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『みーちゃん』ママは随分落ち込んでいるが、さととまりあは人を癒すスペシャリストだと言う事を忘れていた。

「さと、まりあ、貴重なヒントをくれてありがとう!

 助かったよ。」


俺が礼を言うとさととまりあが微笑んだ。


「お安い御用よ彩斗君、あれ?

 今日ははなちゃんがいないの?」


さとに尋ねられて真鈴が苦笑を浮かべて答えた。


「昨日、彩斗の行きつけの店で彩斗の恋人が働いている『みーちゃん』と言うお店がね、暴動に巻き込まれる範囲にあると言う事が判って私達で向かったのよ。

 案の定暴動が起きて、ユキちゃんと『みーちゃん』のママ達を助け出す事は出来たのだけれど…お店は焼けてしまったのよね。」

「まぁ、それは酷いわね…お気の毒に…。」

「それでここに帰って来てね、はなちゃんが色々慰めていたのだけれど『みーちゃん』のママがなんて言うか精神の疲れでね…ちょっと子供に戻ったような感じではなちゃんを離さなくなって…。」

「まぁ…。」

「今朝も何とか食事はしたのだけれど、相変わらずはなちゃんを抱きしめてふさぎ込んでいるのよ。

 可哀想に…何十年も切り盛りしてきたお店だからショックも大きかったのかも…。」


さととまりあが俺を見た。


「彩斗君、加奈のお別れの時にユキと一緒に来てくれていた人よね~。

 全然知らない訳じゃ無いし、私達で話を聞いて少しでも苦しみを癒せればと思うんだけど…。」


なるほど、さととまりあはそう言う、人生の苦しみに悩んでいる人を癒すのが専門じゃないか!

これほどがっかりしている人を慰めるのに適役はいない。


「ああ!さと、まりあ、助かります!

 お願いしても良いですか?」


さととまりあが微笑んで引き受けてくれて2階に上がって行った。


「あ~、これで『みーちゃん』ママも元気が出れば良いわね。

 あ、もうこんな時間だよ。

 喜朗おじ、『ひだまり』に行かなくちゃ!

 誰か、午後に深海オートがランドローバーを取りに来るから修理期間と修理代金の見積もりを訊いておいてね~。」


真鈴が時計を見て慌ててタオルを頭から剥ぎ取って言った。



「え~と、ジンコは今日…。」

「真鈴、私は今日は夜まで岩井テレサの施設に行くわ。

 宇宙服を着た状態での船外活動でマニピュレータを動かす訓練とかの基礎をやるのよ。

 本当は何日間か泊まり込みでやる訓練なんだけど、まだ完全に選考された訳じゃないからね、予備訓練と言う事かしら?」

「ああ、成る程ね。

 ジンコ、行ってらっしゃい。

 頑張ってね。」

「真鈴、ありがとう!

 加奈~!RX-7借りて行くよ~!」


死霊屋敷のどこか遠くから加奈の声でどうぞですぅ~!と聞こえて来た。


「サンキュー!」


ジンコはそう言うとリビングに吊ってある

RX-7の鍵を取ってガレージに行った。


「宇宙かぁ…ジンコ、凄いわ。」


ジンコの後ろ姿を見ていた真鈴が呟いた。


そう、きわめて順調に進めば早ければ来年中にもジンコはロケットに乗って月に飛び立つのかも知れない。


真鈴はため息をつき、喜朗おじを急かして2人でハイエースに乗って『ひだまり』に向かった。

四郎は夕方にリリーが泊まりに来るんだと笑顔になって俺に言い、夕食用に手の込んだ料理を作ると言う事で食材を仕入れに真鈴のボルボに乗って出かけた。


明石夫婦は少し溜まっていた俺の会社の経理計算などをはじめ、加奈はたった今『ひだまり』から迎えに来たスケベヲタク死霊と共に江戸川区葛西に白人の男の子の捜索に出かけた。


俺は2階に上がり、ユキとママが泊まっている部屋に入った。

さととまりあがベッドでママを挟むように腰かけて何やら話をしていた。

はなちゃんがママの手から離れてユキに抱かれていた。


「おお、彩斗。

 みーおばさんは随分落ち込んでいてな。

 よほど思い出が積もって居た場所なんじゃろうの。

 やっとわらわは解放されたじゃの。」

「うん、はなちゃん帰りの車の中でかなり前に死んじゃったけど凄く仲が良かった『紅』のママが寄り添って一緒に泣いてくれていたよ。」


俺とはなちゃんの会話を聞いていたユキが声を上げた。


「え?『紅』のママって…美佐子ママの事?」


俺は慌ててユキを部屋から廊下に連れだした。


「そうだよユキ。

 美佐子ママがずっと『みーちゃん』のママの肩を抱いて泣きながら慰めてくれていたんだ。

 俺は車を運転していたから途中から見なくなったけどね。」

「あいや、彩斗。

 その美佐子ママとやらはずっと『みーちゃん』ママの横におったじゃの。

 美佐子ママは『みーちゃん』ママが驚くから黙っていてくれと言われたじゃの。」


ユキは感慨深げに頷いた。


「そうかぁ~、あの2人はとても仲が良かったのに…美佐子ママ、気を利かせ過ぎだよね~。」

「そうじゃのユキ。

 なんでも、美佐子ママが死んだ後で子供の所に行ったら中途半端に死霊が見える息子の嫁が感づいてな、これまた中途半端に死霊が見える祓い屋とか言う極道にいろいろな嫌がらせをされた経験があるじゃの。

 じゃからあまり自分の事を普通の人間に伝えるのが怖いらしいじゃの。」

「ふ~ん、なんか可愛そうね。」

「大丈夫じゃのユキ、さととまりあも美佐子ママが心配しているのを部屋に入った時から見て知っておろうからの。

 その辺りもうまく『みーちゃん』ママに伝えるじゃろうの。

 後はさととまりあに任せて下で改めて食事をとったら良いじゃの。

 きっとユキはあまり食べていなくて腹が減っているじゃの。」

「ええ?はなちゃん判るの?

 実はそうなんだ~!」


俺はユキをダイニングに連れて行きキッチンで何か適当な物を見繕って食事を出してやった。

腹が減っていたのだろう。

ユキはハムやチーズ、サラダを挟み込んだホットサンドにぱくついていた。


「彩斗、本当にありがとう。

 昨日、彩斗達がもう少し遅かったら私達、危なかったかも知れないわ。

 火事で逃げ遅れて死んでいたかも…。」


そう行ってユキはぶるっと身を震わせた。


「もう大丈夫だよユキ、ユキもママも落ち着くまでここにいれば良いさ。

 何の心配もいらない、みんな大歓迎だよ。」

「ありがとう彩斗。

 少しの間厄介になるかも知れないわ…ううん、ママ次第では長くなるかもしれないけど…。」


そう言ってユキは手を伸ばして俺の手を握った。


「私、ずっと悪鬼の討伐をしている彩斗や彩斗の仲間を心配してたけど…今回は普通に生活をしていた私達の方が危ない目に遭ったわ…なんか皮肉ね。」


そう言ってユキは苦笑いを浮かべた。


その通り、普通に生活をしている人間が暴動に巻き込まれて家を燃やされたりする危険なんて今までの日本では考えられない事だ。

今回の騒動を起こした奴らはいったい何を考えているのだろうか?

どんな社会にしたいのだろうか?

とてもまともな考えを持っている奴らには思えなかった。



  




続く

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