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さととまりあ、美佐子ママの助けもあって『みーちゃん』ママは立ち直れそうだった…人類はしぶといんだよ!

「ところで、ユキ達はこれからどうする?

 ここには落ち着くまでいつまでもいて大丈夫だけどね。」

「ありがとう、彩斗、みーおばさんが落ち着くまで居させてくれる?

 後で『みーちゃん』を見に行かないとね…多分あの時の火の勢いだと全焼してしまったかも知れないけど…。」

「そうだね…『みーちゃん』ママ…みーおばさん…着の身着のままだったからいろいろ買って揃えないとね。

 みーおばさんの元気が出たら買い物に行こうよ。

 もう少し元気が出たらね。」

「そうね、彩斗、ありがとう。」


暫くすると、泣いている『みーちゃん』ママがさととまりあに両脇から支えられながらダイニングに来た。

『みーちゃん』ママはまだ泣いているが、さととまりあは微笑んでいる。


「え?さと、まりあ…。」

「彩斗君、もう大丈夫よ。

 彼女はまだ心に傷は残っているけど、すっかりストレスを吐き出したわ、彼女の事を心配している親友の事も伝えたわ。

 彼女はまた前に進める。」


さとがそう言うと『みーちゃん』ママがユキと俺を見て手拭いで顔を拭きながら言った。


「2人とも心配かけてごめんね。

 そして吉岡ちゃん、助けてくれてありがとう。

 吉岡ちゃん覚えてる?

 あなた、前に『紅』の美佐子ママに会ったとか言った時に冗談はやめてって言ってごめんなさい。

 美佐子ママは本当にいたわ。

 今さっきまで私の事を慰めてくれていたのよ。

 私…元気出さなきゃ…お腹空いたけど、何か貰える?」


俺とユキは顔を見合わせて微笑みあった。

俺はもう一つホットサンドを作った。

『みーちゃん』ママがホットサンドにかぶりついている間、暖炉の間でさととまりあから話を聞いた。


「彩斗君、美佐子ママを説得して『みーちゃん』ママの前に姿を現してもらう事にしたのよ。

 まりあの身体を使ってね。

 当然姿も見えるし、触れるし、語り合う事も出来るわ。

 『みーちゃん』ママは元気が出たみたいね。」


俺はさととまりあに丁寧にお礼を言った。

2人はほんのサービスと笑って、ジャガーに乗り込み、死霊屋敷を出て行った。

遠ざかるジャガーを見て俺は感慨にふけった。


やれやれ、さととまりあ、それにみちがまだ生きている時に初めてあの練馬3人組を見つけた時にはどう対処して良いのか、明石や四郎も含めて俺達は随分悩んだ物だった。

あの3人組は見かけに揺らずかなり強い。

正面切ってやり合えば随分危険な事になっただろう。

しかし、『ひだまり』に巣くうスケベヲタク死霊軍団の1人、彗星のシュタールが忍び込んで探ってくれたおかげで彼女達の事が判り、友好的な関係を築く事が出来た。

その後、みち達には助けられてばかりだった。


みちはその身を犠牲にしてまではなちゃんを取り返してくれた。


俺と四郎、真鈴とはなちゃんで本格的に質の悪い悪鬼と人間の討伐を始めた頃に、駆け出しの俺達はいきなり討伐に取り掛かるのではなく、事前に十分対象を調べる事を大事にしてきて本当に良かった。

四郎やはなちゃんが相手の心を読めると言っても充分相手を調べないと誤解や冤罪で無用な殺生をしてしまう。

充分に相手を調べる事で明石達、強力な仲間が出来たし、凛の制服泥棒をした黒田でさえ実は質の悪い悪鬼の犠牲者と言う事が判り殺さずに済んだ。


相手の命を左右する事をしているのだから事前に相手を調べる事に手を抜いてはいけないと言う事か…しかし、今回の白人の男の子はどうなんだろうか…。

ネットで有名ユーチューバーを殺して成り代わり扇動動画を流した奴らはどうなんだろうか?恐らく裏で繋がっているであろう奴らに何かしら俺達を納得させる大義のようなものがあるのだろうか?

状況が許せるなら問答無用で討伐したくなる奴らではあった。

そうしなければ、奴らを速やかに始末しなければ人類と悪鬼の社会が崩れ去ってしまうようで恐ろしかった。


ユキが後ろから近づいて俺に声を掛けた。


「彩斗。」

「ああ、ユキか。」

「みーおばさんがね、食事を終わってさ。

 あの…もう一度『みーちゃん』を見たいと言っているんだけど…。」

「ああ、お安い御用だよ。

 俺のランドクルーザーはこれから修理に出すから、他の車を出すけど、良いかい?」


俺はランドクルーザーを購入したディーラーに電話をかけ、修理を頼んだ。

午後には引き取りに来てその時に大体の見積もりを出すと言う事だった。

明石が留守番をするので見積もり代金を聞いて置いてくれるとの事だった。


俺は明石のレガシィを借りることにした。

これで死霊屋敷に残っている車はクラの軽トラックだけになった。

いざと言う時の為にもっと車を増やさないと…やがて俺が頼んだランドローバーディフェンダーも納車されるし、クラも軽トラックを買い替えると言っているからな。

しかし、もう何台かの車が欲しかった。


俺とユキ、『みーちゃん』ママは明石のレガシィに乗って『みーちゃん』がある商店街に向かった。

俺は勿論SIGと小雀ナイフで武装しているが、用心の為にダッシュボードにSIGと予備マガジンを2本、大きめのダガーナイフを入れて置いた。

最悪の場合ユキがこれを使って困難を乗り切る場合があるかも知れない。

トランクにはUMPサブマシンガンも入れてある。

最近俺はこれ位武装していないと出掛ける時に心細くなってしまった。

余りに今の社会の状況は物騒すぎる。


商店街に向かう途中でもあちこちに昨日の暴動の後を見た。

『みーちゃん』がある商店街は警察と消防の規制線が張ってあり中には入れなかった。


俺は警察の身分証を出して、ユキとママがこの中の『みーちゃん』を経営していた事を告げて商店街の中に入れてもらった。

あちこちで警察や消防が実況見分をしていた。

倒壊の危険があると言う事で建物の中には入れなかったが、『みーちゃん』は見事に燃え尽き、真黒な何本かの柱がようやく焼け跡を支えているような状態だった。

あの消し炭の中から何か役に立つ物を取り出す事は不可能だろう。

ママはじっと『みーちゃん』の焼け跡を見つめていたが、すっと背筋を伸ばした。


「今まで私の生活を支えてくれてありがとう。

 さようなら。」


ママがそう言って焼け跡に両手を合わせて頭を下げた。

俺とユキもママに習って両手を合わせて頭を下げた。

暫く感謝の祈りを捧げたママは顔を上げた。


「連れて来てくれてありがとう、吉岡ちゃん。

 さっき、さとさんとまりあさんがね、なんて言うのかな?

 『紅』の美佐子ママと仲介してくれて色々昔の事を話したのよ。

 ユキがまだちっちゃい子供の頃だから覚えていないと思うけどね。

 私がここで『みーちゃん』を始める時は、実は親族皆が反対したのよ。

 ユキのお母さんもね。」


ユキが意外そうな声を上げた。


「え?だって今はうちの母さんはママの店応援しているし、私がぐれちゃったときも母さんがここに連れて来てくれたのよ。」

「そうね、ユキ、親族の皆は意地悪じゃなくてね、私が飲み屋さんなんてやって行けるか心配してくれたのよ。

 今は店が軌道に乗って、みんな安心して私を応援してくれているけどね。

 そして、ここに『みーちゃん』を開いた時に一番初めにこの商店街で応援してくれたのが『紅』の美佐子ママなのよ。

 最初に『みーちゃん』に飲みに来てボトルを入れてくれたのは、美佐子ママなのよ。」


今まで知らなかった『みーちゃん』ママと『紅』の美佐子ママとの話だった。


「それでね、実は今までに一度、この店も火事で燃えそうになった事が有ったのよ。」

「え?」


『みーちゃん』ママが感慨深げに話し始めた。


もう何十年も前、『みーちゃん』を初めて数年経ち、なんとかやって行けそうな時に、向いに有ったお弁当屋から出火し、強風で煽られた火の粉が『みーちゃん』に相当飛んできたとの事だった。

両隣の店の人達が皆逃げ出した後でも、ママは必死にバケツに水を汲んで『みーちゃん』が燃えないように水をかけ続けたらしい。


「その時にね、まだ店を開ける前の時間のすっぴんの美佐子ママが駆け付けて来てね。

 『みーちゃん』に水を掛けるのを手伝ってくれたのよ!

 2人とも目を釣り上げて必死な形相でね。

 消防車が来て放水するまでずっと『みーちゃん』にバケツで水をかけ続けて…おかげで両隣の店はかなり燃えたけど、『みーちゃん』は助かったの。

 その時に私はね、ああ、美佐子ママは恩人で親友だなって…『紅』の隣の中華料理屋が火事になって『紅』も、2階に住んでいた美佐子ママも燃えちゃった時はね、私落ち込んだわ…真夜中だったこともあってね、火事に気がついてバケツに水を汲んで『紅』に走った時はもう手遅れだったの…。」


『みーちゃん』ママが新たに涙を流した。


「みーおばさん、そんな事が…。」

「そうなのよユキ…私は美佐子ママに恩返しも出来なくてね…随分落ち込んだわ…だけどね、さっき、さとさんとまりあさんのおかげで美佐子ママとじっくり話せた。

 美佐子ママは私が助けられなくてごめんねってずっと悲しんでいた事も知っていたし、そんな事もう忘れれば良いのにって、私たちは今もずっと親友だよってね…言ってくれてさ…。」

「それでママはあの時美佐子ママの写真とボトルを…。」

「そうよユキ、美佐子ママの写真とボトルまでまた火事で焼けたら…申し訳ないからね。

 美佐子ママはずっと私の店の心配をしてくれていたわ。

 それでさっきね、美佐子ママにハッパかけられちゃった。

 あなたはまだ生きているのだからもう一度店を再建しなさいって、場所はどこでも良いからまた店を始めなさいってさ。

 美佐子ママはまだ死んでからそんなに年月が経っていないけど、『みーちゃん』の守護霊になってお店が繁盛するように頑張ってくれるって…。」


そこまで言ってママはまた顔を両手で覆い泣き出した。

ユキがしっかりとママを抱きしめた。


俺も二人を見て目がウルウルしてきた。

なるほど、一所懸命に生きて来たんだな皆…。


『みーちゃん』ママが涙を拭いて顔を上げた。


「だからね、もう、めそめそするのはここで終わり。

 美佐子ママをがっかりさせたくないもの。

 ここでまた開店するのが難しければ、またどこか新しい所で『みーちゃん』を始めるわよ。」


目を赤くしながらも『みーちゃん』ママは笑顔を浮かべて拳を上げた。


「そうよ!みーおばさん!その調子よ!私も『みーちゃん』再建に力を貸すわよ!

 頑張っちゃうわ!」


ユキがそう言ってまた『みーちゃん』ママを抱きしめた。


俺には見えた。

 

『みーちゃん』ママとユキを、美佐子ママが2人を抱きしめながら俺に向かってニッ!と笑顔を浮かべて親指を立てた。


俺は美佐子ママに親指を立てて答え、俺も協力を惜しまないと心の中で美佐子ママに誓った。


俺達はまた『みーちゃん』の焼け跡に頭を下げてから、当面『みーちゃん』』ママが必要な物を、洗面用具や着替えを買いにゆき、前にユキと見た死霊屋敷の最寄りの駅にある飲み屋街を見に行った。

地元の不動産業者に頼んで何件かの空き店舗を見学していた。


数件の店が焼けたあの商店街は今後どういう形になるか判らないのでとりあえずは直ぐに『みーちゃん』を再開店させようとママが言った。

ママは新しい店を開店させるために忙しく頭を回転させ始めた。

残った預金などを使って新しく店を開店させるために頭をフル回転させて計算をし始めた。

逞しい『みーちゃん』ママが戻って来た。


ママが希望を取り戻すきっかけを作ってくれたさととまりあ、そして、ママを支えると約束してくれた美佐子ママに俺は改めて感謝した。


そうだよ!人間はしぶといんだよ。

ママだけじゃない!

特に日本人は過去に何度も自然災害や人災で焼け野原になったり町が波にさらわれたり色々な目に遭ったがその度にへこたれずに復興させてきたんだ。

今は日本だけでなく、世界中で大変な災害があってもその度に世界中が頑張って応援してどんなに小さな、微かな希望の光でも、それを必死に守ってしがみ付いて石にかじりついて頑張って、お互いに支え合って再建させて前に進んで来たんだ。

今も人類はお互いに恐ろしい事を止められないけれど、それでも希望を持つ限り人類は前に進める!

この希望の光を守らなきゃ!

人類の希望を吹き消すような奴らは俺達が頑張って遠ざけなければ!

レガシィのハンドルを握る俺の手に力がこもった。

この1年足らずの間に、俺は今までの生き方ではとても気が付かない色々な事に気が付いて、俺の決意はどんどん高く積み上がって行った。

四郎が入った棺を手に入れた時の小さく情けない2回と4分の1野郎の俺はもう、すっかり遠い過去の存在になった事に気が付いて、俺は苦笑いを浮かべた。

だけどまだまだだよ!

まだまだこれからどんどん頑張らなければ!


俺は、今までの情けない俺に『気付き』を与えてくれた色々な出来事や存在に改めて感謝した。

2回もお漏らししたり、色々恥ずかしい経験をしたり、とても恐ろしい思いをして逃げ出したくなったりしてたけど、頑張って前に進む限り、もうそれは恥ずかしい事では無いんだよ。

どんな未来が待っているか判らないけど、人類が、人類や悪鬼や死霊達が地平の彼方に進む歩みを止めてはいけないんだ。







続く


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