20:陰ながら応援していた?
教皇と聖女リサと王太子の婚約者である私がつながる理由……。
なにか点と点を結び付ける事象があったはず。
そこで一つの可能性に気づく。
セルジュが私に伝えた教皇の予言。
悪役令嬢から辛辣ないじめや嫌がらせを受ける聖女は、何度となく助け、庇うセルジュに、純粋な恋心を芽生えさせる。そしてその想いが募り、断罪の場で悪役令嬢が罰せられたその瞬間、聖女はセルジュと結ばれることを決意し、聖女であることを放棄する。
この予言に従い、私は悪役令嬢になろうと奮闘していた。
でも、それはうまくいかなかった。
失敗に続く失敗を繰り返していた。
まさか……。
教皇は味方……?
セルジュが聖女と結ばれるために、陰ながら応援していた?
本来、リサを、聖女をいじめるのは悪役令嬢である私の役目だ。だが私はなかなか悪役令嬢になれず、その一方でセルジュとは良好な関係を築いていた。そのことに教皇も気づいている。もしかすると、リサがエリックに心惹かれていることにも、気づいたのかもしれない。このままではリサはエリックと結ばれ、セルジュの命も国民とこの国の未来も大変なことになる。
だから。
教皇はリサを誘拐・監禁することにした。
奇しくも私が『リサとセルジュの吊り橋効果作戦』を思いついたように、教皇も同じことを思いついたのでは?
私が考えた『リサとセルジュの吊り橋効果作戦』は甘いものだ。監禁すると言っても、宿の部屋に閉じ込め、眠らせる直前に文句をねちねち言うぐらいで、服を脱がせるとか、汚すとかそんなことをするつもりはなかった。
でも本気で監禁するなら今のような状況、これぐらいはやらないとダメだったのではないか? あんな風に祭服を脱がされ、十字架に磔にされ、その状態でセルジュに助けられたら……。
リサはとんでもない恐怖を味わっている。
それをセルジュに救われたとなれば、もうセルジュにゾッコンだろう。
私の眠り薬による監禁でセルジュに助けられても、うっかり昼寝を自分がしたぐらいに思われていたかもしれない。寝落ち直前に聞いた悪口は、夢ぐらいで片付けられていたかもしれない。
教皇のこのやり方こそ、真のヒール、悪役がすること。
つまり身をもって教皇は示してくれたのではないか?
さらに私も一緒にさらったということは、この誘拐・監禁の手柄を、譲るつもりなのではないか? つまり、これは教皇が考え、実行した計画なのに、私が企て、行ったことにしてくれるのではないか? この件が明るみになれば、間違いなく、私は悪役令嬢だ。リサがどれだけこの件でセルジュを好きになるか分からないが、もし完全に好きになってくれれば、このまま断罪コースにだって進める。
私は教皇を胸ばかり見て、金にがめつい世俗まみれな奴と嫌っていたが……。本当はセルジュや国民を、国を思う、イイ人だったのでは……!?
こうなったら遅かれ早かれメラニーにはすべて話すことになるだろう。ならばと私は、今ひらめいたことをすべてメラニーに語って聞かせた。
すると……。
「……シルヴィさまがなかなか悪役令嬢になれない理由が、よくわかりました。本当にシルヴィさま、あなたはイイ人過ぎます。悪役令嬢には向いていないですよ」
あっさりそう言われたのだが。
なんというか声音が変わり、顔の表情もさっきまでとは違い、なんだか別人に感じる。思わずガン見するも、メラニーは懐中時計を確認している。
「いい頃合いです、シルヴィさま。セルジュさまの執務が終わる時間です。きっと今頃、魔力の追跡を行い、いるはずの宿ではなく、サン・ウエスト大聖堂で魔力を感知し、目を丸くしているはずでしょう」
「メ、メラニー、何を言っているの……!?」
メラニーは私の額を指でつんと押した。
「ここに、セルジュさまの魔力追跡魔法がかけられています。しかも反射魔法まで。魔力追跡魔法。これは自身の魔力を一時的にここに移し、その魔力を追うことで、相手がどこにいるか感知できる魔法です。魔力追跡魔法は簡単な魔法ですが、セルジュさまは自身の魔力で、さらにより高度な魔法に変えています。ここに魔力追跡魔法が使われていると分かるのは、この国では三人ぐらいしかいないのでは?」
ま、まさか……。そんな魔法を? いつ?
いや……。額にキスをされた。旅の安全を願うジンクスだと言って。
「ここまで魔力を練成しているとは。さすがセルジュさまです。そして反射魔法というのは、この魔力追跡魔法を解除しようとすると、それを解除しようとした者に魔法が跳ね返るという魔法。つまりシルヴィさまにかけられた魔力追跡魔法は、セルジュさま本人と僕ぐらいしか解除できないというわけです」
いろいろな情報が飛び込んできたうえに、今、メラニーは自分のことを「僕」と言わなかったか。ど、どうして、何で……!?
「シルヴィさま、まだ分からないですか? 僕が誰であるかを」
まさか……。
「変身魔法解除」
濃い紫のローブ、その下には白シャツに濃い紫のジレ、ライトパープルのスーツの上下……大魔法使いシルウスだ。
「な、どうして……」
絶句する私にシルウスは微笑む。
「シルヴィさま、君は王太子の婚約者。その婚約者を護衛なしで街へ出すなんて、するわけないでしょう?」
「で、でも、セルジュは私に過保護にするつもりはないって……」
「彼なりの気遣いです」
すっかり化かされてしまった。
が。
今は状況が状況だ。
この場に国で一番強い魔法使いがいてくれることは……。
それに越したことはない。とても心強い。
あ、でも、教皇は私に花を持たせようとしているのでは……。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は、本日 11時台 に以下を公開します。
「人心掌握が上手い」
心強い仲間が登場、さあ、どうなる!?
引き続きよろしくお願い致します!














