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ヤバい…非常にヤバい事態になりつつある…下手をしたら俺達の手に負えない事態になりつつある。

「ふぅ~この3人をここに連れてくるのに少し苦労したですぅ~!

 体から抜け出てまごついている3人に事情を説明して、何とか納得してもらってここに来てくれたですよ~!」


加奈が俺達に言った。


悪鬼の3人家族は女の子を真ん中にソファに並んで座り、死霊を見える凛と圭子さんが両端に座って、コーヒーとお菓子を代わりに飲み、食べて3人を落ち着かせようとしていた。

女の子は美味しいお菓子の味を感じて、もっと食べて欲しいと凛にせがんでいた。

しかし、3人はぎゅっとお互いに手を繋いでまだ少しの怯えを目に浮かべながら俺達を見ていた。


はなちゃんが手を上げて加奈を褒めた。


「加奈!よくやったじゃの!

 お手柄じゃの!

 あのままのこの3人を放って置けばどんな悪霊になるか判らんかったし、ここに連れてきて大正解じゃの!」


俺が一応俺達の事を説明し、3人は少し安心したようだった。

圭子さんやはなちゃんが死霊と話せない真鈴やジンコ、クラに補足説明しながら俺達は3人の悪鬼の死霊と会話をした。


加奈があの騒動に出くわした経過を俺達に話した。


「ロータリーではすでに警官達が4人一組で何組かパトロールしていたですぅ。

 もう、かなりヤバい雰囲気でしたですぅ!

 警官達はこの3人の写真を手に持って探していたですよ。」

「成る程…警官達は既にある程度知っていたと言う事か…。」


俺が言うとジンコがこめかみに人差し指を当てた。


「彩斗、警察の上層部にあの仲間がいるか、何か匿名で通報があったか…。

 警官達だってこの3人が悪鬼だと知っていたとは思えないわ、何か別の事件に関係していると思って探していたと思うわね。

 彼ら彼女達は事態を発覚させるための捨て駒よ。」


俺達は3人家族の悪鬼の死霊に今までの経緯を聞き出した。

3人は父親は上岡隆二、母親は上岡信子、そして娘は上岡杏奈と言う名前だった。


父親は車の部品メーカー勤務、母親は派遣で倉庫で働き、杏奈は今年小学校4年だと言う。

司と忍もその場にいる。

俺達は今起きている事を司と忍に何一つ隠さないと決めている。


「あら、杏奈ちゃんは司と同い年ね。

 司、挨拶してあげて。」


圭子さんに言われて司が戸惑いながらも誰も座っていないソファ中央部に挨拶をして手を振った。

杏奈もはにかみながら司に小さく手を振り返し、2人は微笑み合った。


ともかく、上岡親子は静岡県で細やかながらも平穏な時を過ごしていた。

去年のクリスマスまで。

クリスマス、上岡たちは親子でクリスマスを祝おうと外食に出かけた。

ちょっと奮発して地元でも有名な個人経営のレストランに予約を入れて、楽しい夕食をたべ、その帰り道に住宅地を3人で歩いている時に悪鬼に出会ったと言う事だった。


人気が無い夜の住宅地を歩いている上岡達の目の前で10歳くらいの、裕福層や身なりの白人の男の子が道路に蹲り苦しんでいた。


10歳の白人の男の子…。

俺は凛の制服を盗んだ黒田郁夫が、やはり勤め先のホテルで10歳くらいの白人の男の子の悪鬼に襲われて悪鬼になってしまった事を思い出した。


慌てて男の子に駆け寄った上岡一家、男の子が顔を上げると恐ろしい悪鬼顔で次々と上岡親子に噛みつき、自分で噛み裂いた血まみれの手を口にねじ込んで来たと言う事だった。


上岡親子は悲鳴を上げ、住宅街から遅ればせながら何人かが出て来て様子を窺った。

上岡親子が助けを求めようとしたが、10歳の白人の男の子の悪鬼が次々と上岡親子を気絶させて近くの公園の草むらに引きずり込んだと言う事だった。


やがて気が付いた上岡親子は、酷く噛みつかれたはずの自分達に傷が一つもついていない事に狼狽をし、なぜかこれを大事にしたくないと思い、そのまま家に帰った。

そして血に汚れた服を着替えている時に自分達の身体の異変に気が付いた。


その日の晩に上岡親子は全員悪鬼になってしまった。


自分達だけならともかく娘の杏奈も悪鬼になってしまった上岡夫婦はこの事を隠して生きて行く事を決めた。


周りに自分達が悪鬼になった事を慎重に隠しながら何とか上岡親子は日常生活を過ごしていた。


そしてある日、上岡のスマホにでたらめなアドレスのメールが送られて来た。


「お前達親子の秘密を知られたくなければ、夜10時に静岡駅のロータリに全員で来い。」


とのメールだった。


そこまで話すと上岡親子は改めて涙を流した。


俺達はとりあえず、死霊屋敷の屋根裏に会る加奈が使っていた部屋に親子を案内し、屋根裏部屋の死霊達と引き合わせた。

屋根裏の死霊達は上岡親子の境遇に同情して慰めてくれ、俺達は一安心した。


暖炉の間に戻った俺達はこの一連の事態に何か裏で蠢く奴らの事を考えた。


「仕組まれたな…。」


と俺。


「ええ、絶対に何かの集団が仕組んでいるわ。」


と真鈴。


「だとすると奴らは何年も前からこういう事を見越して計画を立てていたと言う事よ。

 凛の制服泥棒の黒田だって、奴らの被害者と言う事になるわね。」


とジンコ。


「彩斗、真鈴、皆、これはかなり大ごとだし、もう、危険な兆候が表れておるじゃの!

 岩井テレサに連絡をして今後の対策を練らんと大変な事になるじゃの!」


はなちゃんがそう言って俺達はその通りだと思った。

俺は早速岩井テレサに連絡を入れた。

岩井テレサ側では問題の事件を全て放映したテレビ局に探りを入れていた。


やはり、あの事件を撮影した何人かの制作会社のスタッフとあの時に副調整室に詰めていた数人のディレクターとフロアディレクターがその日のうちに辞表を提出して姿を消したとの事だった。


何かの集団がテレビ局内に入り込んで工作を行っていると言う事は明白だった。

岩井テレサの調査部が姿を消した者達の足取りを追っている。


翌日、俺達は3人を岩井テレサの施設に連れて行き、事情を話してもらう事にした。


今までの悪鬼の集団とは少し違う、が、しかし、下手をすると人類文明を滅ぼしかねない事態を明確に狙っている集団の出現に俺達は緊張した。


朝のニュースではやはり昨夜からあちこちで色々な騒動が起きている事を伝えていた。

日本政府や警察が昨日の事件の火消しに躍起になっていて、ちょっと論理的に破綻する苦しい説明をしている中で、第2次世界大戦後の日本国で初めて戒厳令が発せられるかもとの事をニュース解説者達が声高に話している。


この影響は世界中に飛び火しているようで、ロシアのウクライナ侵略戦争以外にも世界のあちこちで起きている紛争が拡大し、新たな紛争や暴動、無差別の発砲事件や病院や学校、宗教施設への襲撃が多発していた。

アメリカではいくつかの州知事が州兵の動員を決め、中国では国内の一地方が『人間以外』の物に『侵略』を受けてその鎮圧に戦術核兵器の使用を匂わせる声明を発した。

人類は初めて人類以外の何かの存在を、その脅威を公式に認めてしまった。

そして、自殺者が昨日の夜だけで日本国内で何千人も出た事をさりげなく伝えていた。


月が、その裏側の9・9パーセントを地球に向けている事が久しぶりにニュースが伝えている。









続く




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