俺達は人間で編成されたショッカー対策班との共同作戦にいささか不安を覚えた…やはり、知る事が足りないと偏見が育つと言う事なのか…。
翌日、岩井テレサの調査部の今井、田所がショッカー対策班を連れて死霊屋敷に来た。
昨日に加奈達死霊が襲撃を受けた場所を中心に半径2キロの範囲にすでに調査部が網を張っているとの事で今日夕刻からあの白人の男の子を炙り出すローラー作戦の打ち合わせだ。
当然俺達ワイバーンもスコルピオとカスカベルの選抜メンバーと共に不測の事態に備えて緊急対応班として現場近くに待機する事になった。
今井と田所が連れて来たショッカー対策班の捜査員4人は…張り切っているのだろうが、どうも会話をしていて、なにかしっくりと来なかった。
当然4人とも人間で警察庁でも生え抜きの人間らしいのだが…何か悪鬼に対するスタンスと言うものが俺達とは違うのだ。
この4人ははっきりと悪鬼は人類の社会から全部駆逐すべき者として捉えている事が言葉の端々に滲み出ていた。
悪鬼は人の心を大体の部分読めるので、この4人と行動を共にしているとずいぶん気を悪くするだろう。
まぁ、レイシストと言っても良い程だと思う。
一番若い女性のメンバーなどはこの前の騒動で悪鬼(彼女ははっきりと『鬼』と言ったし、話が進んで興奮してくると『鬼野郎』と言った)を完全に射殺した事が余程の自慢らしく会話の最中に何度もその事を言い、傷を負って逃げる悪鬼を路地まで追い詰めて動か無くなるまで、そして頭の原型が無くなるまで銃弾を撃ち込んだことを自慢げに話した。
悪鬼である明石や四郎達だけでなく人間メンバーの俺や真鈴、ジンコでさえ気分が悪くなったくらいだ。
例えが悪いがアフリカ系アメリカ人が多数所属していて仲良くやっているチームと、KKK等に所属していてレイシスト的な発言を平気でするチームと共同作戦をするとどういう事になるのか…。
流石に一番年長の警視正がその若い女性の自慢話を途中で止めたが、彼でさえ、悪鬼の事を鬼と呼び、嫌悪の表情を浮かべている。
やれやれ、警察庁の人選と言ってもこの程度のレベルなのか…。
彼ら彼女らは『良い鬼』『悪い鬼』と悪鬼の事を呼んでいる。
今までごく普通に四郎達を悪鬼と呼んでいた俺達もその言葉の不都合さに気が付いた。
岩井テレサの組織では悪鬼の事を別物、アナザー、人間の事を人間、ヒューマンと呼んでいる事に改めて気が付いた。
俺達ワイバーンもそろそろこの呼称について話し合う時期が来たのかも知れない。
ショッカー対策班の話を感情を押し殺した無表情で聞いていた今井と田所が、もうすぐ『連隊』が到着して全般の指揮を執る事を告げ、俺達はホッとした。
数日中にポールとベクターが率いる『連隊』が戻って来てくれる事を知って嬉しかった。
彼ら『連隊』ならば余程の状況でも易々と処理して俺達に的確な指示を出してくれるだろう。
ダイニングに飲み物を取りに行った時に田所が付いて来て俺に囁いた。
「吉岡リーダー、ショッカー対策班は色々頓珍漢な事を言うけどどうか気にしない様にアナザーメンバーにも伝えておいてください。
やれやれ、私は何度かアナザーと喧嘩になりそうな時を何とか丸く収めてきましたから。
なんだかんだ言って今の所人類でアナザー、質の悪いアナザーと戦うために編成された初めての公式の隊ですから。
おいおい彼らの意識を何とか変えて行くつもりです。」
「田所さん、苦労しているんですね。
メンバーに伝えておきますよ。」
「良かった。
まぁ、私と今井は今の所『良い鬼』と呼ばれていますしね。」
田所はその人の良さそうな顔ににこりと笑顔を浮かべた後で疲れた感じのため息をついた。
「まぁ、今の所はショッカー対策班が先走ってへまを起さない様にお目付け役と言ったところですよ。
彼らはこの前話に昇った今追っている奴らが別人に化けると言う事には今の所無策ですからね。
あれをすぐに見分ける事が出来るのは悪鬼、アナザーと一部の人間だけですから。
あれに対処する方法を何とか考えておかないと…と言う訳で今回はショッカー対策班は外周警備を任せるつもりです。」
やれやれ、悪鬼、いや、アナザーと人間の共同作戦は難しいな。
俺は岩井テレサが率いる3つの騎兵部隊、カスカベル、タランテラ、スコルピオが悪鬼、アナザーと人間の混成チームなのにとてもうまく機能して皆仲が良い事に舌を巻いた。
少なくとも人間とアナザーとの間に差別感情などがあるなどとは一度も聞いた事は無い…あ!うちもそうじゃん!
ワイバーンでもそうじゃないか!
ワイバーンで人間だから、悪鬼、アナザーだから、死霊だからと差別的な事をいう奴は1人もいない。
なんでだろうか?
ともかく、今井と田所、ショッカー対策班は死霊屋敷を出て行き、夕刻からのローラー作戦に備える事になった。
勿論俺達ワイバーンも出動する。
ショッカー対策班が帰った後で、カップなどをテーブルから片付けながら圭子さんが頭ををがりがりと掻いてぼやき声を上げた。
「あ~、なんか腹が立つ連中ね~!
私は留守番で助かったわ!」
やはり俺達全員がショッカー対策班の態度や話し方に悪鬼、アナザーに対する差別意識が漏れ出ているのを感じているのだろう。
「圭子さん、本当ね~!
何だろう?昔の…今でも南部当たりの田舎にいるだろうけどアフリカ系の人を差別する白人の変な人や、今でもに日本で時々言う人がいるけど。エタ・ヒニンだとか気にする変な人達みたいな気持ち悪い物を感じたわ~!」
ジンコが首をこきこき鳴らせながら言った。
真鈴や凛やクラ達もうんうんと頷いている。
やはりショッカー対策班の人間に反感を覚えたようだ。
「うむ、確かに厄介な連中だな。
だが、一応味方だから無下には出来んしな。」
「そうだな四郎、その辺りは俺達も注意しよう。
特にクラ、妻の凛が悪鬼で色々と偏見的な事をいう奴があの中に居るかも知れないから、キレないように気を付けろよ。」
「そうだねクラ、奴らは悪鬼と夫婦だなんてとても信じられないと思うからとんでもない事を言い出すかも知れないから気を付けよう。」
「うん、そうですね彩斗リーダー。
俺も気を付けます。」
「そうだな、自分の事よりも愛する人の事をけなされると人情として辛いからな~!」
明石がため息をついた。
「それにしても景行、俺達って悪鬼とか人間とか死霊って全然気にしないよね。
今更ながらなんでだろう?と思ったよ。」
「そうか、成る程な彩斗、確かにお前や真鈴、ジンコなどは何というかな、理想的な出会いと言うか俺達をゆっくりと深く知る機会に恵まれたと言う所もあるかな?
確かにワイバーンの中でさっきのショッカー対策班のような事を言った奴がいたら全員から袋叩きだろうな。」
「そうか…それは言えているな。
それに俺と真鈴は最初に知った悪鬼が四郎だったから、悪鬼に対する印象が良かったのかもね…最初に質が悪い悪鬼の悪行を見るのとは大違いだしね…。」
「そうだな彩斗、第一印象と言うのは結構深く心に刻まれるからな…。
まぁ、あいつらショッカー対策班も時間が経てば色々誤解も溶けて仲良く出来るかもな…それまでアイツらが生きていれば…。」
明石は些か縁起が悪い言葉で締めくくった。
出動時間が迫っていた。
俺のランドクルーザーが今使えないので、喜朗おじのハイエースと真鈴のボルボ、そして明石のレガシィで出発、出動メンバーは俺と真鈴、ジンコ、凛とクラ、明石と四郎、はなちゃんと喜朗おじと言う事になった。
死霊屋敷は圭子さんが留守を固めるとともにスコルピオから『ひだまり』に応援に来ていた、美々と小三郎、ナナツ―が一緒に留守番をしてくれることになった。
「よいしょっと、ジンコ、もう少し詰めて。
まぁ、死霊だから身体がすり抜けるだけだけどね~!」
ボルボの後席に加奈が乗り込んで来た。
皆は戦闘服で身を固めているが、加奈はアロハシャツとホットパンツと言うどこかのリゾートに出かけるような服装だ。
暑さ寒さを感じない死霊が羨ましいな。
助手席に座る俺は後席を見て加奈に話しかけた。
「加奈、もう一度あそこに出かけるの怖くない?」
「大丈夫よ彩斗、私たちが犠牲にした仲間の為にも今回の事は最後まで見届けないとね。
それに、あの襲ってきた悪鬼を私たちは見てるし気配も覚えたから何かの役に立つはずよ。」
加奈が前のハイエースを指差した。
成る程、加奈が連れていた生き残りの死霊が8体、しがみ付いていた。
確かに何かの役に奴かも知れない。
俺達は出発した。
続く




