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完結●悪役令嬢ただし断罪後のハピエン確約で異世界召喚!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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11/30

10:遂に成功の兆しが!

 こんな声、普通、腰砕けものなのに。

 相変わらず私の心臓は無反応だ。

 ……!

 ゆっくりシルウスから体を離すと……。

 私の頬をシルウスの手が包み込んだ。


「……なるほど。これはなんとも困ったことに。でも僕が勝手なことをしては、怒られてしまいますね」


 クスリと甘い笑みを漏らすと、頬から手を離した。そして「風魔法、発動。乾燥温風」と言い、自身の髪に手を向ける。


 碧紫の光がふわっと灯ったと思ったら、濡れた前髪は乾き、いつものサラサラの前髪に戻っていた。


「練習は終了です、シルヴィさま。丁度アフタヌーンティーの時間。美味しい紅茶を楽しみましょう」


「……は、はい。ありがとうございました!」


 シルウスにドキドキしない理由は不明。


 とりあえずイケメン耐性ができたと思うことにして、アフタヌーンティーのため、ティー・ガウンに着替えることにした。



 練習も完璧。


 今宵、私は間違いなく悪役令嬢になる。

 その気合から、ドレスも悪役令嬢っぽいものにした。


 今日のプリンセスドレスは、バストとヒップが強調されるカッティングになっている。ウエストもピッタリフィットしており、体全体のラインが露わだ。それでいて赤と紫のオーガンジー素材のヴァランシエンヌレースが織り込まれ、動く度にレースがふわりと舞う。


 首元には黒のリボンのチョーカー。髪はポニーテールでドレスと同色のトークハット。姿見にうつる私は、見るからに悪役令嬢だ。


 エスコートのために部屋にやってきたセルジュは、私を見て息を飲む。


「……シルヴィ、今日のドレスは……とても妖艶で……悪役令嬢そのものですね」


 ニッコリ微笑むと、セルジュは吐息をもらす。


 メイクもこれまでとは全然違う。

 釣り目になるようにアイラインをひいているし、眉毛もきつい顔立ちになるようにしている。もちろんルージュは真紅。


 いける。これなら絶対。高飛車な笑いだってできそうだ。


「セルジュ、エスコートをお願いしても?」


 流し目でセルジュを見る。


「……! そうですね。行きましょうか、シルヴィ」


 メラニーに見送られ、部屋を出た。


 舞踏会の会場に着くと、自然と視線が私に集まる。

 今日のセルジュは王道の黒の燕尾服。

 それは悪役令嬢風ドレスの私を、いい具合に引き立ててくれる。


 女性も男性もみんな私を見つめ、息を飲んでいた。その中には軍服姿のランディ、ロイヤルパープルのローブをまとうシルウスの姿もある。


「……シルヴィ。今日はなんだか落ち着かないですね。早めに部屋に戻りましょう」


 セルジュが耳元で囁く。


「え、まだ着いたばかりなのに」

「着いたばかり……。そうなのですが……」


 セルジュが腰を抱き寄せる。


 今日のドレスは体のラインが出るから、下着はギチギチ締め上げるようなものを身に着けていない。だから体に触れられると、まるで素肌に触れられたような錯覚を覚えてしまう。セルジュの腕の筋肉を腰に感じ、何とも言えない気持ちになる。


 私がそうなのだから、セルジュだって腕に私のウエストの感触が届いているのでは!?


 そう思い、その横顔を見ると……。

 大天使の彫像のように美しい顔が、ほんのり赤い。

 私の視線に気づき、こちらを向くと。

 空のように澄んだ碧い瞳が潤んでいる。

 セルジュから男の色香を感じ取ってしまい、心臓が大騒ぎしだす。


 え、こんなにバクバクしていたら、悪役令嬢どころではなくなってしまう。


 部屋に早く戻る。それは構わない。

 でもすべきことをせねば。


 『どうせ安物だからいいわよね作戦』を決行しなければならない。


 ……!

 ソテル教皇がニタニタ笑いで近づいてきた。

 ということはリサもいる。


 とりあえず教皇をこちらにひきつけ、セルジュにまかせ、私はリサのところへ向かおう。


「ねえ、セルジュ」


 その肩をつかみ、耳元に口を寄せる。

 そして今の考えを伝えると……。

 セルジュは甘いため息をもらし、「そうですか。分かりましたよ、シルヴィ」と応じてくれた。


「セルジュ王太子さま、シルヴィさま、今宵も舞踏会にお招きいただき……」


 すっと私はセルジュから離れる。

 教皇が「!?」という顔をするが無視だ。

 王太子に話しかけたのだ。私を追うことはできない。

 そのままホールの外へと向かう。

 何人かの男性からダンスに誘われたが、すべて流し目で微笑みスルーする。


 リサがいるとしたら、飲み物や軽食が用意されている部屋だろう。


 廊下でも何人かの男性に声をかけられたが、会釈しながらやり過ごし、グラスが見えている部屋に入る。


 いた!

 黒のイブニングドレス姿のリサがいる。

 黒髪は綺麗にお団子にまとめられていた。

 前回同様、スイーツコーナーの前に立ち、どんなスイーツがあるか確認しているようだ。


「シルヴィさま、動きますか?」

「シルウス!」


 いつの間に?と思うが、彼は大魔法使い。

 気配ぐらい消して後をつけることもできるのだろう。


「作戦決行ですね。大丈夫、すぐに飲み物を運ばせます」


 私は頷き、そのままリサの方に歩み寄る。


「リサ!」「シルヴィ!」


 !?

 二人の男女の声が重なり合った。

 私はリサの名を呼んだ。

 その私の名を男性が呼んだ。

 声は右手後方からしたので、そちらを見ると、そこにエリックがいる。


「シルヴィさま、なんて妖艶なのでしょう!」


 ワンテンポ遅れ、リサの驚きの声が聞こえた。

 私は視線をリサに戻し、エリックはこちらへと歩み寄る。


「す、すごい、なんて大人な……。あたし、同じ女性なのに、なんだかドキドキしちゃいます」


「聖女さまの言う通りだ。シルヴィ、イメチェンか? 前回と別人だ」


 リサとエリックが同時に私に話しかける。

 練習と違う状況に戸惑いながら、とりあえず笑顔で応える。


「そ、そうね。舞踏会って一日おきにあるでしょう。似たようなドレスだと飽きられてしまいそうですから、今日はこれをね、選んでみましたの」


「さすがです、シルヴィさま。あたし、こんなに体のラインが出るドレスなんて無理です」


「確かにシルヴィだから着こなせるドレスだな」


 うーん、エリックの立ち位置が悪い。

 そこに立たれると、左手でグラスの飲み物をかける必要がある。でも私は右利きだから、できれば右手を使いたい。


 スイーツを見るふりをして、さりげなく移動する。

 つられてリサとエリックも動く。


 よし。

 これで配置は完璧。


 だけど、ここ、通路じゃないわよね。

 と思ったら、飲み物をのせたトレンチを持つ給仕の男性の姿が見える。


 うー、通路ではないが、飲み物がきてしまう。

 とりあえず、受け取ろう。


「ねえ、ノンアルコールシャンパンですよ。みんなで乾杯をしません?」


私の提案に二人は……。


「はい、ぜひ」「もちろん」


 三人でグラスを受け取る。


「あ、この前みたいにテラスへ行きましょう」


 私の提案に二人は頷き歩き出す。

 こうなったらつまずいたフリをして、ぶっかけるしかない。

 そう思い、歩き出したら……。


 !?

 誰か、私のドレスの裾、踏んだ!?

 フリをするまでもなく転びそうになった。


「シルヴィ、あぶない」


 エリックが私の体を支える。

 私は右手に持っていたグラスをリサの方に向けたが。

 リサの手が私の手を支えた。


 え……。


 だがしかし。


 エリックが左手に持っていたグラスの中身が、リサにかかりそうになっている。


 そんな、どうして、エリックが!?

 エリックの飲み物がリサにかかったら、それを乾かし、ドレスのお詫びをエリックがすることになり、セルジュの出番がなくなってしまう。


「風魔法、発動。雲散霧消!」


 本能的に魔法を詠唱できた。

 おかげでエリックがぶちまけかけたノンアルコールシャンパンは、瞬時に消えた。


 よし、今度こそ、私が!

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は、本日 10時台 に以下を公開します。

「並々ならぬ決意」


強い決意で挑むシルヴィは……。


引き続きよろしくお願い致します!

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ペルソナQ、メダロットのあかうめ先生描き下ろし表紙絵

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