27:本当は……
エントランスにはメラニーが待っていてくれた。
「メラニー!」
「シルヴィさま!」
思わずメラニーに抱きついてしまう。
「シルヴィさま、そのすみません」
「気にしないでメラニー。セルジュの指示だったのでしょう?」
「セルジュ王太子さまの指示というか……。王太子さまからは、街へシルヴィさまが外出する際、護衛を任せても大丈夫かと尋ねられました。私は元騎士ではありますが、魔力がそこまで強いわけではなく……。シルヴィさまを守り切れるかと言われると……。すると王太子さまが、私は護衛ではなく侍女。それ以上を求めてすまないとおっしゃられて。それでシルウスさまが変身魔法で私になり、シルヴィさまの護衛兼お供になりました。シルウスさまは大魔法使いなので魔力がこの国で一番強いことで知られていますよね。その一方で、筆頭魔法騎士になれるぐらい、武道も極めていらっしゃいます。ですからシルウスさまがシルヴィさまの護衛であれば、問題ないと思いました」
すると馬車を降りたシルウスが、私達のところへやってきた。
「メラニー、それは過大評価だよ。結局、シルヴィさまも僕も誘拐され、監禁されたのだから」
「え、でもそれはわざとですよね? 犯人が誰なのか掴むために、あえて誘拐されるのを良しとされたと思うのですが? シルウスさまは各種魔法薬に対し、耐性をお持ちと聞いています」
「そうなの!? もしかしてあの時、意識を失ったふりをしていたのですか!?」
シルウスは参ったなという顔をしている。
つまりメラニーが言っていることが正解なのだ。
魔法薬に耐性まで持っているなんてすご過ぎる。
あの時、私はラベンダーの香りを嗅がされた。
あれは間違いなく睡眠を促す魔法薬だ。
おかげで私はぐっすり眠ってしまったのに。
「シルヴィさま、何はともあれ、お食事を。お部屋に夕食を用意しますので」
メラニーの言葉にお腹がぐうとなる。
なんだかんだでドレスの下着にも慣れ、ちゃんと食事もでき、お腹も減るようになった。
「そうね。今日はお茶もしていないからお腹がぺこぺこ。部屋に戻りましょう」
「はい。すぐに夕食にしましょう」
シルウスは「部屋に送り届けるまでが僕の役目ですから」と言い、私を部屋までエスコートしてくれた。部屋に着くとメラニーは夕食の用意をすすめ、私はしっかり食事をとった。
その夕食の席で、巨大なまずを湖に持ち込んだ犯人が判明したと、メラニーは教えてくれる。
リサが連れてきていた二人の友人。
彼女達は教皇の指示で、縮小魔法をかけた巨大なまずを湖に放ち、魔法を解除した。そんなことをすればどんなことになるかは分かっている。でも孤児で教皇に引き取られていた二人は、その指示に従うしかない。そうしなければ娼館に売ると、教皇から脅されていたのだという。
教皇の目的はもちろんリサの暗殺。
2匹投入したのは、確実に仕留めたいという思いと、あわよくば生意気な王太子の婚約者も亡き者になればという思いからだと、教皇は白状したらしい。
その話を聞いた私は、怒りを通り越し、ただただ呆れてしまう。まだ少女の二人を脅したことも、ついでに私を亡き者にしようとしたことも。本当にやることが情けない。今回この教皇の化けの皮をはがすことができて、本当によかったと改めて思った。
今日はこんな騒動もあったので、舞踏会は中止だ。
私も夕食を終えると入浴をし、寝る準備を整える。
ただ、セルジュが部屋に来るかもしれないと分かっていたので、ミルキーピンクのネグリジェに、薄手のアイボリーのガウンを羽織った。そしてベッドに横にならず、ソファでリサに手紙を書く。今回はトラブルもあり、お茶もできなかったが、後日また街を一緒に散策しようとしたためた。
手紙を書き終えたものの。
あの騒動の後で、大聖堂の敷地内にある住まいに、リサは戻れたのだろうかと疑問が浮かぶ。
今、ホワイティに手紙をもたせても、リサはそこにいないかもしれない。
そう考え、手紙を出すのは明日以降にしようと思った。
そこであくびが一つ出る。
シルウスが言っていた謎解きについて考えようと思ったが、そんな考え事をしたら寝てしまいそうだ。
既にメラニーには下がってもらっていたので、給湯室へ行き、お茶を用意する。
もしかしたらセルジュが来るかもしれない。だからティーカップは二つ。茶葉もティーポットに入れたものとは別に、もうひとつ用意し、部屋に運んだ。
紅茶を入れ、それをゆっくり飲みながら、魔法薬の本をペラペラとめくっていたら……。
ソファで私は眠ってしまった。
◇
優しく抱きかかえられている。
それに気づき、私は目を細く開けた。
セルジュ!
私をお姫様抱っこしているセルジュからは、爽やかな石鹸の香りがする。
その香りに思わず胸がキュンとしてしまう。
大聖堂で見た時は、マントもつけていた。でも今は白のシャツにズボンと、寝間着ではないが、かなり寛いだ服装であると分かる。
ゆっくりベッドにおろされた。
私がうたた寝している間に、セルジュが部屋に来たのだと今更気付く。私をベッドにおろしたセルジュは、頭を枕にのせ、掛け布もちゃんと体にまとわせてくれた。
本当は起きているのだが。
ここまで丁寧に寝かせてくれると……。
実は起きていたと、目をはっきり開けるのがためらわれる。
このまま眠ろうと思えば、眠れるが……。
セルジュはわざわざ部屋まで来てくれたのだ。居眠りする私をベッドに寝かせるために来たわけではないはず。
だから。
寝室から出ようとするセルジュの名を呼んだ。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は、明日 11時台 に以下を公開します。
「私にしかできないこと」
実は起きていることを知らせると……。
引き続きよろしくお願い致します!














