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俺達は事件のカギを握る白人の男の子の後を追う…いささか意外な所に潜伏しているようだ。


3日後、真鈴とジンコとはなちゃんがお土産を沢山詰め込んだボルボで帰って来た。


俺達は暖炉の間に集まりテーブルにお土産を広げて食べながら、真鈴達の報告を聞いた。


「はなちゃんが色々奴らの痕跡を見つけてくれてね。

 今回の事件のキーワードの10歳くらい白人金髪青い目の男の子の後を追えそうなのよ。

 男の子の本拠地はやはり東京みたいね。

 明日からはなちゃんとワイバーンの誰か、調査部の今井さんとショッカー対策班がここ、東京で奴の足取りを追うわ。

 さととまりあの所にいる黒田さんも、東京のホテルであの男の子に悪鬼にされていたからね。

 世間ではいまだに表に出て来ないけど、あの男の子に悪鬼にされて辛い人生を送っている人達が結構いるはずよ。

 そのうち何人が心まで悪鬼になってしまったのか…。」


そこまで言って真鈴は黙り込み、圭子さんがうなぎパイをぼりぼりと嚙み砕いてお茶で喉に流し込んでいた。

成る程、初めはこんなにお土産買ってきて!と思ったけど悪鬼が半数を占めているワイバーンではこの位買ってこないとあっと言う間に無くなるだろうな。

俺はユキとみーおばさんの分のお菓子をそっと引き抜いておいて良かったと思った。

お茶を飲んだ圭子さんが話し始めた。


「う~ん、実はうなぎパイって話には聞いていたけど食べるの初めてなのよね。

 結構洋風で驚いたけど美味しいわね。

 しかし、何年も前からそんな事をしていてなぜ急に今になって静岡であんな、世間に悪鬼の存在が明るみに出るような事件を仕組んだのかしらね、」

「そうですよ~!

 何故、今になってから急に…誰か、加奈の横で治一郎のバウムクーヘンとバリ勝男クン食べて欲しいですぅ~!」


凛が加奈の横に移動して治一郎のバウムクーヘンを食べ、バリ勝男クンを食べた。


「ふわぁ~!

 こっちも美味しいですね~!

 これから加奈は地方に行く時のその名産品を調べて食べてる人の横で味見をするですよ~!」


加奈がうっとりと味を確かめて言った。

成る程、死霊にはそう言う楽しみも有るんだな。


「加奈、美味い物を見つけたらわらわにも教えるじゃの!

 ところで念動の練習は続けておるんじゃの?」

「はなちゃん、まあまあ、トランプくらいは動かせるようになったですよ~!」

「おお!まだまだじゃが覚えが早いじゃの!

 わらわの弟子として精進するが良いじゃの!」


そうか、何年かかるか想像もつかないけど、加奈もはなちゃん並みとは行かなくともかなりの念動力を手に入れるかも。


ジンコがバリ勝男クンを齧りながら言った。


「う~ん、人間を悪鬼に変える白人の男の子があの静岡の事件を起こした何者かと同じ考えなのか…仲間なのかも今の所は判らないのよね~!

 まずはその元凶となった白人の男の子を探し出して何か訊きださないと…ところでね、都内の調査だけど、人数が足りないから徹底的にしらみつぶしと言う訳には行かないのよ。

 岩井テレサの調査部もショッカー対策班もそんなに人員に余裕が無いのよ。

 そこで、はなちゃんが大体のエリアを特定したら、この前乾を見つけた時の様にその…死霊?に協力して貰えたら助かると思うけど。」


ジンコや真鈴、クラなど、死霊が見えないメンバーには『ひだまり』に巣くうスケベヲタク死霊軍団の事は詳しく言えないので、死霊屋敷の死霊が協力してくれていると伝えてある。

だがしかし、いつかあのスケベヲタク死霊軍団の事も教えなければならない事態は近いだろう。

俺は少し頭が痛い。

ジンコはともかく、心霊関係が苦手な真鈴や、愛妻のスカートを覗く死霊達をクラがどう思うか…。


「は~い!

 その辺りは加奈がスケベヲタク死霊軍団に話をつけるですぅ!

 なんたってあいつらは加奈の親衛隊の誓いをしたから大丈夫ですよ~!」


加奈が元気よく手を上げてそう答え、死霊と話せるメンバーの俺達はぎくりとしたが、考えたらジンコや真鈴、クラには加奈の言葉は聞こえないのでほっと胸を撫で下ろした。


「あ、ジンコ、加奈が死霊達を使って探索に協力してくれるそうだよ。」

「彩斗、それなら安心ね、死霊だと人目に付かないし、万が一暴動や騒ぎが近くで起きても巻き込まれる心配が無いからね。」


ジンコがにっこりとしたが俺は最近、ワイバーンが抱えている秘密が暴露されないかひやひやして寿命が縮む思いをする。


「さて、何日か休んだから大学も行かないといけないしね~もう4年だから。

 後、『ひだまり』のシフトにもまた入るわよ~!」


真鈴が治一郎のバウムクーヘンを食べながら言うと凛が面白そうな顔をした。


「そうね~真鈴が『ひだまり』に出なくて寂しいと言ってる人がいるし~!あ!痛い!彩斗リーダー何するんですかぁ!」


俺は思わず凛を黙らせようと頭をひっぱたいてしまった。


凛が文句を言いかけて、あ!と言う風に両手で口を塞ぎ。隣のクラも俺が凛を叩いたのはしょうがないなと頷いていた。

ただでさえ今忙しいのに、乾が真鈴に首ったけ問題を明るみに出したくないのだ。

このドタバタした状態でややこしい人間関係を明るみに出したくない。


「え?凛、なに?

 誰よ私がいなくて寂しいと言ってる人って?」


真鈴が不思議そうな顔をして凛を見、そして俺達を見回した。


「え~!なによ、凛だけじゃなくて皆も知っているの?

 やだ~!教えてよ~!

 そんな人がいるなんて全然知らなかったよ~!」


真鈴が少し慌てた感じで言った。

成る程、こういう事には鈍感な女だった。


「い、いや、真鈴、あの…その…隣の大将の事だよ!

 隣の中華料理屋の大将の事だよ!

 な、なぁ皆?」


明石が慌てて答えると皆を見回した。


「そうそう!隣の大将が最近真鈴を見ないねって!

 言ってたよね!」

「うむ!われも隣の大将が真鈴がいなくて寂しいとか言ってたのを聞いた事が有るぞ。」

「そうそう!バレンタインデーの時も真鈴から貰ったチョコを凄く嬉しそうに食べてたしね!」

「大将も奥さんを亡くして男手一つで店を切り盛りして子供を育てて来たからな!

 真鈴に惚れても文句は言えないわよ!」

「真鈴!かなり年上だけど良いんじゃないの?」


皆が慌てながらも咄嗟に口から出まかせを言って明石に合わせた。

こういう時に互いの心が判る悪鬼が多いワイバーンは重宝する。


「なんだ~、隣の大将か~。

 まあ、こんなに若くて美人の真鈴様に惚れるなと言うのは無理かもね~!」


真鈴がそう言ってソファの背もたれに体重を預けた。

何気に凄い上から目線で言っているが、まぁ、良しとしよう。


「でも、真鈴てあんまり男女間のそういう事に興味無さそうなんだけどね。

 やっぱり気になるの?」


圭子さんがお茶のお代りを注いで、バリ勝男クンに手を伸ばしながら尋ねた。


「圭子さん、興味が無い訳じゃないけどさ~。

 やっぱり昔知り合った男の人と比べちゃうんだよね~。」


真鈴が遠い目で答えた。

ははぁ、成る程、ジンコが言っていた高校の時の先輩の事か…。


「私が大学卒業してさ、司法試験に落ちたら即、咲田組を継ぐか、司法試験受かってもゆくゆくは咲田組を継がなきゃならないだろうけど…隣の大将か~、そんなしがらみを捨てて中華料理屋のおかみさんも悪くないかもね~。」

「…ええ!

 真鈴、隣の大将とはかなり歳が違うぜ!

 いいの?それでも?」

「あら、彩斗、隣の大将でもまだまだ子供を作る種は残っているでしょ?

 私はあまりそう言う、年だとかは気にしない方よ~。」


真鈴が朗らかに答えた。

俺達は真鈴の新しい一面を見た気分だった。


そして次の日から俺とはなちゃんと調査部の今井さんと都内をしらみつぶしに回り、10歳くらいの白人の男の子の痕跡を探した。

ちょっと意外だが、東京都江戸川区葛西駅近辺にはなちゃんが反応した。


「彩斗、この辺りに奴の痕跡を強く感じるじゃの!

 間違いないじゃの! 奴はこの近辺に潜んでいるじゃの!」


ちょっと意外だった。

10歳の金髪青い目の白人の男の子がこの辺りに居たら目立つと思った。

俺はてっきり港区など国際色豊かな所に潜伏していると思ったのだ。


「まぁ、東京ディズニーランドも近いと言えば近いし…。」


調査部の今井さんもそう言いながら意外に思っていたのは俺と同じだろう。


その後、ショッカー対策班と岩井テレサの調査部が周辺を調べ、さらに加奈が率いるスケベヲタク死霊軍団で詳しく一軒一軒しらみつぶしに調べ上げ、白人の男の子の場所を炙り出す事になった。


基本中の基本は生け捕り。

男の子の周囲に何が待ち構えているのかよく探らないと大変な事態になるかも知れないので慎重に事を進めたいが、ショッカー対策班は上層部から早く結果を出せとせっつかれているのだろう。

焦った様子で幾つか強引な策を言い出して、いささか俺達は不安に思った。

早く成果を上げたくて先走って余計な事をしないかと…。

まだ発足して時間が無いのにマスコミではショッカー対策班が何も成果を上げていない事を無責任に追及する愚か者たちが騒いでいる。

人間は無茶をしすぎるし、部外者の手を借りずに自分の手で問題を解決しようとして、無能な指揮官が富士の樹海や裁判所で夥しい犠牲を出して却って問題を深刻化しているのを見て来た俺は凄く心配だ。


岩井テレサが人類の愚かさに何度も絶望したと言っていた事を思い出す。







続く



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