第十六章:迫り来るグングニルの大槍、絶対先攻の一撃
上についた水鏡はちょっとめんどくさげに溜息をつく。
「それで?京がお前達を気絶させて、気絶している間に再砂と京がいなくなっていたと?」
救護隊の面々が同時に頷く。
もう一度深く溜息をつく水鏡、その仕草からはやる気のなさがみなぎっているようだった。
「わかった、詰問は俺がしておくから、お前等は帰ってろ」
納得していないようだったが、水鏡にここまでいわれたため全員持ち場に帰っていった。
水鏡は部屋のソファに落ち着きながら座り、ゆっくりと背もたれに体重をあずける。
その席からの窓から空がよく見えた。
そして、遠くに不吉な気配を感じさせる、漆黒の雲がかかっていることすらも見えた。
その瞬間水鏡は走り出した、全速力で。
世界が――――――――――――光に包まれた。
『八皇』の要塞基地のすぐ近くの場所で一人瞑想している。
そこにもうひとり、少年のようだが無表情の人が近づいていく。
「どこかにでも攻撃するつもりなのか?」
「『道敷大神』・・・・・君なら僕の狙う所がどこかくらいわかってるだろう?」
「あぁ、『地獄の使者』だろ、俺は反対はしないがな・・・・やめといたほうがいいと思うぞ、今のあそこには何が在るか分からない」
『道敷大神』が無表情のままそう告げる。
しかし、いっこうに鋭美が『才気』を溜める事をやめたりはしない。
「それでも攻撃してみたいよ・・・・・・今の自分でどれほどダメージを与える事が出来るのか・・・それを僕は知りたい」
「例えその攻撃の反動で自分が死んだとしてもか?」
「それくらいで死ぬようならしんだほうがいいと僕は思っているんだ・・・・」
鋭美の決意が固い事を理解したのか『道敷大神』は寂しそうに溜息をつく。
そして、おもむろに鋭美の唇に自分のものを重ねた。
鋭美の唇からは、瞑想を始める前に食べていた、苺のソフトクリームの味がした。
目の前では鋭美が驚いた顔を『道敷大神』に向けていた。
「・・・・・・・・・・・どうして?」
「わからない、ただ・・・・そうした方がいいような気がした、多分それ専用の体なんだと思うんだが」
「・・・・・・・・・もう一回してくれる?もしもの為にもう少しだけ・・・・」
「何回でもしてやるさ・・・・・」
その後何回か濃厚なキスをした後、鋭美は覚悟を決めたかのように立ち上がった。
『道敷大神』はその姿を悲しそうに見上げる。
鋭美は一度『道敷大神』の方をチラリと見てから、目を閉じ、今度は目を『地獄の使者』の方向に向ける。
「行ってくるよ・・・・・・」
「がんばれよ、出来ればまた生きているお前に会いたいものだ」
鋭美は歩き出し、『道敷大神』はそれを止めることなく見送った。
鋭美が見えなくなってしばらくして、世界を光が包み込んだ。
鋭美の『絶対先攻』たるべき必中の雷の大槍が放たれたのだ。
グングニルの大槍――――――。
「しねええええええええええええええ!!!!!!!!!」
鋭美の方向が聞こえたような気がした。
動くのが早くて良かった、水鏡はそう思った。
同時に自分にこの攻撃を最後まで耐えきれるかどうかが不安になってきた。
自分では決して出せないような雷の『才気』、雷で有りながら、あまりに圧縮されている為それは質量が在るように触る事が出来る。
それが幸いした――――――――――――だからこうやってここで押しとどめる事が出来るのだから。
「うぐぅ・・・・・!!!」
だが、この馬鹿みたいな力で押し固められた『才気』を止める事など今の水鏡には不可能なことだった。
その水鏡の弱さを補うように、雷が体と同化していき、一瞬―――体が自分の物じゃないかのように軽くなった。
だが、それでも対峙する雷の『才気』はその圧倒的な存在を誇示しつづけてくる、これでようやくとどめる事が出来た。
こんな攻撃防げなくて当たり前だ、此方はなんの準備も無いが、相手は相当な準備をしていると感じられた。
防がなくて良い、ここで逃げればおそらく自分は助かる。
「うぐぅ!!ぅうおおおおおおお!!!」
そんなこと出来るわけがない、何故なら水鏡には譲れぬ義務とそれをどこまでも持ち続ける性格があるから。
『覇光』、外敵の一切から『地獄の使者』内の人間を守り抜く事を使命にした組織、そのボスで在る限り水鏡は絶対に引かない。
それが義務であるから、その理由のみで水鏡は常にそれを守り抜く。
妥協など考えない、考えた時が負けた時だ、故にひたすら打破することを模索し続ける。
両の手足は既に雷と完全に同化仕切っている。
その浸食は最早その付け根にまで及び、まだまだ同化していく。




