:水鏡への信頼
「・・・・・・・・・ん?」
彰は嬉しいような悲しいような気分がして、窓の外を見つめた。
「余所見?いい度胸ね、彰くん」
がすぐさま今の現実に引き戻される、目の前には目だけ笑っていない瞑がいる。
もちろん自分の隣にはおどおどした感じの冥がいるのだが、ずっと心配そうに見つめられている。
「いえ・・・・・ちょっと胸騒ぎがしただけですよ、瞑さん」
ジトッとした目で彰を見つめる瞑、先ほどから冷や汗を出しまくりな彰だった。
ちなみに場所は『覇光』の総本部になっている、冥が自分の部屋を勧めたのだが、瞑が絶対に許さなかったから。
それに加えて、『近衛』は大変なはずと瞑が予想したので、結果彰の場所ということになった。
彰が女二人を連れ込んだ時点で『覇光』の構成員達は大騒ぎをしているのだが、瞑はそれには気にしない。
「ふぅ~ん・・・・・・・・・・・・・・他の女?」
「違います!」
いままで彰にその手の噂が流れた事はない、そもそも任務以外では大抵部屋に引きこもっている彰のプライベートはあまり知られていない。
冥もそれはわかっている、彰の事が気になり始めてから調べていて分かった事だ。
「お姉ちゃ~ん、彰はそんなことする人じゃないよ~~」
「本当にそうみたいね、それに・・・・・・」
瞑はまたジッと彰を見る。
先ほど彰が、隊長と呼んだ人物より明らかに彰の方が強いと、瞑は知っている、それもちょっとの差ではなかった。
それなのに何故彰が二番手になどなっているのかと思った、冥の彼氏ということは隊長がいいと、瞑は思っている。
「何故彰くんは副隊長なのかしら?ここのボスは見る目がないのかしらね?」
「一閃ことを悪く言う事は許さないぞ」「お姉ちゃん!一閃様のことを悪く言わないで!!」
同時に言われては困るのは瞑だ。
「でもぉ・・・・・・普通強い人が上になるものでしょう?だったら彰くんが隊長じゃないとって普通思うじゃない・・・・・」
少し声が低くなっている、まさか妹にまで言われるなんて思いもしなかったのだろう。
「前にも言ったでしょ!一閃様は隊長を強さで選ばないって!まさかお姉ちゃん、忘れてたの!?」
「忘れてないわよ・・・・・・冥ちゃんの言った事をそう簡単に忘れるわけないじゃないの・・・・・でもね~・・・・」
「瞑さんはどうしてそうも隊長に拘るんですか?」
「それは・・・・・たった一人の可愛い妹の幸せを誰よりも望んでいるからに決まってるじゃない」
彰の質問に、ハッキリと答える瞑、それを聞いて少し照れるのは冥だ。
「それは隊長でなくともいいと思いますが?」
「そうね、でもやっぱり可愛い妹に副隊長なんかって思うじゃない・・・・・」
「大丈夫ですよ、瞑さん、俺は絶対にあなたの妹の事を幸せに出来る自信があります」
ハッキリ言われては言い返す事の度出来ない、瞑は視線を彰の横で幸せそうに寄り添っている冥をみて、ムッとした顔を作る。
「お姉ちゃんの前でそうやってイチャイチャするのは止めなさい・・・・・見てるこっちが恥ずかしいんだから」
バッと離れる冥、それを少し残念そうに彰が見ていた。
そしてフト思い出したように瞑の方を見る。
「そうだ、一つ訂正しておくべき事がありましたよ、瞑さん」
「なにかしら?」
「隊長、水鏡のことです、言ったでしょう彼が俺より弱いって――――――大間違いです、彼は俺何かより遥かに強い」
それに驚いたのは瞑だけではない、冥も驚いているようだった。
「ただ、その力に気が付いてないだけなんだ、もしその力を見つけられたなら、誰も適わないな、って一閃が言っていた」
その時、外で光の柱が天に伸びたのだが、この三人を含む『覇光』のみなはそれに気付く事はなかった。