは、“これが初めてじゃ無い”。


 むしろ、あの場を丸く収める為に自分こそが適任だった。


 野兎は、改めて白骨死体を見る。


 見たところ男性の骨。


 この穴に誤って落ちた衛兵か武官か、それとも探索に訪れた調査官か。


 ともかく、死後しばらく経っている。


 骨の数カ所に負傷した痕跡があるし、この〈伏魔殿〉で何かに襲われ、命を落としたのかもしれない。


 すると、骨の傍らに剣が落ちているのに気付く。


 錆だらけで切れ味は悪そうだが、無いよりはマシだろう。


 野兎は白骨死体の前で手を合わせ拝み、武器を拝借する。


「……ん?」


 そこで、野兎は何かがいる気配に気付き、振り返る。


 ――背後に、見上げるほど巨大な蛇がいた。


 真っ白い全身に、所々黒い斑点のような模様の入った鱗。


 真っ赤な目でこちらを見下ろし、シュルシュルと舌を出し入れしている。


 どこからどう見ても、怪物だ。


「〈大蛇(オロチ)〉……か」


 しかし、野兎はそんな怪物を前にしても――動揺一つしていない。


「巨大な体躯を持つ蛇の〈魔物〉。この人も、この〈大蛇〉に襲われたのか……」


 白骨死体を一瞥し、野兎は呟く。


「こんな狂暴な〈魔物〉が第一階層から出現するなんて、この〈伏魔殿〉……かなり難易度の高い場所なのかも――」


 刹那、〈大蛇〉が大口を広げ、野兎へと襲い掛かった。


 鋭い牙を剥き、矢のような速度で襲来した〈大蛇〉は、野兎の体を丸呑みしようとする。


 が――勢い良く口を閉じた〈大蛇〉は、口内に獲物の感触が無い事に気付く。


「こっちだよ」


〈大蛇〉の攻撃を回避した野兎が、〈大蛇〉の顔の真横に跳躍していた。


 そして手にした剣の切っ先を、〈大蛇〉の目に突き立てた。


「シィィィィィ!――――――」


 悲鳴を上げ、〈大蛇〉は巨体を暴れさせる。


 一方、野兎は優雅な所作で地面に着地すると――まるで演舞を踊るように、片手で剣を構えて〈大蛇〉に向き合う。


 その姿は、物語の英雄――武侠そのものだった。


「シィィィィッ!」


 怒り狂った〈大蛇〉が、着地した野兎へと尻尾を振るってきた。


 鞭のようにしなる〈大蛇〉の尻尾に、瞬間、野兎は剣を合わせる。


〈大蛇〉の尻尾の先端が、叩き切られて地面に落ちた。


「――――」


 その攻防だけで、〈大蛇〉は実力差を理解したのだろう。


 次の瞬間、野兎に背を向けて薄闇の中へと逃げていった。


「しかし……〈大蛇〉が逃げるなんて」


 野兎は驚く。


〈大蛇〉は、他の〈伏魔殿〉では穴の主を務めるほどの〈魔物〉……外敵なんてまずいない。


 戦いの選択肢に逃亡など無いのが普通だ。


 だが、あの〈大蛇〉は逃げた。


 つまり、ここには〈大蛇〉さえ逃げる事を選ぶような、怪物以上の怪物が潜んでいるということ。


「ふふ、そうかそうか」


 しかし、野兎はその事実を前に薄く笑う。


 加えて、自身が切り落とした〈大蛇〉の尻尾の先端を拾い上げると……。


 ひょいっと、それを口の中に放り込んだ。


 もぐもぐと咀嚼し、ゴクンと飲み込む。


「〈大蛇〉、久しぶりに食べたけど……うん、やっぱり強い〈魔物〉の肉は美味しいな」


 そして、まるで怪物の大口のように待ち構える〈伏魔殿〉を前にし、剣を肩に担いだ。


「久しぶりの冒険だ。ちょっとわくわくするな」


 その顔に、まるで少年のような微笑みを携えて。


 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。


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