スケベヲタク死霊軍団を見て、加奈が大絶叫する…俺達は何とか加奈に説明をして改めて奴らと顔合わせをした…まあ…めでたしめでたし…かな?
ともかく俺は何とか事態を収拾しようと、泣きながら加奈を追ってくるスケベヲタク死霊軍団の前に手を広げて立ち塞がった。
「お前ら!
加奈が怖がっているだろうが!
止まれ!止まれ!そこで止まれ!」
「ああ!彩斗首領!
何とか誤解を!」
と暗黒の才蔵が。
「えええ~!
何ですかぁ!彩斗首領って!」
と加奈が。
「彩斗将軍!
吾輩たちを加奈様に!加奈様に!」
と稲妻五郎が。
「きぃいいい!
何ですかぁ!彩斗将軍ってぇ!」
と加奈が。
「彩斗総統!
何とか加奈様にぃ!僕たちは決して怪しい者ではぁ!」
と彗星のシュタールが。
「何よ何よ何よ!
彩斗総統ってなんですかぁああ!
彩斗!こいつらいったい何なのよ~!
なんなのですかぁ~!」
と加奈が叫んだ。
「ああああ!もう!
お前ら俺を呼ぶ時は彩斗リーダーと呼べと言ってるだろうがぁ!
俺達から加奈に説明しておくから!
お前ら!ハウス!ハウス!ハウス!」
スケベヲタク死霊達は加奈様ぁ!と叫び、涙を流しながら『ひだまり』に戻って行った。
叫びながら何やら俺に文句を言う加奈を後席に載せて、助手席で口を押さえて必死に笑いを押さえている凛と共に死霊屋敷に戻った。
「彩斗! あの気味わるい連中は何ですかぁ!
首領だの将軍だの総統だの!
彩斗はワイバーンの陰に隠れてショッカーとかジオン軍とかバイキンマンみたいに悪い事をしてるんじゃないでしょうね~!」
後席で地団太を踏みながら俺を問い詰める加奈。
手を伸ばして俺の首を絞めようとしたが、死霊になっているので加奈の手は俺の身体をすり抜けた。
「きぃいいいい!
悔しいですぅ!
加奈に実体が有れば彩斗の首を捻り千切ってあげるのにですぅ!」
「ともかく落ち着いてくれよ加奈!
屋敷に着いたら説明するから!」
「加奈!
ともかく説明を聞いてから彩斗リーダーを呪い殺すなりなんなりすれば良いんじゃない?
あの死霊達はそんなに悪い奴らじゃ無いわよ。」
「凛までそんな事言って!
奴ら私の事を加奈様ぁって!
うわぁああ!
きっしょい!きっしょい!きっしょいですぅ!」
加奈が後席で頭を抱え、そして激しくヘッドバンキングをした。
俺と凛と半狂乱の加奈が死霊屋敷に戻ると、明石や四郎、喜朗おじや、リリー、はなちゃんを抱いた圭子さんが心配そうに出迎えた。
「加奈…あれを見てしまったのか…。」
喜朗おじがこめかみに手を当てて唸った。
「あああ!喜朗父まで知っていたですかぁ!
なんですかあれは何ですかアイツらはぁ!」
リリーが苦笑を浮かべながら加奈に近寄った。
「まあまあ、加奈、とりあえず落ち着いて。
これから加奈の家で私達が説明するからね。
彩斗、こんな事も有ろうかとパソコンとプロジェクターを喜朗おじと加奈の家に運び込んでおいたわ。」
こうして、俺と明石と四郎と喜朗おじ、はなちゃんを抱いた圭子さんとリリーで加奈を家に連れて行き、スケベヲタク死霊軍団の事を説明する事になった。
「彩斗、説明を初めて。
真鈴とジンコと司と忍は屋敷の暖炉の間でアニメを見ているから大丈夫よ。」
俺はリリーに言われて、パソコンやプロジェクターを駆使して『ひだまり』に巣くうスケベヲタク死霊軍団の説明を始めた。
初めは興奮していた加奈だったが、リリーから貰い煙草を吸いながら俺の説明に耳を傾けた。
そして、スケベヲタク死霊軍団のおかげで『ひだまり』が大繁盛している事、地域の浮遊スケベ死霊などをスカウトしてスケベ犯罪の減少に役に立っている事、加奈達の脚が美しく強靭になり、人間離れした敏捷性や持久力を手に入れた事、練馬のみち達の偵察や乾の居場所を探る事に手を貸してくれた事などを説明した。
一通り説明が終わると圭子さんがため息をついた。
「まあね~、私も悪鬼になってからアイツらを初めて見た時は固まったからね~でも、そんなに悪い奴らじゃ無いわよ。」
「ああ!それで圭子さんは私達のパンティチェックを~!」
「そうなのよ加奈、あいつら余り刺激が強いと体が爆発して昇天しちゃうからね~。
死霊が見える私達には凄いスプラッターな光景になるからね~。
今まで黙っていてごめんね~。」
加奈は考え込んだ。
「ふ~ん、そうですかぁ~。
加奈は今までアイツらにスカートの中を覗かれていたんですね~。
…でも、そんなに良い事が有るなら…しょうがないですかね~。」
「おお!判ってくれたか加奈!
今まで黙っていてすまなかった!」
「喜朗父、これでやっと毎日大入りをあんなにくれた理由が判ったですぅ~。
でも、こうなったらしょうがないですぅ~。
しかし、もう加奈のスカートの中は覗かせないですよ~!」
「そりゃあもちろんだよ!加奈!
判ってくれてありがとう!
…それであのう…この事は真鈴やジンコやクラには…。」
「内緒にして置くですぅ~。
真鈴なんかこの事を知ったら気絶するですぅ~。」
やれやれ、俺は加奈の理解を得られてほっと胸を撫で下ろした。
そして俺達は加奈と共にまた『ひだまり』に行き、スケベヲタク死霊軍団と改めて顔合わせをした。
『ひだまり』のドアを開けると、スケベヲタク死霊達は皆土下座をして加奈を迎えた。
「おい、皆、加奈はお前達の事を赦してくれたぞ。
だがしかし、加奈はもう死霊でお前達の仲間だ。
スカートを覗くような失礼な真似はするなよ!」
「彩斗首領の言う通りでござる!
これからわれらは加奈様をわれらの女神と崇め讃えるつもりでお付き合いさせて頂くでござるよ!
われらは永遠に加奈様の親衛隊でござるよ~!」
暗黒の才蔵がそう言うとスケベヲタク死霊軍団は声を合わせて加奈様ぁ~!と声を上げて頭を床に擦り付けた。
どうやら加奈は少し引きつった笑顔ながら満足したようだった。
その時、彗星のシュタールが顔を上げた。
「加奈様ぁ!お近づきの印に何か歌って頂けませんか?」
ああ、またこいつは…。
いつもこうなんだよこいつは…。
俺が頭を抱えたが、スケベヲタク死霊達が口々に加奈にリクエストをした。
どうやら、店が終わった後で加奈が備え付けのカラオケで歌っているのを皆で聞いていたらしい。
驚いた事に加奈もまんざらでない表情だった。
「それじゃ、久しぶりに加奈は歌うですぅ~!
カチューシャで良いですかぁ?」
俺達は少しずっこけ、スケベヲタク死霊達は熱狂した歓声を上げた。
喜朗おじがやれやれと頭を振りながらカラオケをセットした。
マイクを持てない加奈がマイクスタンドの前に立ち歌い始めた。
『みーちゃん』でも加奈が歌っていた時には確かに上手だったなぁと思いながら聞いていると、スケベヲタク死霊軍団の興奮が頂点に達し、いつの間にかライトを持って一糸乱れぬヲタ芸を始めた。
加奈がご機嫌で歌っている。
「L、O、V、E!加奈様ぁ~!」
ヲタ芸をしながら熱狂的に合いの手まで入れ始めたスケベヲタク死霊軍団達。
紙テープまで投げ出した。
一体どこで手に入れたのか…。
そして好きな姿に変えられる加奈は何かステージ衣装のような姿になって歌いまくった。
やれやれ、でも、これで加奈の寂しさは少しは紛れるかな?
加奈は気分が乗って来た様でその後も色々な歌を歌い、スケベヲタク死霊軍団達相手にちょっとしたリサイタル状態になった。
まぁ、加奈は死んでしまったのだからこれ位は羽目を外して楽しんでも良いだろう。
今まで見た事も無いくらい、加奈の笑顔は輝いていた。
一応めでたしめでたしと言う事で。
続く