俺達は奴らが潜むビルに突入したが、男の子を見つけられない…ビルの地下に違法建築の地下迷宮を見つけた。
俺は待機場所の近くに手配された事務所のトイレに行こうとした。
「おっと彩斗、バラクラバはしておけよ。」
四郎に言われて俺はバラクラバを被った。
確かにこの戦闘服と装備を付けている時に顔ばれはまずい。
ましてやこの辺りはいたるところに監視カメラがあって町中を映しているのだ。
俺はトイレを済ませ、装甲バンにもどると、その他のメンバーも順番にトイレを済ませた。
最期に真鈴がトイレを済ませて装甲バンに戻って来た時にタブレットから警報音が鳴った。
「お、いよいよか。」
タブレットを見るとそこそこ大きな7階建てのビルで赤い光が点滅していた。
そのビルは俺達の待機場所から近かった。
真鈴が拳を上げた。
「やった!
私達の出番ね!」
ノリッピーの声が聞こえた。
「見つけた!
今、○○ビルの5階の貿易事務所に奴らを確認した!
カスカベル3班と4班、ワイバーン班は対応せよ。」
装甲バンが動き出した。
サイレンも鳴らさず回転灯も点けずに装甲バンは町中を問題のビルに向かった。
少し走り交差点を左に曲がると直ぐに問題のビルが見えて来た。
「結構大きいわね。」
走る装甲バンからビルを見上げるジンコが呟いた。
なるほど、1班では足りないな。
タブレットがビルの間取り図を映し出している。
「皆!大急ぎでビルの内部を頭に入れて!」
俺が叫び、全員が間取り図を覗き込んで出入口、エレベーターや非常階段の位置、問題の事務所の詳細な間取り図を頭に入れた。
またノリッピーからの指示が聞こえた。
「ビルの東側エントランスにカスカベル3班、北側駐車場にカスカベル4班、南側エントランスにワイバーンがバンを付けろ。
調査部が中へ先導する。
警察の方で一般人の避難収容に当たるから多少混雑するかも知れないが時間に余裕が無いので同時進行で行う。
気を引き締めてゆけ。
カスカベルとワイバーンに幸運を。
なお、ビルの全部分を捜索し切れていないので応援の捜索チームを差し向ける。
スコルピオ1班、カスカベル2班がそちらに向かいバックアップをする。
以上。」
俺達の装甲バンが南側エントランスに車を横付けした。
何も知らずにビルに出入りする人達が立ちすくんで俺達を見た。
装甲バンから降りて展開しながら俺達はエントランスから中に入った。
中には調査部の者が警備員に身分証を見せて慌ただしく状況を説明していた。
遅ればせながらパトカーのサイレンが聞こえて来てエントランスからパトカーが数台急停車して警官が飛び出すのを俺は見た。
調査部の1人が俺達に走り寄った。
「ワイバーン、私たちが先導します。
問題の事務所の出入り口は2つあり、調査部が出入り口を封鎖、張り付いて監視しています。
これから館内放送で中の人達に避難するように呼び掛けます。
先導しますこちらへ。」
俺達は非常階段から上階に向かった。
調査部と共に加奈の手下のファンタースマが立っていた。
「お手柄だ!よくやったぞ!
あなたは危ないからここにいて!」
俺達についてきた加奈がファンタースマの肩を叩くと彼は顔を赤らめて俺の言葉を言い、嬉しそうに頷いていた。
階段を上る最中にエレベーターに乗れずに上から避難してきた一般人とすれ違う。
彼ら彼女らは俺達を見て一瞬立ち尽くすが俺達は構わずにその横をすりぬけた。
廊下に出る扉を開けると先に到着しているカスカベルの対応班、それぞれ12人づつが廊下を封鎖、2つある出入り口に武器を向けて待機していた。
俺達は大きい方の出入り口を封鎖しているカスカベルの対応班の後ろに陣取り、援護体勢に入った。
またノリッピーから指示が飛んだ。
「カスカベル3班4班、ワイバーンは配置についたね。
ドアを破壊して一気に突っ込むよ。
破壊する時の音で一斉に踏み込め。
ビルの敷地周辺にショッカー対策班が到着展開しているからそのビルから逃がすな。
なお、そのビルの地下がかなり広く地下3階まであってその部分の捜索は別の調査班が行っている。
カスカベル2班とスコルピオ1班が援護に向かっている。
3階事務所を制圧した後も出番があるかも知れないから心得ておいてくれ。」
明石と四郎がUMPサブマシンガンを脇によけてそれぞれ江雪左文字とサーベルを抜いた。
「生け捕りか。
お前ら頭と心臓は撃つなよ。
人間も混じっているかも知れないからな。
ヒューマンメンバーはアナザーメンバーの後ろについてやたらに発砲しないように気を付けろ。」
明石がそう言いながら江雪左文字を持ち換えて峯打ちの体制をとった。
カスカベル班の班長が着て短く俺達と打ち合わせをした。
窓を破って逃げ出さない様にまず、カスカベル班は窓際を押さえて退路を断ち事務所中央を制圧に向かう、俺達は真っすぐ事務所中央に突入する。
同士討ちに気を付けるようにと確認し合った。
そして2つのドアが同時に小型爆弾で爆破されてカスカベルが雪崩込んだ。
「カスカベル、ゴー!」
続いて俺達ワイバーンも突入した。
「ワイバーン、ゴー!」
先に突入したカスカベル班が窓際に展開をして中の奴らの退路を断ち俺達はデスクが並ぶ中央通路に飛び込んだ。
「伏せろ!皆!伏せろ!
抵抗すれば撃つ!」
事務所の中には7~8人の男女が、見かけは普通のサラリーマンやOLの様ないでたちの者がいて俺達に向かって身構えた。
俺は明石を見た。
「全員アナザーだ!
制圧しろ!」
明石が叫んで跳躍すると一番近くで身構えていた中年女性の姿のアナザーの首に江雪左文字を叩き込んだ。
中年女の首がグキリと変な方向にひん曲がったがその顔をアナザーの顔に変貌させてデスクを掴んで吠えた。
真鈴と凛が中年女性の足にUMPサブマシンガンを撃ち込んだ。
脚から夥しい出血がして中年女性が床に倒れたがもがくのを止めず、折れた首も再生し始めていた。
喜朗おじがが飛び出し、中年女に覆いかぶさり、中年女性の身体をうつ伏せしてその上に馬乗りになった。
「手錠を掛けろ!
自爆に注意!」
喜朗おじが叫び、俺とジンコが中年女性に飛びつき腕を捩じり上げて手錠をかけた。
その間にクラを従えた明石と四郎が奥に進んでゆきさらに2匹のアナザーを倒したが、若い男の風貌のアナザーはクラが手錠をかける数舜前に自爆した。
凛が飛びつきクラを床に押し倒したのでクラは無事だった。
残ったアナザーたちは窓に向かって走った。
そして、UMPサブマシンガンで足を撃ち抜かれながらも手近にいたカスカベル隊員にしがみ付き自爆した。
瞬間身を引いたカスカベル隊員の隙間から中年の男の姿をした2匹のアナザーが窓を突き破り外に飛び出した。
「いかん!逃がすな!」
明石が叫び、明石と四郎が逃げたアナザーを追って窓から空に身を躍らせた。
驚いた俺達が窓際に走った。
明石と四郎が空中で体勢を整え、1匹のアナザーに空中で近づき、四郎がサーベルの柄で頭をぶん殴り、明石が峯打ちでアナザーの足に強烈に打ち込んで足を骨折させた。
四郎達はそのまま落下して行き、四郎と明石は着地した途端にゴロゴロと転がって衝撃を逃がし、立ち上がると足を折られて地面に這いつくばるアナザーに飛びついて手錠をかけた。
しかし、取り逃した1匹のアナザーは着地した後で走り出し駐車場を突っ切って行った。しかし、駐車場の先にはショッカー対策班が待機していた。
ショッカー対策班は容赦無い一斉射撃をアナザーに浴びせかけた。
大口径の銃弾が無数に命中してアナザーの男は倒れる前に既にその体がずたずたに引き裂かれ体の部品の多くが取れた状態で倒れた。
ショッカー対策班は尚も射撃をしながらアナザーの男に突進をした。
とっくに事切れたアナザーの体にこれでもかと銃弾を撃ち込み、男が完全に死んだのを確認するとこぶしを突き上げて歓声を上げていた。
「随分素人臭くて容赦ないな…ノリッピーが言う通りショッカー対策班に生け捕り等のデリケートな作戦は無理だ…。」
俺の横でその惨劇を見ていた喜朗おじが呟いた。
俺は凄く嫌な物を見せられた気分がして気分が悪くなった。
事務所を振り返ると、数人のアナザーが後ろ手に手錠を掛けられて転がり、数匹は自爆していた。
「男の子を探せ!」
俺達とカスカベルは事務所をくまなく探したが白人の男の子を見つけられなかった。
「空振りかな…。」
俺が呟くとカスカベルの班長が捕らえたアナザーを見ながら言った。
「いや、あの男の子が外に出ていたら監視網に引っかかるはずだよ。
もっと探そう。」
俺は頷いて事務所の捜索に加わった。
インターコムからノリッピーの声が聞こえた。
「彩斗君、どうやらそのビルの地下は間取り以上に大きく出来ているようだ地下迷宮と言って良いし一種の結界のような物が張ってあって深部にファンタースマが入り込めないようなんだ。
ワイバーンで応援に行ってくれないか?」
「ノリッピー、コピー。
直ぐに向かうよ。」
「コピー、地下にはリリーの班がいる詳しい状況は彼女から聞いてくれ。」
俺達は捜索をカスカベルに任せて地下に向かった。
1階で明石と四郎と合流して地下に降りて行った。
地下1階が駐車場だが、地下2階からは小部屋が並んだまさに迷路だった。
リリーが難しい顔でタブレットを覗き込んでいた。
「彩斗達、来たね。
この地下は違法建築の迷宮だよ。
タブレットの図面にない部屋が沢山あってとても手が足りないわ。
それに一種の結界が張ってあるらしくてね。
ファンタースマが壁を向けて中に入れないのよ。」
「リリー、中々厳重だな。
どうやらお目当ての男の子はここにいるかもな。」
「そうかもね四郎、その可能性は高いと思う。
手分けをして捜索しましょう。」
俺達はそれぞれ分かれて地下を捜索する事にしたが、タブレットの表示と全然違う間取りでそれぞれが手探りでしらみつぶしに捜索するしか無かった。
複雑に分かれて行く廊下と膨大な部屋の数に俺達はどんどん班を分けて少人数になって捜索して行くしか無かった。
「狭くて入り組んでいて、奴らといきなり出くわすかも知れない。
間合いが充分取れないから各自気を付けろ。
同士討ちにも注意しろ。」
インターコムから明石の押し殺した声が聞こえた。
「はなちゃん、どう?
この中を上手く探れない?」
真鈴が背負ったリュックのはなちゃんに声を掛けた。
「真鈴、確かにここは迷宮じゃの!
結界の影響なのか、わらわにも全然先が見えないじゃの!
念動もうまく使えんかも知れぬじゃの!
とにかく注意して進むじゃの!」
続く




