吸血鬼ですが、何か? 第11部 地平の彼方編を始める前に 加奈メモリアル3
加奈はエレファントガンでの射撃もリリーとのコンビネーションもぴったりでした。
以下 第7部 紛争編 30話より
以下抜粋
加奈が慎重にエレファントガンを構えて狙っている。
酸を吐きだす者達の口も溶け出して体も溶けつつあった。
「加奈、後ろに本体がいるよ。」
加奈と共にエレファントガンを構えたリリーが呟いた。
「見えるよリリー、目が光ってる。」
「奴を止めるには撃つしか無いね、これ以上殺させないよ、準備良いかい?」
「加奈、コピー。
終わらせてやるよ。」
酸を浴びて人垣が崩れた隙間からリリーと加奈がエレファントガンをほぼ同時に撃った。
エレファントガンから放たれた特殊弾が真ん中の男の顔の両側すぐ横を飛んで行き、後ろに控えた本体に命中した。
真ん中の男の顔が衝撃波で引き千切れた。
男の背後から物凄い呻き声が聞こえて黒いカーテンと思っていたものが激しく動き出した。
それはカーテンなどではなく、今までの蜘蛛の化け物の数倍は大きい、恐らくこの部屋から出る事さえ難しいと思える巨大な化け物だった。
あの五人組はこの化け物と合体した『生きた防弾チョッキ』だった。
加奈とリリーがシンクロして奇妙な舞いをして反動を逃がし、再度射撃姿勢をとると又発砲して、化け物の頭と思われる部分を粉々に吹き飛ばした。
化け物は断末魔の声を上げて動かなくなったが、その腹から夥しい酸があふれ出して演壇を溶かしながら床に流れ出て前の方にいた信者を溶かし焼きながらこちらに広がって来た。
「救出!
助けられるだけ助けろ!
死なせるな!」
リリーが叫んで手近にいた赤ん坊を抱えた母親の腕を掴んで外に連れ出した。
抜粋終わり
しかし、加奈の心の底の、人の幸せの為なら自分の全てでも差し出す加奈の底知れない優しさも垣間見えます。
しかしそれは加奈の底が見えないほどの孤独の裏返しだったのかも知れません。
以下 第8部 発覚編 21話より
以下抜粋
「真鈴、知ってたんだろう?
凛の事。」
真鈴はコーヒー豆を挽きながら答えた。
「あら当然よ、あの晩の女子会でね、決めた事なの。」
「そうか…でも…加奈は少し複雑だったんじゃないの?
クラと凛があんな感じでさ。
ここに来た時2人はまるで新婚夫婦みたいだったじゃないか。」
「あら、彩斗鈍いよね~!
そんなのあの保養所に行った時から見え見えじゃん!
クラの部屋に凛が昼食の事を聞きに来た時に加奈も私達もピーンと来たよ。
カフェテリアでもクラと凛は仲睦まじくお昼とってたじゃないのよ。」
…えええええ!知ってたのか!
俺は部屋でもカフェテリアでもクラにぞっこんな加奈が、クラと凛の関係を判っていないようで安心していたのに、おしゃべりしながらでもさりげなくきちんとチェックをしているんだな…女は恐ろしい。
「なんだ、それじゃあ加奈がクラの事そんなに好きと言う感じでも無かったんだね~。
俺はてっきり加奈がクラの事すごく好きだから凛の事を知ったら…。」
真鈴がテーブルに手を置いてため息をついた。
「はぁ~!
彩斗はユキちゃんと言う彼女も出来てあの体験も増えて少しは成長したと思ったけど…やっぱり全然おこちゃまだね~!」
「え?だってさ…。」
「良いかい彩斗。
彩斗の読み通り、加奈はクラにぞっこんだったんだよ!
加奈はね、恐らく自分でも初恋だと思うって言ってたよ。
もう、クラ以外考えられないってね!
クラの事…大好きだったんだよ!」
「…。」
「いつかクラと一緒に料理屋さんをやりたいなとか言ってたんだよ!
勿論結婚してね!」
「…え、それじゃ…。」
「あの保養所でクラと凛の関係を見抜いて凹んでいたんだよ、とっくにね!
でも、岩井テレサの話を聞いてね、考えたんだって。
あの土砂降りの駐車場の晩に加奈は凛の命を助けたじゃない?
でも、その後ほったらかしじゃ本当に凛を助けた事にならないってね!
それで凛と話してクラと一緒にここに来るように話したんだよ!」
「あ…あの時か…。」
「それがクラと凛の本当の幸せだとね…加奈はね!
自分の事を差し置いても他人の幸せを思う優しい子なんだよ!
彩斗が思うような少し軽い女子なんかじゃないんだよ!
私やジンコでも真似できないような凄い優しさを心の中に持っている子なんだよ!
勿論加奈も人間の女の子だよ!
あの晩の女子会で泣いてたよ!
本当にクラが好きだったんだよ!
凄く泣いてたけど、クラと凛の本当の幸せを考えたらってね!
私やジンコやはなちゃんと肩を抱き合って泣いて飲み明かしたんだよ!」
「…。」
「良いかい彩斗、この事は口が裂けても加奈や凛に言っちゃ駄目だよ、もちろんクラにも、他の誰にも行っちゃ駄目だよ。
あんたはワイバーンのリーダーだけど…誰かに話したらその時は…本当に殺すからね。」
真鈴はそう言って新しいコーヒーをトレイに乗せて暖炉の間に行った。
キッチンに残された俺は加奈の自分を捨ててでも他を思いやる優しさに打ちのめされた。
そして、人の心が全然判っていなかった自分を恥じた。
俺はのろのろと暖炉の間に行った。
抜粋終わり
こんな強く優しく可愛く素敵な加奈は、至近距離からのショットガンの連射を心臓に受けて即死してしまいました。
死にそうな危機の時に体液交換して悪鬼として生きることを決めていた加奈でしたが、即死状態で体液交換は全く不可能な状態でした。
加奈の冥福を祈ります。
そして、ワイバーン死霊メンバーとしての加奈の新たな活躍も…。
え?ええ?何言ってるんですかあなた!
死霊がごく普通に存在する世界観で加奈が消え去る訳、無いじゃないですか!
『吸血鬼ですが、何か?』をバカにしないでくださいよ!
加奈はまだ敵討ちも済ませていないしこの世に未練たらたらだから早々天に昇ったりしませんよ!
それにワイバーンだって人手不足だしね!
まだまだ、加奈はこき使いますよ!
当たり前でしょうがぁ!
たかだか20年位の人生で早々お役御免なんてぬるい事しませんよ!
と言う事で、明日より始まる第11部 地平の彼方編 お楽しみに!
わはははは!
ざまぁ~!
加奈はまだまだ消えないよ~!
終わり