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真鈴は眼鏡とランドローバーを褒められてご満悦だったが…新たな嵐の予感がやって来た。




集まった皆の目が、スポーツタイプの小振りでスクエアなフレームの眼鏡をかけた真鈴に注がれた。


「あ~!

 真鈴眼鏡してる~!

 なんかかっこいわ~!」


忍が真鈴を指差して声を上げた。


「ほほう、眼鏡か。

 真鈴の頭がも少し良くなった感じじゃの!」

「中々似合うじゃないの真鈴!」

「スタイリッシュと言うのか?

 前とは少し違う感じだが、これはこれで良い物だな!」

「真鈴さん!似合ってますよ!

 俺も凛に伊達眼鏡してもらおうかな?」

「真鈴、渋いわ~!

 絶対にもっとモテるよ~!」

「うむ、真鈴の女前が一段上がったようだな!」


真鈴の眼鏡は好評を得た。


「えへへ、私の眼鏡は良いからこの車を見てよ!」


真鈴の言葉に皆がランドローバーシリーズⅡに近寄った。


「中々ごついな。

 しかし、思ったよりも小さいんじゃないか?」

「うむ、遠くから見た印象よりコンパクトになってる車だな。」

「凄いわねあちこちリベットを打っているじゃない。」

「うわ、なんか…戦車みたいだね~!」

「リベットだけじゃない、可動部のボルトも頑丈そうなのが剥き出しだな!」

「これは渋いっすね~!」


皆の声を真鈴がまるでランドローバーのオーナーの様に上機嫌な顔で聞いていた。


「そうなのよ。

 この車のミソはね、見た目に反して実は凄く軽く出来ているのよ。

 オリジナルは1・3トンくらい、乾がかなり手を入れてるけど、それでも1・5トン無い位かもね。」

「なるほど、見た目はごついが俺のレガシィとそう変わらない車重だな。」

「そうなのよ景行。

 頑丈さを求める以外のボディ部分はアルミを多用して軽量化に努めているからね。

 でも、頑丈さを犠牲にしていない所が凄いのよ。

 そして、これは車検上は7人乗れるのよ。」

「え?でも、真鈴、ドアは2枚だぜ。」


真鈴がランドローバーシリーズⅡの後ろに周り、ごつい蝶番のドアハンドルを回した。

内部は二人掛けの椅子が車外側に背を向けて対面に設置してあった。

ランドローバー伝統の仕様で車上部に開けられた窓で車内がかなり明るく見える。


「ほら、多少窮屈かもしれないけど充分後ろに4人乗れるわ。

 前がベンチシートだから3人、計7人乗りなの。

 まあ、前のベンチシートはシフトレバーとかが邪魔だから2人しか乗れないと思うけど、緊急の場合は7人乗っても大丈夫よ。」

「ふ~ん、イナバ物置のような感じだな。

 なかなか気にいったぞ。

 ところで真鈴、肝心のオフロードではどうなんだ?

 乗り心地はともかく、走破性能は大事だぞ。」

「えへへ、景行、あとでそれを試そうとは思っているわ。

 もともとランドローバーの足回りは定評があるからね、期待しているわ!

 敷地の外れにこれのオフロード性能を試す丁度良い所があるじゃない。」


なるほど、真鈴の言葉で思い出した。

死霊屋敷の敷地の外れに林道と言うか、獣道に毛が生えた程度の荒れた道が有って、車には結構な難所で俺のランドローバーディフェンダーが納車されたらオフロードテストに使おうと思っていた場所がある。


「成る程あそこか、結構起伏もあるし、テストには持って来いだね。」


真鈴が俺を見て顔をほころばせた。


「そうよ彩斗、あの道の処女走行はこのランドローバーシリーズ2でやらせてもらうわよ。

 彩斗も乗せてあげるから楽しみにしててね。」


俺と真鈴が話している間に明石達は車の前に回って予備タイアが乗っているボンネットを開けてエンジンを覗き込んでいた。


「結構古い4気筒でエンジンルームはかなりスカスカな感じだな。

 まぁ、あのエンジン音から多少はチューンをしていると思うが。」

「でもこれなら奥まで手が入って整備しやすいかもね~。」


明石とジンコがエンジンを覗き込んで会話を交わしているのに真鈴が割り込んだ。


「その通り、多少馬力とトルクを上げているわよ、だけど今の電子部品をあまり使わないようにチューンしたってさ。

 だから故障しても大体の自動車整備場ならパーツにあまり困らずに修理できるって。

 さっき町中をジンコと乗ったけど、アクセルを踏むだけスピードが上がるからストレス感じなかったわ。」

「そうね真鈴、首都高の合流でも余裕の加速だったし、乗り心地も意外と良かったわ。」

「乾の事だから足回りもチューンしているだろうしね。

 さて、私お腹が空いた。」


真鈴がボンネットを閉め、俺達は屋敷に入り、夕食の準備に取り掛かった。

夕食を食べ、夜のトレーニング、そして恒例の暖炉の間でのミーティングを始めた。

『ひだまり』を閉めた喜朗おじ達や、捜索から帰った加奈も集まり、今日の事を話し合った。

加奈率いるスケベヲタク死霊軍団の捜索では有力な情報を掴めず、今度は少し南寄りで明日も捜索を行う事になった。

加奈が真鈴が乾からランドローバーを借りたのを羨ましがった。


「ふわぁ~!加奈もあのごつい車を運転してみたかったですぅ~!

 死霊になって残念ですぅ~!」


はなちゃんが手を上げて加奈を見た。


「あいや、加奈、お前は練習すれば車の運転位は、いやいや、あのバカでかいエレファントガンやほかの武器も念動で動かす事が出来るようになるやも知れんじゃの!」

「え…ええええ!

 はなちゃん!それは本当ですかぁ!」

「ああ、加奈は人間でいる頃に体に染み込むほどに武器の扱いや車の運転をしておるからの。

 人間の時の感覚が加奈の心に残っているから結構簡単に出来るようになるかも知れぬじゃの。

 まぁ、訓練次第じゃがの。」

「ふわぁああああ!

 それは素敵ですぅ~!」


はなちゃんの言葉は加奈だけでなく俺達にも朗報だ。

だが、加奈が車を運転できるようになっても、死霊が見えない物から見ると無人の車が走っているように見えた新たな騒動を起こすかも知れないから注意せねば。


「それは良い事だな。

 しかし、死霊が見えない者からしたら加奈が車をドライブしていたら無人の車が走っているように見えるから騒動になるかも知れん。」


俺の心配を読み取ったような事を四郎が言って皆がうんうんと頷いた。


「なに、加奈が運転する時は些か精巧に作ったマネキン人形でも運転席に置いて置けばよかろうじゃの!」


はなちゃんが手を上げて言ったが…それはそれで怖いだろうなと俺は思った。

加奈が頻繁にドライブをするようになったらマネキン人形が運転する車と言う新たな都市伝説が誕生するかも知れない…。


夜のニュースチェックの時間が来た。

ショッカー対策班を設立したり政府の必死の呼びかけなどで、何よりも静岡の事件以来、暴動やデモ鎮圧の場面で悪鬼の存在が確認されていない事で世間は不安を抱えながらも何とか落ち着きを取り戻しつつあって、暴動などはめっきりと減ったと言うか、今日は一件も日本国内でデモや暴動が起きていない事をニュースが伝え、俺達は胸を撫で下ろした。


「やれやら、一安心だな~。

 このまま暴動が起きないと良いのだけど…。」


俺がテレビを見ながら言うとジンコや真鈴、凛や圭子さんがにやにやしながら俺を見た。


「そりゃあそうよね~!

 彩斗の大事なユキちゃんがいる『みーちゃん』が暴動の巻き添えになったりしたら大変だもんね~。」

「うん、まあ、そういう事だよ。

 自分に身を守る為に訓練していると言ってもユキにナイフやSIGを持たせる訳にいかないからね。」

「しかしあの辺りは建物とかが密集してるから暴動で火事とかになれば大変よね。」

「脅かすなよジンコ。

 しかしね、この前屋敷の最寄り駅の飲み屋街に『みーちゃん』を移そうかな?とかユキと少し話したんだよね。

 まぁ、ママはあそこが長いからうんとは言わないと思うけど…。」


圭子さんが笑顔になった。


「あら素敵!

 『みーちゃん』が近くにあれば毎週末でも行くわよ!

 ね!景行?」

「そうだな、それも悪くないかもな。

 ここに司と忍を残すとしても誰かしらが居るから安心だし。

 彩斗もユキちゃんと『みーちゃん』のママを説得してみたらどうだ?」


明石がそう言った時、いきなり俺のスマホに着信があった。

画面を見ると、乾からだった。


「おや、乾から電話だ。

 何だろう?」


真鈴が声を上げた。


「いやだ、ランドローバーをすぐ返せとかじゃないでしょうね!

 とにかく彩斗、出なさいよ。」


俺はスマホをスピーカーにして電話に出た。

乾がいつもの余裕満々の感じと違い、やや切迫した声で話しているのに俺達は不吉の念を感じた。


「彩斗か!

 緊急事態だぞ!」

「乾、何が起きたの?」

「とにかくパソコンを持ってこい。

 ネットの掲示板で大騒ぎになってるぞ!

 ついさっき俺達であの男の子に繋がるかも知れない奴を捕まえたんだがな、小物だけど尋問の途中で体の中に隠していた爆弾で自爆しやがったが、奴が爆発する前にな、奴らが悪鬼を大々的に動員して暴動を起こす計画が有るんだが、それが今夜だぞ!」

「…え?ええええ!」

「お前達は俺達と同じ奴らを追っているよしみで教えてやる。

 人間に紛れてそこそこフォロアーを抱えてる悪鬼の仲間がな、今大々的に幾つかの場所で暴動を起こすように呼び掛けているんだ!」


ジンコがパソコンを持って走って来るとテーブルに置いて開いた。

色々検索するまでも無く、そこそこネットで有名な人間が動画などを使って暴動を煽り唆していた。


人間と悪鬼の識別が出来る明石、四郎、喜朗おじ、圭子さん、凛の顔が青ざめた。


「なんだこれは…人間もおるし悪鬼もいるぞ…これが全部奴らの仲間なのか…。」


乾の声がスマホから続いた。


「暴動を起こす幾つかの場所の中にな、○○駅の近所の商店街も指定しているぞ。

 彩斗、お前がもともと住んでいた近くじゃ無いのか?」


俺は乾の声に頭が真っ白になった。

その商店街はまさに『みーちゃん』がある所だった。


俺はあまりの事に声を出せなかった。


真鈴が俺の肩を叩いた。


「彩斗!何をぼさっとしてるのよ!

 彩斗のランドクルーザーと『私』のランドローバーで『みーちゃん』に急行するわよ!

 あの2台なら多少の障害物は跳ね飛ばして走れるからね!

 四郎とジンコは私達と一所に来て!

 勿論武装して出掛けるわよ!

 景行達はここの守りを固めて!

 あと、岩井テレサとショッカー対策班にも連絡を急いで!」


頭が白くなった俺の代わりに真鈴がてきぱきと指示を出して皆が行動に移った。


「彩斗!ぐずぐずしないでユキ達を迎えに行くよ!

 ジンコ!『みーちゃん』に電話して暴動に気を付けるように! 

 出来れば店を閉めるように言って!

 私達が急いで迎えに行くからと伝えて!

 彩斗!さっさと武装してよ!」


俺はのろのろと立ち上がり、自分の頬を両手で叩いて気合を入れて自室にSIGなどを取りに行った。


真鈴がテーブルの俺のスマホ越しに乾に礼を言っていた。


「ありがとう乾!

 すぐ対策を立てるわ!

 ありがとう!」


スマホ越しの乾は黙っていた。

乾の喜びをかみしめる感情がスマホから漏れ出ていた。


「乾!あと一つお願い!」

「なんだ…真鈴…。」

「あのランドローバーシリーズⅡをもう何日か長く貸して!」

「え…え…。」

「乾!

 恭介!お願い!」

「良いぜ!良いぜ!好きなだけ乗ってろぉ!

 満タン返しだからな!

 真鈴!もう一度俺の名を呼んでくれ!」

「お安い御用よ!

 恭介!サンキュー!」


真鈴に下の名前で呼ばれた乾が破れかぶれのような口調で答え、真鈴はよっしゃー!と叫んでガッツポーズをとった。

スマホの通話は乾の歓喜の喜びの声で切れた。







続く 


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