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加奈のお通夜…主賓の加奈が意外に暇だった…当たり前か…。


喜朗おじがRXー7の所で頭を抱えて地団太を踏む加奈を見てため息をつくと凛に先ほど加奈のポケットから抜き出したのであろうRX-7のキーを凛に渡した。


「凛、加奈を助手席に載せて屋敷に戻ってくれるかな?

 おっと、少しはなちゃんを借りるぞ。」


そう言うと喜朗おじははなちゃんを入れたバッグを抱えてハイエースに入り、暫くすると戻って来た。


「これで良しと、はなちゃん、頼むぞ。」

「喜朗、任せとけじゃの。」


俺は喜朗おじに尋ねた。


「喜朗おじ、はなちゃんに何を頼んだの?」

「ああ、彩斗、加奈が死霊になったからな。

 まぁ、はなちゃんからオリエンテーションと言う所かな?

 死霊は何が出来て何が出来ないか?とかな。

 それに…死霊になって初めて見えてくるものがあるだろうに…ほら、一番気になるのが『ひだまり』の…。」

「…ああ、ああ、成る程ね~!」

「そういう訳だ彩斗、これから加奈の葬儀で忙しくなるからな。

 手を打てる物は先にどんどん手を打たないとな。

 加奈の死を全く伏せる訳にも行かんしな。」


確かにその通りだ。

さととまりあなどは内情を知っているが、まさか隣の中華料理屋の大将にまで加奈の死を伏せる訳にも行かない。

『ひだまり』の常連の中にも、この近所に住んでいるお年寄りなど、加奈とかなり親しくなっている人もいるし、昔からの常連で加奈の大ファンの人もいる。

全く俺達だけの密葬と言う訳にも行かないだろう。

とりあえず、後日『ひだまり』には加奈の死亡についてのお知らせを貼り、ささやかな献花台でも作ろうかと言う事になった。


そして…『ひだまり』のスケベヲタク死霊軍団については加奈は全く知らないのだった。

やれやれ、悪鬼となって生まれ変わった圭子さん、元々悪鬼で死霊が見える凛、この2人に『ひだまり』の秘密を、スケベヲタク死霊軍団の事を明かすのに随分神経を使った物だったな…。


まぁ、加奈に関しては、はなちゃんの説得に任せるしか無いだろう。

俺達はそれぞれ車に分乗して死霊屋敷に戻った。

俺は真鈴とジンコ、クラを乗せたボルボを運転して屋敷に戻った。

死霊が見れない真鈴達の正統派の悲しみ方が少し羨ましかった。

死んだ加奈から霊が抜け出る瞬間から加奈と会話をしてタバコを吸わせて、RXー7を運転できなくて地団太踏んで悲鳴を上げる加奈を目撃しているのだ。


加奈が死んでしまって永遠のお別れなどと言う状況からほど遠いのだ…やれやれ。

俺は真鈴に頼んでさととまりあに加奈の事を伝えるように言うと真鈴はスマホを取って涙声でさととまりあに伝えてくれた。


深夜過ぎには加奈の遺体は死霊屋敷に戻って来るだろう。

喜朗おじと凛とで加奈が一番気に入っていた服を選び、清拭を済ませた加奈に納棺師の人が服を着せて死に化粧をしてくれるだろう。


一応法律では死亡確認時から24時間は火葬も土葬も禁じられている。

万が一蘇生した時の為の予防策なのだが、もはや魂が抜けでている加奈にはナンセンスだと思ったが、死霊が見えない真鈴やジンコ、クラ、そして司や忍にはお別れの時間として有効なのだろう。


屋敷に戻るとこうグリーンのジャガーが停まっていてさととまりあが待っていた。

圭子さんにも明石が連絡を取っているので司と忍も起きて待っていた。


泣きながら加奈姉は死んじゃったの?と尋ねた司と忍を見て真鈴とジンコとクラがまたも悲しみを爆発させて玄関ホールでおいおいと泣いた。


そのすぐ横で加奈がやれやれと肩をすくめていたが、加奈も自分が死んでしまった事の実感をまた感じたのか、泣き続ける司達に手を伸ばして死んじゃってごめんね~!と泣いていた。

死霊が見える圭子さんもハンカチで涙を拭きながら加奈の肩に手を当てていた。


「彩斗、お前ユキちゃんにも…。」

「ああ!そうか!」


四郎に言われて俺は気が付き、ユキのスマホに電話を掛けた。

『みーちゃん』が終わったばかりらしく、店の中で電話を受けたユキが絶句してママが、ユキ、どうしたの?と尋ねる声が聞こえた。


俺はとりあえず『みーちゃん』に車を飛ばしてユキとママを迎えに行った。

ママはユキと自分の分も喪服を着て待っていた。

俺はママとユキをランドクルーザーにのせて屋敷に帰る途中でそう言えば喪服を着なきゃな、古い喪服着れるかなと心配になった。


俺達が死霊屋敷に戻ると、清拭を済ませた加奈の遺体と、岩井テレサ、榊、ノリッピー、リリー、美々と小三郎とナナツ―がやはり喪服姿(リリー達はスコルピオの礼装姿)でやって来ていた。


加奈の遺体は喜朗おじと加奈の家で納棺師が加奈のお気に入りの夏っぽいワンピースを着せてお化粧をして、棺に納めて死霊屋敷の暖炉の間に運んで台の上に棺が置かれた。

これで通夜の間、いつでも加奈の顔を見られる。


ユキと『みーちゃん』ママが暖炉の間で加奈の棺を覗き込んで、こんなに若くて可愛い女の子が何で!と泣きながら加奈の死に顔を見つめていた。

ユキには加奈の本当に死因を伝え、『みーちゃん』ママには心臓マヒによる突然死と伝えた。


俺はクラと四郎を見つけ、朝になったら喪服のスーツを手に入れる算段をした。

ところで、主賓と言うか肝心の加奈はどこに行ったのであろうか…いた。


プールサイドで凛やはなちゃん、岩井テレサやリリーやノリッピー、さととまりあやナナツ―など死霊が見える者達にタバコを吸わせてもらいながら、コーヒーの味を香りを楽しませてもらいながら、お菓子を目の前で食べてもらってその味を楽しみながら雑談をしていた。

なんか話しが盛り上がっている、いつの間にか屋根裏の死霊達もやって来て加奈と笑顔で挨拶を交わしていた。

暖炉の間で加奈の遺体を見ながらまだ泣いている真鈴達と大違いな状況に俺はまたまた混乱した。

まぁ、今俺の目の前では新しく死霊になった加奈の歓迎会が行われていると言う事だろうか…。


やれやれ、あと心配するのは『ひだまり』スケベヲタク死霊軍団と加奈の顔合わせか…はなちゃんと凛が上手く説明してくれていれば良いのだけど。


「彩斗、ちょっとこっちに来いよ。」


明石が指をくいくいさせて俺を呼んだ。

明石はノートを出して広がながら明日の告別式について説明した。

無宗教のお別れの会と言う体裁で、すでに岩井テレサと喜朗おじに挨拶を頼んである事、一応ゲートに受付を設け、隣の中華料理屋の大将などの訪問者の応対をする事、火葬場はこの近くにあるのでそこに行き、お骨になって喜朗おじと加奈の家に持ち帰りそこで閉会。

火葬場までの送迎は岩井テレサに頼んで小型バスを2台で足りるだろうと言う事になった。

死亡診断書なども岩井テレサの方で手配をしてくれるが、加奈の遺産の相続などは俺達で手続きをする事になった。

加奈は銀行口座に2000万円近く預金があって驚いた。


後で加奈が気に入った所に西洋風の簡素な墓を建てる事になった。


やれやれ、極端に簡素にするつもりだが、それでも色々と忙しい物だ。

俺達は交代で仮眠をとる事になり、明日の朝食を済ませてから俺と四郎とクラは喪服のスーツの調達に行く事になった。


死霊屋敷は死霊が見える人間と見えない人間で見事に色分けされているようだ。

死霊が見えない真鈴達はまだ醒めざめと泣きながら加奈の思い出話をしている。

岩井テレサ達、死霊が見える者達は穏やかな微笑みを浮かべ、静かにおしゃべりをしている。

皮肉な事に一番陽気に見えるのは加奈と屋根裏の死霊達だった。


「彩斗!凛!見て見て!」


加奈がやって来て興奮した口調で話した。


「ほらほら加奈の太もも見てよ!

 ほら!傷をね消せるんだよ!」


なるほど、加奈が子供の頃に自分で縫合したと言う大きな傷がきれいに消えていた。


「背中のデカい傷はあいつらを倒すまで取って置くけどね~!

 あの奴らを倒したら加奈はまっさらな体で天に昇るですぅ!」

「それは良かったね加奈。」

「あ、凛!凛の運転はまだまだだから今度一緒にRXー7でドライブ行こうね!

 加奈がドライビングテクニックを教えてあげるですぅ~!

 さっき圭子さんに『加奈・アゼネトレシュ』の撃ち方を教えるって約束したですぅ!

 加奈は中々忙しくなるですぅ~!」


加奈はニコニコ顔で新しく知り合った屋根裏の死霊達とのおしゃべりに戻った。


「やれやれ、この中で加奈は一番気楽な感じだよね~!

 俺達は結構やることあるのにさ~!」


俺がぼやくと凛が同意の頷きをして苦笑いを浮かべた。


「全くですね~!

 彩斗リーダー。

 加奈にも主賓挨拶とかできれば良いのだけど…。」


岩井テレサが微笑みながらやって来た。


「あら?彩斗君達、仕方ないわよ。

 お葬式なんてね、本当は亡くなった人の為にする儀式じゃないものね。

 残された人達が自分を納得させる儀式みたいなものなのよ。

 亡くなった人が別世界の住人になって旅立って行き、忘れ去る為の儀式みたいなものよ。

 残された人達が忙しく動く事で亡くなった人へのさよならをしていると言う感じかしらね~。」


岩井テレサの言葉を聞いて確かに葬儀にはそう言う一面もあるな、と俺は思った。


さよならだけが人生か…加奈は当分さよならしないと思うけど。


「彩斗!凛!ちょっと手が足りん!こっちに来てサンドイッチを作るの手伝ってくれ!」


喜朗おじに呼ばれて俺と凛はため息をつきながらもキッチンに行った。

悪鬼は大食らいなのを忘れていた。








続く



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