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完結●悪役令嬢ただし断罪後のハピエン確約で異世界召喚!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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10/30

9:イケメンに反応できない!?

 セルジュから、庭園のガゼボ(東屋)でシルウスと楽しそうに話していたと指摘された。


「あ、はい。またドジをして悪役令嬢をできなかったことを、なぐさめられました。そして教皇と聖女が……リサが、実は仲が良くない件について教えてもらいました」


「……そうですか」


 そう返事をしたセルジュは、なんだかホッとした顔をしている。


「その、改めて申し上げることになりますが、今日はまともに悪役令嬢を演じられず、すみませんでした。シルウスはまだチャンスはあると言ってくれましたが、セルジュの命と国民と国の命運がかかっていることなのに……」


「シルウスの言う通りですよ。まだチャンスはあります。だから大丈夫ですよ、シルヴィ」


「ありがとうございます……。次こそは必ず。……えっ」


 セルジュが私の手をぎゅっと握った。


 え、どうして……? 励ましてくれているの?


 思わず顔を見上げると、澄んだ空のような碧い瞳が優しく私を見ている。


 励ましてくれている……のだろう。本当は「もっとしっかりやってくれよ、こっちは命がかかっている!」なんて怒ってもおかしくないのに。こんなに優しい王太子を死なせるわけにいかない。


 明日こそ、絶対に悪役令嬢を演じて見せる……!



 翌日も前日と同じように。

 朝から下着で締め上げられ、ベビーブルーのデイドレスに着替えた。


 朝食の席で顔を合わせたセルジュは、偶然だがベビーブルーのジレ(ベスト)とズボンだった。フロックコート(上衣)はブルーだったけど。


 小さな一致に思わず私は嬉しくなってしまう。


 でも妃教育が始まると、一気に魂が抜けた。

 妃教育の最中は、悪役令嬢を演じることなどすっかり忘れている。


 だが昼食の席でセルジュから「午後は、シルウスが今日の舞踏会での悪役令嬢の作戦について説明してくれますよ。練習もするそうです。頑張ってください、シルヴィ」と言われると。


 魂もしっかり戻ってきて、臨戦態勢になる。

 更なる気合を入れるために、秘策を投入した。


 私の部屋を訪れたシルウスを迎えた時、私はスカーフを鉢巻き代わりにし、気合十分だった。


「シルヴィさま、そのスカーフは!? 新しいオシャレ……?」


「あ、これは、前世でよくやっていたことです。気合を入れたい時は、こうやって頭に布を巻くのです。鉢巻きというのですが、メンタルに効くと言われています。少なくとも私は効くと信じています」


「ハチマキ!? 初めて聞きました。それはともかく今回の作戦ですが……」


 ライラック色のローブ、その下には白シャツにプラム色のネクタイ、モーブ色のスーツの上下という姿のシルウスが、今晩の舞踏会での作戦を話し始める。


 今回の作戦は『どうせ安物だからいいわよね作戦』だ。


 リサを見つけたら、おしゃべりに誘う。


 テラスにはいかず人通りのある場所で立ち話を始める。そこに手配していた給仕の者が飲み物を持ってくるので、それを受け取る際、わざとドリンクをリサにかける。そして謝罪しつつも「どうせ安物のドレスですから、ちょっと汚れても構わないですわよね~」と言い、その様子を見ていたセルジュが私を注意し、リサを庇う。


 ドレスが濡れたリサを連れ、ホールを出たセルジュは、魔法の力で濡れたドレスを乾かしてあげる。後日、お詫びでドレスをリサに贈り、再度舞踏会で会おうと手紙を送る、というわけだ。


 悪役令嬢っぽい立ち回りであり、これならセルジュとリサの次の再会も約束できる。


「ではシルヴィさま、作戦の全貌が分かったところで、練習しましょう」


 シルウスが私を見た。頷くと、魔法を唱える。


「変身魔法、発動。黒のマーメイドドレスを着たリサ・ゴルチエに」


 これは本当に驚いた。


 身長も体型も、それどころか性別だって違うのに、シルウスは確かにリサの姿に変身している。


 部屋に置かれたテーブルには、作戦を聞いた後、メラニーに用意してもらったワイングラスに入った水が6杯分、並んでいた。


「では、シルヴィさま、練習開始です。水はすぐに風魔法で乾かせますので、遠慮なくかけてください」


「! 声はシルウスのままですね」


「そうですね。シルヴィさまの部屋から聖女の声が聞こえた、なんて噂になりますと、面倒ですから」


 シルウスは用心深い。

 でも見た目はリサなのに、声がシルウスなのは本当に不思議。


「まずは普通に会話をしましょう。給仕の者が来たという合図を僕が出しますから、そうしたらまずはシルヴィさまのやり方で、水をかけてみてください」


「わかりました」


 あたかも舞踏会の会場にいる気持ちで、リサに声をかける。そして自然な流れでワイングラスへ手を伸ばす。


「少し話し過ぎて、喉が乾いちゃったわ」


 テーブルに置かれていたワイングラスを掴む。


 いよいよだ。


 誰かに水をぶっかけるなんてこと、したことない。かけられたことは……あるけど。モラハラDV夫に。アイツがやったようなことを自分がやるのは癪だが仕方ない。


 心を鬼にして。

 グラスをリサ姿のシルウスに向ける。


 えいっ!


 ビシャッと音がする。


「え、あれ!?」


「勢いが足りなかったようです。絨毯にぶちまけましたね」


 シルウスの言葉に絨毯を見ると、撥水加工されているからだろうか。巨大な雨粒のような水が絨毯で揺れている。


「風魔法、発動。局所竜巻」


 絨毯にシルウスが手を向け、呪文を唱えると……。


 淡い碧紫の光が、巨大な雨粒姿の水を、底から照らした。すると、巨大な雨粒姿の水が、小型の竜巻の上にひょっこりのっかっている。


「シルヴィさま、グラスを」


 手を伸ばし、竜巻の方へグラスを向ける。

 上手い具合に水がグラスの中へ戻っていく。


「よし。気を取り直して、もう一度」


 こうして何度も繰り返した結果。


 遂に。

 できた!


「あらあ、リサ、ごめんなさいね。でもそのドレス、どうせ安物でしょう?」


「シルヴィさま、完璧です!」

「やったぁ!」


 思わず私がリサ姿のシルウスに抱きついた瞬間。

 シルウスは変身魔法を解除していた。

 その結果、私は水も滴るイイ男になったシルウスに抱きついていた。


 さらさらのシルバーブロンドの前髪は水に濡れたので、シルウスは後ろにかきあげる。碧紫の瞳は水を避けるために少し細められ。その体からは風にそよぐフリージアのような甘い香りが立ちのぼっている。


 水が滴るシルウスは、とんでもない色気があった。

 それなのに。

 私の心臓はちっとも反応しない。


 え、なに、どうして!?

 普通、こんな姿を見たら、しかも今抱きついているのに。

 なぜドキドキしない!?


 あまりにもイケメンに囲まれているから、ちょっとやそっとじゃ反応できなくなった!?


「シルヴィさま……」


 困ったような甘い声で、シルウスに名前を呼ばれた。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は、明日 8時台 に以下を公開します。

「遂に成功の兆しが!」


『どうせ安物だからいいわよね作戦』の行方はいかに!?


引き続きよろしくお願い致します!

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