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完結●悪役令嬢ただし断罪後のハピエン確約で異世界召喚!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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13/30

12:絶対絶命。だけど役目を果たせたかな?

「シルヴィ、巨大なまずです! 転覆に備えてください」


 セルジュの叫びが聞こえた次の瞬間。

 湖から何かが浮上し、ボートが宙に浮いたと思ったら……。

 リサと私は同時に湖の方へ投げ出された。

 体が落下していくその刹那、湖に飛び込むセルジュとランディの姿が見えた。


 というか、巨大なまず!?

 そのなまずがいる湖に落下するの、私!?

 魔法を、魔法で――。


 ドボンという音と共に湖に落下していた。

 慌てて手をばたつかせると、金色の巨大な目と目があった。


 う、嘘、これが巨大なまず!?


 魔法を使いたいが、水中では声が出ない。


 !!

 なまずが巨大な口を開いた。

 ピンク色の歯茎が見え、その奥は闇だ。


 飲み込まれる……。


 でも。

 リサは湖に落ちた。そしてセルジュは湖に飛び込んだ。

 ならば私は役目を果たせたはず。

 こんな状況で助け出されたら、リサは絶対にセルジュに恋をする。


 ナマズの口がどんどん迫ってくる。


 まさに絶体絶命。

 もう……助からない。


 私は目をつぶろうとした。


 だが。


 ぐいっと腕を引っ張られた。


 !?


 驚いて顔をあげようとして、巨大なまずに剣をふりおろそうとするランディの姿が見えた。


 水中とは思えない俊敏な動きをしている。


 では私の腕を引っ張るのは誰!?


 ……。


 驚きで、閉じていた口を開いてしまった。

 空気がどんどん失われる。


 どうして、セルジュ……?

 リサの救出はもう済んだの……?


 景色が暗転した。


 


 シルヴィ…………!

 シルヴィ…!

 シルヴィ!


 私の名を呼ぶ声が遠くに聞こえる。

 むせると同時に目が開いた。


 泣きそうなセルジュの顔が見えたと思ったら、きつく抱きしめられている。すぐに布にくるまれ、そのまま抱き上げられた。その瞬間、耳から水が抜け、様々な声が飛び込んでくる。


「衛生兵、こちらの令嬢の様子を確認しろ」

「ランディ様、警備兵が到着しました」

「誰か、こちらの方を医務室へ運んでください!」


 私は必死に声を絞り出す。


「セ、セルジュ、リサは……?」

「シルヴィ、無理をして話さないでいいですよ。今、医務室へ連れて行きますから」

「ど、どうして、私を? リサは……?」

「大丈夫ですよ、シルヴィ。聖女は湖に落ちていません」


 衝撃的過ぎる一言に固まる。


 なんで? どうして?

 私は落ちたのに、なぜリサは?

 え、まさかリサは自分の力を使い、落下をまぬがれた、とか?

 聖女ならそれぐらいの力がありそうだ。


「ど、どうして……」


 思考は素早く動くが、言葉がまだ出にくい。


「エリックが風魔法を使ったのです。巨大なまずが出現した時、エリックは離れた場所にいました。だから転覆せずに済んでいます。聖女はエリックのボートに乗り、ちゃんと岸辺まで戻りましたよ」


 そこで一旦言葉を切ったセルジュは、再び口を開く。


「気になるだろうから教えておきます、シルヴィ。巨大なまずは2匹いて、一匹はランディが剣の一撃で倒しました。もう一匹はシルウスにより縮小魔法をかけられています。そしてそのまま水中から引き上げられ、捕えられました。宮殿内の湖に、巨大なまずなんていません。恐らく、誰かが持ち込んだのでしょう。このボート遊びに参加した誰かが。縮小魔法で小型化したものを湖に放ち、魔法を解除したのだと思います。転覆したボートはいくつもあり、今も救出作業は続行中。でもシルウスが湖の水を一時的に減らしたので、みんな助かるはずです。大丈夫ですよ。現場の指揮はシルウスとランディがとってくれています。だから私が離れても問題はないですから」


 知りたかったことをセルジュは漏れなく話してくれた。


 あ、でもなぜ巨大なまずが? 誰を狙ったの?


「なぜ巨大なまずが放たれたのか、誰が狙われたのか。それはまだ分からないです。でも……私が主催したボート遊び。私が狙われた可能性が高い。皆を巻き込む形になり、申し訳なく思っています」


「そんな……、今、大丈夫なのですか……?」


「大丈夫。私の後ろには護衛の騎士がついてきていますから」


 そう答えた後、セルジュが耳元で囁く。


「今、大変な状態にあるのはシルヴィ、君です。私の心配なんてしなくていいのですよ」


 そんなわけはないと答えようとしたら、医務室に到着した。

 医務室は騒然としている。


「セルジュ王太子さま!」


白衣の中年の男性が駆け寄ってきた。


「医務官か。シルヴィを頼む」

「はい。個室をご用意していますので」

「ではそこまで彼女を運ぼう」

「こちらです」


 個室に案内されると、セルジュは室内の長椅子に私をおろし、部屋を出た。入れ替わりで看護師が部屋に入ってきて、服を寝間着に着替えさせてくれた。


 今更だが、髪も服も濡れていないことに気づく。救出した際、魔法で乾かしてくれていたようだ。


 そのままベッドに案内され、そこで体が冷え切っていたことに気づく。さっきは布にくるまれ、何よりセルジュに抱えられ、その体温で温められていた。それがなくなったので……。


 寒い……。


 医務官が入ってきて、すぐに私の状態を確認しはじめた。


「外傷はないですが……少し体温が低下していますね」

「では私が温めよう」


 白シャツにセルリアンブルーのズボン姿のセルジュが、いつの間にか部屋に戻ってきている。どうやら私が着替えたり、診察を受けたりしている間に、セルジュも着替えたようだ。


「はい、承知いたしました。何か必要な物があればお呼びください」


「私が合図するまで部屋には誰もいれないでほしい。あと彼女の侍女のメラニーに、ドレスを用意して待機しておくように伝えておいてくれ」


「かしこまりました」


 医務官が出て行くと、セルジュはベッドの周囲のカーテンを引いた。


 体を温める魔法なんて、あったかしら?


 ベッドの脇に立ったセルジュは、魔法を唱える代わりにこう言った。


「シルヴィ、少し右側にずれてもらえますか?」

「あ、はい」


 枕をつかみ、右側に体をずらすと。

 それが当然というようにセルジュがベッドに身を横たえた。


「え、え、え、え」


 動揺する私の体をセルジュが抱き寄せた。


 な、なんで、どうして?

 体を温める件はどうなったの!?

 もしかして私を助け、セルジュも疲れたということ?

 休みたいけど、個室でベッドが一つしかないから、こうなった?


 そう……なのだろう。


「セ、セルジュ、ごめんなさい。ここはセルジュのために用意されていた個室なのよね?」


「そうですね。基本的に何かあれば、専属の王室医が私の部屋まで来ます。でも万が一に備え、医務室にも王族専用の個室は用意されているのですよ」


 ああ、やはりそうなのだ。

 ならばここはセルジュにゆずり、私は医務室のグループ部屋のベッドで休ませてもらおう。


「分かりました。セルジュはここでゆっくり休んでください。その、助けていただき、本当にありがとうございました」


 体を起こそうとすると、思いがけない強さで動きを止められた。止められた上に、さらにぎゅっと抱きしめられる。


「どこに行くつもりなのですか、シルヴィ?」

「えっと、グループ部屋のベッドで休ませてもらおうかと」

「どうして? 君は私の婚約者です。それに君のことを温めると言いましたよね?」


 そ、それってつまり……。

 私を抱きしめて横になり、温めてくれる……ということ?


 そう言われてみると、セルジュだって湖に落ちただろうに、その体は……。


 温かい。


 セルジュは筋肉もあるし、男性だから女性よりも体温が高いのかもしれない。

 とにかくこうやって今、抱きしめられていると……。

 温かいし、安心できる。


「すっかり冷えてしまったね。すぐに服も髪も乾燥させたけど、まだ夏ではないから」


 そう言いながらセルジュは自身の顔を私の頭に寄せる。

 洗い立てのシャツからは、フローラルな香りがしていた。


「また私がドジをしたばかりにすみません……」


「どうしてシルヴィが謝るのですか? 巨大なまずは間違いなく私を狙ったもの。あの状況で悪役令嬢を演じるなんて無理ですよ」


そう言われると、その通りではあるのだが……。

結局、今回も悪役令嬢として活躍はできなかった。

なんというか、運命の神様も、悪役令嬢になるのは諦めろと言っている気がする。

それに元々上手くいかなかったら、言うつもりだった。

だから……。


「セルジュ、もう何度も私、悪役令嬢として失敗しています。今回は不可抗力だったかもしれませんが、多分、悪役令嬢に向いていないと思うのです」


「そうかもしれないですね」


あっさりセルジュは応じる。


それは……当然だろう。でも、こうもあっさり認められると悲しくなる。でもこれで踏ん切りがついた。セルジュも優しくはしてくれていたが、内心では私には向いていないと感じていたということだ。


「そ、その、諦めるつもりはないのです。でもリミットがあるわけで。私なんかより、しっかり悪役令嬢ができる人物はどこかにいると思うのです」


セルジュは無言だ。

でもその通りと思っているに違いない。ただセルジュは優しいから……。


「もう一度召喚してみてください。悪役令嬢を。私はお役目御免ということで王宮から去りますから」

「それはできないですよ、シルヴィ」

「え……」

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は、本日 13時台 に以下を公開します。

「Oh my god!」


悪役令嬢の辞退を拒む理由、それは……。


引き続きよろしくお願い致します!


     【お知らせ】

  >>まさかの続編スタート<<


『断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!

既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』


https://ncode.syosetu.com/n8030ib/


SSを用意しようとしたら、結構長くなりそう……。

ということで続編開始決定☆

本作をお読みいただいていた読者様。

よかったら4月29日(土)の12時台の更新を

ご確認くださいませ~

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