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俺達は岩井テレサの覚悟を知り、上岡親子を引き取る事にした…そして、乾が『ひだまり』に現れた。

岩井テレサが一通り食事を食べ終わり、コーヒーを飲みながらテレビのニュースを見つめた。


「彩斗君達、今まで人類は多くの、それこそ多くの、数えきれないほどの過ちを行って数え切らない位の同じ人間の命を奪いながらもね、未だに酷い搾取や偏見を抱えて、地球の環境を破壊しながらもなんとか素敵な世界を作り上げようと前に進んで来たのよ。

 人類が進む地平の彼方に何が待ち受けているか想像もつかないけれど、そこに値する社会を作ろうと、地平の彼方の世界に値する人類になろうと頑張って進んで来たのよ。

 私達、別物の組織も、人類が地平の彼方に進む事に陰ながら力を貸してきたの。

 時には人類の愚かさに絶望しながら、時には人類の持つ無限の可能性に希望を抱きながら共に進んで来た。

 その私達の努力をね、そして、人類がその高く掲げた崇高な理想が、理想を追い求めて変わって行こうともがき苦しみながら進む人類の努力が、無知が引き起こす偏見や疑心暗鬼、身の程知らない私利私欲や、理不尽な暴力に押し倒される訳には、決して押し倒されて泥にまみれて滅亡なんて事はね、私達は絶対に許さないわ。

 絶対にね。

 これからも力を貸して。」


岩井テレサが決意をみなぎらせた視線を俺達に向けた。

俺達全員が真っすぐに岩井テレサを見返して深く頷いた。


「テレサ、言う迄も無くワイバーンはテレサ達と運命を共にする覚悟です。

 出来る限り、いや、出来る限界を超えて協力します。

 この世界が破滅するのを何としても食い止めましょう!」


じっと俺達を見つめる岩井テレサが微笑んだ。


「ありがとう、私達も何とか頑張ってこの事態を収拾するために、今世界中の仲間が動き始めているわ。

 皆で頑張りましょう。」


岩井テレサが手を伸ばして順々に俺達の手を握った。


やがて事情を話し終えた上岡親子が調査部の今井と田所に連れられてやって来た。


「加奈!」


杏奈が加奈に駆け寄った。


「杏奈、大丈夫だった?

 色々聞かれた?」

「うん、でも、私達が覚えている限りを話したよ。」


田所が笑顔をこちらに向けた。


「上岡さん達のおかげで色々とヒントを頂きました。

 大助かりです。」


岩井テレサがコーヒーを飲み干して答えた。


「ご苦労様ね。

 これから全力で裏の奴らを追い詰めるわよ。

 調査部も全力で頑張ってね。

 あなた達は必要とするものはどんどん言って。

 すべて用意するわよ。

 場合によっては『連隊』を一つこちらに呼び寄せます。

 上岡さん達、ありがとうございます。

 私達であなたを全力で守ります。

 お好きなだけここにいてください。」


岩井テレサがそう言うと上岡夫婦は頭を下げた。


「すみません、なんとか希望が見えました。

 よろしくお願いします。」


その時杏奈が俯いて小声で言った。


「加奈達の所に居ちゃ駄目?

 ここは素敵な場所だけど…加奈やはなたちと…私…一緒に…。」


岩井テレサがじっと杏奈を見つめた。

そして上岡夫婦を見つめ、小さくため息をつくと笑顔で俺達を見た。


「彩斗君達、早速お願いなんだけど…上岡さん達を預かってもらえるかしら?

 どうやら3人とも彩斗君達の方が居心地良さそうね。

 3人とも、彩斗君達の方が良いみたいよ。」


俺は明石達と順に顔を見合わせた。

最期に加奈を見ると、加奈が俺の顔を見つめて頷いた。


「わかりました。

 うちはここより大した事無いけどそれでも良い?」


杏奈が笑顔で頷き、上岡夫婦も俺達に頭を下げた。

話しは決まり、俺達は上岡親子を連れて死霊屋敷に戻った。


帰りの車中では加奈と杏奈、はなちゃんが楽しげにおしゃべりをしていた。

上岡夫婦もほっとした表情で杏奈と加奈達がおしゃべりする様子を見ていた。


屋敷に着いて直ぐに四郎が俺に言った。


「お帰り彩斗、屋敷は今の所問題無いぞ。

 圭子さんのママ友たちがな、何かあった時ここは安心だからと子供たちを連れてきているぞ。

 やれやれ、全員車で迎えに行ったぞ。

 帰りも車で全員送るよ。」

「四郎、ありがとう。」


どおりで暖炉の間やプールが騒がしかった。

突然の休みで子供たちははしゃいでいる。

まぁ、母親の直感と言う奴かな?

確かにここは他の家よりも数段安心できる。

そして四郎が俺達に言った。


「そしてな、『ひだまり』に乾が来ていて俺達と話したいと言っているぞ。」

「ふむ、いつもながら食えん奴じゃの、全く気配を消していて『ひだまり』の前を通っても判らんじゃったじゃの!」


はなちゃんが呆れた声を上げた。


「どうする?」


俺が明石に尋ねた。


「彩斗、今回の事絡みだろうな。

 話を聞こうか。」

「よし、行こうか。

 俺と景行と四郎、あと、ジンコとはなちゃんも来てくれる?」


俺達は『ひだまり』に行った。

乾のハコスカは止まっていなかった代わりにオレンジのボディでボンネットが黒いベレットGTが停まっていた。


「恐らく乾の車だろうな。

 なんだ?奴は旧車マニアなのかな?」


明石は呆れた声で呟いた。


やはり昨日の騒ぎでいつもより『ひだまり』は空いていた。

乾は4人掛けの席で『ひだまり特製イチゴ特盛ショートケーキ』を食べていて、入って来た俺達を見ると笑顔で手を上げた。


「よう、来たな。

 ここがやっていて安心したぞ。」

「乾、個室に行こうか。」


俺達は奥の個室に入った。

やはり、はなちゃんが言ったように乾は真鈴に首ったけのようだ。

オーダーを取りに来た真鈴を少し顔を赤らめながらちらちらと見ていた。


真鈴が出て行くと俺は乾に言った。


「ところで話したい事って何?」


俺が尋ねると乾の顔が少し引き締まった

やはり乾は最強の悪鬼で、顔が少し引き締まっただけで俺達は緊張した。


「お前達、昨日の騒ぎは知っているよな?

 まず、俺達はあの連中に一切関与していない事だけは伝えようと思っていてな。

 そして、お前達と同じで俺達も奴らを追っているんだ。」








続く


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