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完結●悪役令嬢ただし断罪後のハピエン確約で異世界召喚!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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25/30

24:行ってしまった……

 突然現れたエリックに、シルウスはビックリした表情のまま尋ねる。


「これは驚きです。筆頭公爵家の嫡男がこんなところへくるとは」

「シルウスさま」


 エリックは忠誠の証で右手を左胸に当て、一礼するとさらにこちらへ歩みを進める。


「天候が激変し、どうしたのかと思ったら……サン・ウエスト大聖堂にブルードラゴンが召喚されたと、宮殿で大騒ぎになっていました。ブルードラゴンを召喚できるなど、国王陛下か王太子さま、大魔法使いさまぐらいです。何が起きているのかと心配になり駆け付けました」


「エリック、優等生な回答ですが、それでは僕は納得できません。聖女さまの様子が気になったのでは?」


「それは……」


 私達のところまでやってきたエリックは頬を赤くしたが、すぐに「はい」と返事をする。その言葉を聞き、リサの顔も赤くなる。もう公衆の面前で互いの気持ちも打ち明けたも同然だ。


「では聖女さまのことは君に任せましょう。安全な場所で休ませてあげてください。なにせ1時間以上、十字架に磔にされていたからね、教皇によって」


 私は驚いてシルウスの顔をガン見する。

 悪役令嬢のことは忘れろとシルウスは言うが……。

 この世界に来てからは、寝ても覚めても悪役令嬢になることを考えていた。急に忘れろと言われても忘れられない。エリックにリサを任せていいのかと焦ってしまう。でも私をチラリと見たシルウスは、ウィンクをして微笑むだけだ。


 一方のエリックは眼光が鋭くなり、その目線は教皇へと向けられている。だがすぐにシルウスに視線を戻した。


「シルウスさま、シルヴィは無事なのですか?」

「ええ、ここにいますよ」


 シルウスが私に視線を向ける。

 私を見たエリックは目を丸くした。


「部分変身魔法で髪と瞳の色をチェンジしたの」と言うと、大きくエリックは頷く。そしてシルウスからリサを預かると、リサを馬に乗せた。


 本当にエリックがリサを連れて行ってしまう。

 これでいいの……?

 でもシルウスがいいと言っているのだ。

 だから……いいのだろう……。


「では君たちはそのままエリックと聖女の護衛についてくれたまえ」

「かしこまりました、シルウスさま」


 エリックはリサをのせた馬をひき、護衛についた魔法騎士を連れ、移動を開始する。去り行く二人の後ろ姿を見ていたら、なんだかもういいやという気持ちになっていた。


 二人が行くのを見送ったということは、何かシルウスには考えがあるのだろう。

 そう思うことにした。

 その一方で、リサに嫌がらせをする算段を巡らす必要がなくなったことに、ホッとしている。


「さあ、シルヴィさま。セルジュさまが再び怒り出す前に、彼の元へ行きましょうか。と思ったのですが、その部分変身魔法は……」


「さっき、エリックは私だと気付きませんでしたが、セルジュはどうなのでしょう?」


「君を一目見て怒りが収まりました。当然、君がシルヴィさまであると分かったからでしょう。街へ行くなら変身するよう指示したのは、セルジュさまなのだから」


 確かに。

 この姿でそばに行ったら、セルジュはビックリするかなと思ったが……。


「ですよね。もう私だってバレているなら、元の姿で会うのがいいと思います」


「シルヴィさま、君は面白い子ですね。エリックも肝っ玉が据わっていると思いましたが、ブルードラゴンが召喚されているとんでもない事態なのに、セルジュさまにサプライズできるかを考えているなんて」


 シルウスは楽しそうに笑った後、私の変身魔法を解除する。


 その瞬間、背後で激しく風が吹いた。


 髪があおられ、ドレスも捲れそうで、慌てて抑えようとすると。

 

 後ろからぎゅっと抱きしめられた。

 心臓がドクンと大きな音を立てる。


「シルヴィ、無事で良かったです……」

「セルジュ」

「どこも怪我はないですか?」

「シルウスが一緒だったので、大丈夫です」

「そうですか。……シルウス、よくやった」


 セルジュの言葉にシルウスは右手を左胸に当て、一礼する。私は心臓をドキドキさせながら、シルウスの方に顔を向けた。シルウスはニコニコとこちらを見ている。


「セルジュ、もう落ち着いたのかしら? 私達、礼拝堂の地下牢にいたのだけど……」


「そのようですね。教皇が嘘をついたわけか……。でもシルヴィが無事に戻ってきました。だから後は法の裁きを受けさせます」


 シルウスはさらにセルジュが怒りそうだと言っていたが、これなら大丈夫そうだ。その点については安堵するが、抱きしめられているこの状況にはドキドキが止まらない。背中にセルジュの引き締まった体を感じてしまい、それだけでも落ち着かないからだ。


「ねえ、セルジュ。リサはエリックと去ってしまったの……」


「セルジュ王太子さま、援軍が到着しました。ランディ様は拘束した教皇を連行されています。援軍はいかがいたしましょうか」


 魔法騎士がこちらに来て、セルジュに声をかける。

 私は慌ててセルジュから離れようとした。だが私の胸の前でクロスされているセルジュの腕の力は、緩まる気配がない。それどころか抱きしめたままの状態で、魔法騎士に返事を始めた。


「分かった。ありがとう。援軍には、礼拝堂の様子を確認するよう指示を出して欲しい。残っている騎士達には聖騎士の連行をするよう伝えてくれ」


「かしこまりました」


 セルジュと魔法騎士の会話は続いている。

 恥ずかしくて魔法騎士の方を見ることができず、反対側を向くと、背後に見えていたブルードラゴンの姿が既にない。


 ブルードラゴンがいた場所に見えているのは、綺麗な茜色の空だ。


 セルジュに抱きしめられ、温かく感じていたが、実際気温も戻っている。


 ブルードラゴンの姿がない、ということは、教皇の尋問も終わったのだろう。これから教皇の指示で動いていた聖騎士の連行、現場検証などの後処理が沢山ありそうだ。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は、明日 11時台 に以下を公開します。

「私ってこれからどうなるのだろう?」


今回の事件を振り返った結果……。


引き続きよろしくお願い致します!

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