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俺はユキをとんでもない事に巻き込んでしまったのかも知れない…そう悩む俺にユキは決意を見せてくれた…ユキは最高の恋人だ。

「え~!

 訳ありって何よ彩斗。

 凄く気になるよ~。」


ユキが身を乗り出した。

興味津々で目を輝かせていた。


「いやぁ~訳ありと言っても大した事じゃないけどさ…

 乾と言う奴はね、悪鬼なんだよ。

 初めに会った時、景行が冷や汗びっしょりになるくらい強い悪鬼なんだ。」

「…ええ~!

 景行って明石さんの事でしょ?

 彩斗がワイバーン最強の悪鬼メンバーだよって言っていたじゃない!

 その明石さんが!

 なにそれ、それで真鈴と乾って人が敵と味方なのに好きになったの?

 まるでロミオとジュリエットみたいね~!」


俺はユキのロマンチックすぎる発想に吹き出しそうになった。


「いや、違うよユキ、乾達とは敵味方では無いし…今の所は味方…かな?

 それに真鈴は乾の気持ちなんて全然知らないんだよ。

 そんなロミオとジュリエットとか…ロマンチックなものじゃ無いんだよ。」


身を乗り出していたユキはあきらかに落胆した感じで姿勢を戻してコーヒーを飲んだ。


「なんだ~そうか~、じゃ、その乾って人…ああ、悪鬼か。

 どんな存在なの?」

「う~ん、管理者と言っていたよ。

 なんでも人類や悪鬼は…地球自体がその内に『清算の日』と言うのを迎えるそうなんだけど…。」

「…清算の日…何それ怖いんだけど。」

「ユキ、俺達も、乾達ですら何が起こるか、地球がどうなるのか判らないらしいんだけどね。

 その、来るべき『清算の日』になる事はある程度スケジュールが決まったいるようなんだけど、そのスケジュールを強引に進めて人類がその準備に入らないうちに『清算の日』を迎えないよう様にスケジュールを管理している組織だそうなんだ。

 基本的に『清算の日』のスケジュール管理以外では動かないようなんだけどね、完全独立の組織で他の組織とは同盟を酌んだり共同で戦ったりはしないんだって。

 乾達の組織も今回の黒幕を追っているそうだよ。

 『清算の日』のスケジュールを早めようとしていると判断したようだね。

 もっともその組織で俺達が接触したのは乾だけなんだけどね。」

「そうなんだ…敵では無さそうだけど、なんだかよく正体が判らない感じの組織なのね…ところで真鈴が出張してるって…。」

「ああ、それなんだけど、ほら、この騒ぎになった静岡駅のロータリーの騒ぎをさ。

 俺達はその事件を引き起こした奴らの手掛かりを掴んでね。

 今は真鈴とジンコ、はなちゃんがその…あの時撃ち殺された夫婦と一緒に静岡に行ってるんだよ。

 岩井テレサの調査部が現地で合流してね。

 静岡県警も協力する事になっているけど、何日かあっちで色々調べるんだよ。」

「そうなんだ~、やっぱり岩井テレサさん達の組織も動いているのね。」

「そうなんだよ、今世界中を混乱させている事件の大元だからね。

 岩井テレサはあの『連隊』と呼ばれている桁外れの部隊も一つ日本に呼び寄せるそうだよ。

 ユキはポール・レナードを知っているよね?」

「ああ知ってる!

 結婚式の時サーベルアーチの号令をかけた人でしょ?

 あのかっこよい人よね!確か四郎さんのお師匠だって彩斗が言ってた。」

「そうそう、四郎を悪鬼にして質の悪い悪鬼や人間の討伐のやり方を一から教え込んだ人だよ。

 俺もポールさんが戦うのを一度見たけど、物凄かったよ。

 俺達ワイバーンが全員でかかっても簡単にやられちゃうかも…でも、景行はポールさんでも乾と互角かひょっとしたら負けるかもとか言ってたな…。」

「乾って悪鬼そんなに強いの?」

「ああ、強いらしい。

 で、そのポールさんが率いる『連隊』が日本にまた来るみたいだよ。」

「そうなんだ…やっぱり大事なんだね…。

 彩斗、屋敷に帰ったら私また訓練をしたいわ。

 射撃もナイフも…私、何かあった時、彩斗達の足手まといになりたくないわ。」


俺はユキのいじらしい言葉に喜びながらも、俺は複雑な気分になった。

本当はユキのような『普通の人』が理不尽な暴力にさらされたり殺されたりする事を防ぐために活動を始めたのだが、知らず知らずにユキを俺達の活動に巻き込んでしまっているのかも…ユキのような人たちが武器を持って戦う事が無い世界を作りたかったのに…。

前に圭子さんが司と忍に戦い方を教えるかどうか悩んだと言った事を思い出した。

そうか、圭子さんは俺と似たような事を悩んだのだなと痛感した。


ユキは俺の顔をじっと見つめた。

そして、俺の手にユキの手を重ねた。


「彩斗、なんか複雑な顔をしているよ。

 私、彩斗と付き合って、彩斗達のワイバーンとかを知って岩井テレサさんのような組織がある事を知って良かったと思うよ。

 後悔はしていないよ。

 だって今の感じの世界だと、私は彩斗達の事を知らなかったら…何も知らずにただ怖がるだけだったかも知れないもの。

 何かあった時にただ悲鳴を上げて怖がってあちこち逃げるだけだったもの。

 何も知らずに何をすれば良いなんて全然判らなくてただ殺されるかも知れないもの。

 それがね、今だって怖いけど、なんとか立ち向かう方法が判り始めたしね。

 それに私が強くなれば、かあさんやみーおばさんを守れるじゃない。」


女性は鋭いなと思った。

ユキは俺を見て、俺がどう思っているのかを知ったようだった。


「ユキ、ありがとう。

 実はユキを大変な事に巻き込んでしまったかもと心配していたんだよ。」

「ううん、大丈夫よ。

 それに、私を巻き込んじゃったと思ったらさ、私がもっと強くなって私の周りの人を守れるように手を貸してよ。

 何も知らずに怖がるのは御免だよ。」


ユキが俺の手を握って笑顔を浮かべた。

俺はユキと付きあって良かったと、こんなとんでもない事を知ったうえでもまだ俺と付き合ってくれて、俺を愛してくれるユキを愛おしく思った。


「よし、ユキがもっと強くなるようにトレーニングをしよう。

 ユキが悪鬼の討伐なんかしなくても。少なくとも自分や自分の周りの人を守れるようにね。

 今度から少し厳しく教えるけど、頑張ってね。」

「うん、私、もっと強くなるよ、彩斗。

 しっかり戦い方を教えてね。」


俺達は『ひだまり』を出て死霊屋敷に戻った。

店内を通る時ユキは乾をちらりと見た。


ランドクルーザーの中でユキが俺に尋ねた。


「あの窓際でスーツ姿でケーキを沢山食べていた人が乾なのね?

 歳もまあまあだし、真鈴と付き合ってもおかしくないんじゃないの?

 それに凄く強いんでしょ?

 そしたら真鈴も安全だしね~!」

「え?そうかな~?」

「そうよ、そんなに悪い人には見えなかったわ。

 結構いい男だしね。」

「あ、そう…。」

「…あ、私にとっては彩斗が最高の男前だよ~!」


ユキが取り繕う様な笑顔で俺の腕に抱きついた。


その後、ガレージ地下でSIGを使った射撃練習と屋根裏で紙の棒を使ったナイフトレーニングをユキと行った。

俺は結構真剣にユキにダメ出しをして厳しく教えた。

ユキは苦痛と疲労に顔を歪めながらも弱音を吐かなかった。

なんとしてもユキが自分の身を守れるように、周りの人を守れるくらいにしようと心に気めた。


夜になって真鈴達から電話が来た。







続く



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