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俺達は白人の男の子の捜索に加奈達死霊を繰り出した…その帰り道、乾は熱烈眼鏡っ子ラブだと発覚する。

翌日、俺とジンコと真鈴、加奈が乗ってスケベヲタク死霊がボディにしがみ付いたランドクルーザーは葛西駅にほど近い場所に車を停めた。


加奈ははなちゃんから10歳くらいの白人の男の子の思念の残り香を読み取っていた。


「ふわぁ、ここですか~!

 さて、例の男の子を探すですよ~。」

「加奈、気を付けてね。」

「大丈夫ですぅ~!

 死霊屋敷までの道も覚えたから彩斗達はもう帰っても良いですよ~!」


そう言って加奈が車から抜け出ると選抜されたスケベヲタク死霊軍団の死霊が加奈の前に整列した。


「番号!」


加奈が叫ぶと直立不動に並んだスケベヲタク死霊達が番号を唱えて行った。

今日、加奈は12体の死霊を連れて来ていた。

やれやれ、死霊が見える人がこの光景を大騒ぎだろうな…案の定、ランドクルーザーを停めたそばの公園で顔を洗っていたホームレスの男が加奈と配下のスケベヲタク死霊達を見て悲鳴を上げて逃げて行った。


「皆、私の思念は読んだわね~!」

「イエスマム!加奈隊長!」

「よし!これからこの一帯をしらみつぶしに探し回るぞ!

『ひだまり』に帰ったら加奈の歌と踊りを最前列で見る許可を与える!

 重要な手掛かりを掴んだ者は私とのデュエットを1曲だけ許可するぞ!」

「そそそ、それは何たる幸せ!

 光栄の行ったり来たりです!加奈隊長!」

「よし!皆!掛かれ!

 加奈親衛隊の力を見せてやるのだ!」

「イエスマム!加奈隊長!」


張り切ったスケベヲタク死霊達は散って行った。

加奈が俺に振り返り親指を立てた。


「私もあいつらも建物の壁など素通りして探し回れるから大船に乗った気でいるですよ~!

 夜には帰って『ひだまり』でコンサートですぅ!

 玲ちゃんと彼氏達も遊びに来るですよ~!

 情報を楽しみに待っているですぅ~!」


加奈はそう言い残して街に消えて行った。


「彩斗、首尾はどうなの?」


死霊が見えない真鈴が俺に尋ねた。


「真鈴、ジンコ、加奈達は張り切って捜索に出かけたよ!

 12体の死霊を連れているからかなり広い範囲を深く探れると思う。

 死霊はどこでも入り込めるから人間や悪鬼ではできない芸当だよ。」

「彩斗…12体の死霊ってどうやってついてきたの?」

「ああ、この車にしがみ付いて来たんだ。

 帰り道を覚えたからもう車で連れて来なくても迎えに来なくても大丈夫さ。」


俺の返事を聞いた真鈴の顔が引きつった。


「12体も死霊がこの車にしがみ付いていたの…。」

「真鈴、さっきすれ違った車がいきなりクラクションを鳴らして急停車したじゃない?

 運転してる人が目を見開いてあたしたちを見てたけど…あの人…死霊が見えてたのかもね。」


ジンコが落ち着いて監察結果を真鈴に言った。


「ひぃ!加奈はしょうがないけど…他の死霊はなんか凄く怖いよ…。」


ジンコが笑い出した。


「真鈴おっかし~!

 あなたもう、何体も悪鬼を始末してるのにね~!」

「ジンコ、悪鬼と死霊はやっぱり違うよ。

 はなちゃんだって最初の最初は怖かったもの。」


真鈴は今までとてつもない恐怖な出来事を潜り抜けて来ているのに、相変わらず死霊は苦手らしい。

これはますます『ひだまり』に巣くうスケベヲタク死霊軍団の事をうかつに話せないな…。


「さて、俺達の役目は終わりだ。

 死霊屋敷に戻ろうか。」

「待って彩斗。

 どこかで眼鏡屋さんに寄ってくれる?

 私最近遠目が効かなくなった感じなのよね~。」

「え?真鈴、大丈夫なの?」

「ジンコ、射撃とかも遠距離射撃じゃなければ大丈夫だけど、まぁ、スポーツタイプの眼鏡とか作ろうかと思っているんだ~。」


俺達はランドクルーザーを発進させて眼鏡屋さんを探しながら街を走った。

大手の眼鏡屋を見つけ、真鈴は視力検査を受けた。

右目が0・6、左目が0・7らしい。

常に眼鏡を付けるほどでは無いが、やはり眼鏡をした方が良いと言う事で、ずれにくいスポーツタイプとエレガントなタイプのフレームものを数種類作る事になった。

レンズの在庫があるので数時間で出来ると言う事で俺達は近くで昼食をとりながら待つ事にした。


「真鈴、眼鏡よりコンタクトレンズの方が良いんじゃないの?」


ジンコが尋ねると真鈴が顔を振った。


「ジンコ、なんかレンズと言っても目の中に異物を入れるじゃない?

 なんか生理的に嫌なんだよね~!

 それによくレンズが目から落ちたりずれたりとか騒いでいる子がいるじゃない。

 私が緊急の時にそうなったら命取りになるかも知れないからね~!」

「なるほど、常に予備を持っていれば眼鏡の方が便利かも知れないね。

 あそこに美味しそうなレストランがあるぜ。

 あそこで昼飯にしようか。」


俺はチェーン展開をしていない個人経営らしい洒落たレストランの駐車場にランドクルーザーを停めた。


「あれ?彩斗、ジンコ、見て!

 ランドローバーのシリーズⅡよ!

 うひゃあ~!

 やっぱりかっこ良いわぁ!渋いなぁ~!」


俺が見た先には乾がこの前に『ひだまり』に乗って来たランドローバーが駐車場に停まっていた。

乾のランドローバーだと知っている俺とジンコは顔を見合わせた。

真鈴はランドクルーザーを飛び降り、ランドローバーに走って行き、フロントライトが中央に寄った、いわゆる『寄り目』のランドローバーに近寄ってしげしげとあちこち見ていた。


「真鈴、お店に入るよ~!」


ジンコが呆れた声を出し、俺達は店内に入った。

店内中央にある6人掛けのテーブルで乾が料理を目の前に並べてぱくついていた。

乾は俺達に気が付くと顔を上げて笑顔で手を振った。

そして俺とジンコの後ろに真鈴がいるのを見るとやはり少し顔が赤くなった。


「よう、奇遇だな…まあ、そうでもないか。

 ここの料理は旨いぜ。

 一緒のテーブルにどうだ?」


俺とジンコと真鈴は顔を見合わせたが、乾達との情報交換のチャンスかも知れないので乾のテーブルに座り、料理を注文した。

乾のお勧めはドリアとビーフストロガノフ、それとフィレステーキもミディアムレアで焼いた物が絶品らしい。

悪鬼の味覚は確実なので俺達は乾のお勧めの料理を頼んだ。


「やはりお前達はなかなかやるな。

 あの白人の男の子の居場所に目算が付いたんだろう?」

「ああ、乾、その通りだよ。

 お前達も大体の場所は突き止めたようじゃないか。」

「そうさ、俺達の情報網も伊達じゃないからな。

 彩斗、お前達の捜索の主力はやはりあのぬいぐるみのはなちゃんなのか?」

「ああ、そうだよ。 

 しかし今日から死霊達を捜索に参加させているんだ。」

「成る程…死霊を使っているのか…それは便利そうだな。」


乾は俺と話している間も真鈴をちらちらと見ていた。

俺とジンコはひそかに目配せして微笑んだ。

当の真鈴は注文を済ませたのに色々とメニューを見ていた。

全く鈍感な女だな。


「乾、今日はハコスカじゃ無いのか?」

「ああ、たまにはランドローバーも良いと思ってな。」


真鈴がメニューから顔を上げた。


「え?あのランドローバーシリーズⅡは乾のなの?」

「この前に言ったと思うが…あれは俺のコレクションの一つだ。」


赤い顔の乾が答えた。

真鈴は乾の態度にも気が付かずにランドローバーシリーズⅡに食いついた。


「ええ~!やっぱり結構ハードにいじっているんだね!

 排気管もフェンダーの上まで上げてるし、ウィンチとアニマルバーも付けちゃってさ!

 うちの実家には先代のディフェンダーが有るんだよ。

 彩斗は今のディフェンダーを頼んでいたそろそろ納車予定なんだけどね!」

「ああ、そうなんだ真鈴ちゃん。

 あのシリーズⅡは外見だけじゃなくてミッションもサスもエンジンもいじっている、デフも強化しているから、まずよっぽどの事が無い限りウィンチの世話になる事も無いよ。

 オフロード番長だな。」

「ええ~!

 凄い凄い凄いね~!」


真鈴がますますはしゃぎ、乾はますます顔を赤くしていて、俺とジンコは笑いを押さえるのに苦労した。

ジンコが乾に尋ねた。


「ところで乾。

 何か他に情報を掴んだの?

 同じ相手を追っているから少しくらいは…。」

「おっとジンコちゃん。

 俺達は完全独立で中立な団体なんだ。

 あまり、他の組織と共同では…まぁ、これ位は良いかな?」


俺達は身を乗り出して乾の次の言葉を待った。


「まだ…あの男の子以外の事はこれと言って情報は掴んでいない。

 男の子の正確な居場所も調査中だ。」


俺達はずっこけた。


「なんだよ、俺達とあまり変わらないじゃないか。」


俺が言うと乾は笑顔で誤魔化した。


「まぁ、同じ標的を追っている同士だからな、もし俺達が先にあの男の子を捕まえて情報を聞き出せたらお前達にも情報を流してやらんでも無いな。

 今回の黒幕は早く全部捕まえて排除するに越した事は無い。

 これは俺達全体の利益だからな。

 …ところでここは葛西から少し離れているが、たまたま食事に来たのか?」

「いや、真鈴が眼鏡を作る事になってね。

 出来上がるまでの暇つぶしよ。」


ジンコが答えると乾の顔がまた赤くなり、息が荒くなった。


「え?えええ!

 真鈴ちゃんは眼鏡っ子になるのか!」

「え、ええ…でも、『ひだまり』じゃ掛けないかも知れないけどね…。」


真鈴が少し戸惑った表情で答えた。


「それはもったいないじゃないか!

 『ひだまり』でも眼鏡をかけるべきだと思うぞ絶対に!

 眼鏡っ子は最強なんだぞ!

 真鈴ちゃんが眼鏡を掛ければもっと人気が出るぞ!」


…成る程、乾は熱烈な眼鏡っ子ラブのようだ。

乾の勢いに押された真鈴があいまいな笑顔を浮かべた。


「いや、そんなに視力が悪い訳じゃないし…。

 『ひだまり』ではちょっとね…。」

「…そうか…。」


端から見ても乾が凄く落胆しているのが判る。


「乾ってそんなに眼鏡好きなんだね、ちょっと意外だね…あ!やっぱりこれ美味しいじゃないのよ!

 やっぱり悪鬼の味覚は信頼できるわ~!」


真鈴はやって来たビーフストロガノフを食べながら答えた。

鈍い鈍い鈍い、真鈴の鈍さは筋金入りなのかも知れない。

段々と乾が可哀想になって来た。


「真鈴ちゃん、それじゃあ…その…その…眼鏡姿を真鈴ちゃんの…写メでも撮らせて…くれるかい?」


乾が俯いたままぼそぼそと言った。


「え~!

 乾、『ひだまり』とプライベートは別だからさ~!

 コンプライアンス的にちょっとそれは…。」

「真鈴、乾は全く知らない仲じゃないし、別にそれくらいは良いんじゃないの?」


流石にジンコも乾が可哀想になったのか助け舟を出した。

乾がそっと視線を上げてジンコに感謝の念を送っていた。


「え~どうしようかな~。」

「もしも…もしも真鈴ちゃんの眼鏡姿を…写メを撮らせてくれるなら…あのランドローバーシリーズⅡを試乗しても良いよ。

 特別だけどね。」


おお!乾が勝負に出た!

真鈴の顔が変わった。


「えええ!本当に?本当に?乾!本当に?」

「ああ、いっその事何日か貸してやっても良いぞ。

 ただし、満タン返しなら。」


おお!乾がさらに突っ込んで思い切った提案をした。

真鈴が俯いて考え込んだ。

やがて真鈴が顔を上げた。


「じゃあ、約束だよ!

 写メを撮らせてあげる!

 ただし、今日から2~3日ランドローバー借りるよ!

 本当に良いの?」

「ああ!構わないさ!

 乗ってけよ!」


乾がランドローバーシリーズⅡのキーをテーブルに置いて真鈴の方に滑らせた。

鈍感無神経の真鈴はキーを素早く掴み、ガッツポーズをとった。


「いよっしゃぁああああ!

 ランドローバーシリーズⅡを2~3日ゲットォオオオオ~!」


弾け飛びそうな乾の笑顔とランドローバーシリーズⅡの鍵を持って小さく雄叫びを上げる真鈴を交互に見て、俺とジンコは顔を見合わせてそっとため息をついた。







続く



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