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完結●悪役令嬢ただし断罪後のハピエン確約で異世界召喚!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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23:本気の怒り

 目の前に突然現れた巨大な建物。

 美しい碧い壁が広がっているが、なんというかとてもごつごつしている。


「うーん。セルジュさまのことを本気で怒らしてしまったようですね」


「え、どういうこと、シルウス!?」


「セルジュさまは強い魔力をお持ちです。よって霊獣や魔獣の召喚も、最高ランクの第五魔法円を起動した召喚が可能です。結果、二番目に最強と言われるブルードラゴンを召喚してしまった。ブルードラゴンは、戦場でしか召喚しないようなドラゴン。まあ、ブラックドラゴンを召喚しなかったので、理性は吹き飛んでいないようですが……。やれやれです」


 いつも穏やかで落ち着いて、大天使のような笑みをたやさないセルジュが本気で怒っている? にわかには信じがたい。


「急いでセルジュさまのところへ行きましょう。今見えているこの碧いゴツゴツは、ブルードラゴンの後ろ脚に過ぎないですから」


「……それってものすごく大きいということですか?」


「そういうことです」


 セルジュがとんでもない怪物を召喚したと分かる。

 キマイラだって私から見たら大きい。

 でもブルードラゴンと比べると、まるで蟻みたいに思えてしまう。


 とりあえず右手に碧い壁のようなブルードラゴンの姿を見ながら駆けて行くと。


 とんでもない状況を目の当たりすることになった。

 ブルードラゴンの爬虫類のような金色の目が見えた。

 その目を見ただけで、恐怖で足がすくみそうになるのに、その閉じかけた口の目の前にいるのは……ソテル教皇だ。


 ブルードラゴンに負けないぐらいの青ざめた顔で、何やら必死に話している。教皇の後ろには聖騎士がいるのだが、全員尻もちをついた状態で固まっていた。多分、目の前にいるブルードラゴンに驚き、腰が抜けた状態だと分かる。


確かにこんな間近にブルードラゴンがいたら、腰も抜けるだろう。心なしかキマイラさえ元気がなくなっている。


 そのブルードラゴンの長い首を目で追っていくと、前足のそばにセルジュとランディの姿が見えた。さらにその二人を遠巻きにするように、ランディと同じ濃紺の軍服姿の魔法騎士が見える。


 シルウスが口笛を吹くと、ランディがこちらを見た。セルジュは教皇と話しているようで、視線をこちらに向けることはない。ランディは私達の姿を確認すると、セルジュに耳打ちをした。


 その瞬間、セルジュがこちらを見た。


 セルジュの瞳はいつもの澄んだ空色ではなく、紫がかった空色になっている。


 瞳の色の変化。

 あれがセルジュの本気で怒った姿なのだろうと分かった。その瞳と視線があったと感じたが、セルジュは顔を教皇の方へと戻す。


 教皇の方を見ると、目だけこちらへ向けていたようだ。

 リサと私の姿を見て、青い顔がさらに青ざめる。

 さらにシルウスの姿がとどめになったようで、今にも失神しそうになっている。

 でもブルードラゴンの鼻息でもかかったのか、ピシッと全身を伸ばした。


 ランディが周囲にいた魔法騎士に声をかけ、数名の魔法騎士がこちらへと駆けてきた。


「状況は?」


「はい、シルウスさま。今、セルジュ王太子さまがソテル教皇を尋問中です。教皇は、シルヴィさまと聖女さまを誘拐し、監禁したことを白状し、監禁場所として王室の霊廟にいると言っていたのですが……。でも皆さまが来たのは礼拝堂ですよね?」


「そうだね。つまり教皇はセルジュさまに嘘をついたわけだ。これは……セルジュさまがさらに怒ってしまいそうだ。ようやく落ち着いてきたのに」


 シルウスの言葉にセルジュの瞳を見ると、いつもの澄んだ空色の瞳に変わっていた。


「それで、教皇は動機も白状したのかい?」


「はい、シルウスさま。教皇はこれまでの予言はすべて適当なものであったことを認めました。自分に予言できる力などないと。しゅの言葉を予知として伝えることができる聖女が降臨したことで、自分の立場が悪くなると考え、今回の計画を企てそうです。つまり目的は聖女さまの暗殺。そしてその罪をシルヴィさまに被せようとしていたのだと」


「なるほど。ではセルジュさまも、もう理解したと」


 シルウスはしみじみ頷くと、リサが口を開いた。


「あ、あの、あたしをさらったのは教皇さま……だったのですね。そして私を……殺害? しかもその罪をシルヴィさまに被せる?」


「……そうですね」


 シルウスの返事にリサの顔が歪む。


「そんなヒドイことを教皇さまは……」


 リサが絶句する気持ちはよく分かる。

 ねちねちといじめられていたかもしれないが、それでも彼はこの国の教皇だ。しかもだしにするためとはいえ、何度も舞踏会に連れて行ってもらい、住む場所と毎日の食事を与えてもらっていた。リサとしては恩義を感じている部分もあったことだろう。


「リサ!」


 声に驚いて振り向くと、馬を連れたエリックがゆっくりこちらへと歩いてくる。白いシャツに、黒のネクタイとジレ(ベスト)、ビリジアン色のフロックコートという装いは宮殿にいる時の姿だ。


 帯剣もしていない。着の身着のまま、この場所に駆け付けたようだ。


「エリックさま!」


 エリックの名を呼ぶリサの顔は完全に乙女になっている。

 この場にいる全員が気づいたと思う。

 リサはエリックに恋をしていると。

 そしてこんな場所にまで駆け付けたことから、エリックもまた、リサに恋をしているのだと。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は、明日 8時台 に以下を公開します。

「行ってしまった……」


それぞれの想いが動き出し……。


引き続きよろしくお願い致します!

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