:薬の代償
瞑は京に連れられて『近衛』の本部まできていた。
紅葉は砂のトンネルを抜けた後、どこかに言ってしまった。
まぁ『近衛』の本部は『地獄の使者』の本部でもあるわけだが。
京が先に中に入っていって、瞑は外で待機している。
中に入った京はすぐさまボスの部屋にむかった。
「京だ、入りますよ」
返事を待たずに部屋に入ると、待ちかまえたかのように冥が向かってきた。
「京!!早くきて!再砂が・・・・・再砂がたいへんなのよ!!」
「知ってるよ、後は私がやるから、冥は玄関にいるお姉ちゃんの相手をお願い」
「え!?瞑お姉ちゃんが来ているの?・・・・・・・・わかった!再砂をお願い!」
冥はそう言って急いで玄関の方に向かった。
「これでよしっと・・・後の連中は全員楽に気絶させられるでしょうから・・・・」
京は血を一滴地面に垂らす、そこから血が膨れあがり、目の前にもう一人の京が現れる。
「頼んだよ、ここから誰も入れないでね」
「わかったよ私、私に任せときなさい!まさか私が私を信じられないとでも?」
「いいえ信じているわ、なんたって私だもん」
楽しそうな会話をして奥に進んでいく、そこには何人かの看護員になにか賢明な手当をしてもらっている再砂の姿があった。
「京様!ようやくきてくださいましたか!お願いします、この患者を助ける方法を!」
「まず、君たちは消えてくれ」
京は瞬間で全員の意識を奪う、同時にずっと続けられていた看護の力が止まる。
それと同時に、砂がどこからともなく現れて、再砂の体を取り巻いていく、まるで自分で治しているかのように。
しばらくしてから、砂の中から掠れた声が聞こえてくる。
「け・・・・ぃ・・・・ヵ・・・・」
「そうよ、まったく無茶しちゃったね・・・・・お前が無茶して一体誰がこれから此処を守るのかしら?」
砂の中から顔だけ出す再砂、その顔は酷くやつれている。
「たの・・・・・めるヵ・・・・?」
「駄目よ、私が日の光の下は駄目だって知ってるでしょ?それに出る分に力を回しちゃえば逆に『七皇』なんか止められない」
「フ・・・・・フフフフ・・・・安心、しろ・・・・俺、様の、自立の砂、が・・・・お前が出る時は、空を覆う・・・」
砂がどんどん再砂から離れていく。再砂の気配は確かに良くなっているようだが、顔からは生気が無くなっていく。
「ぁァ・・・・・・そ、ろ・・・・ゾロ・・・・ゲンカ・・・・・ィだ・・・・・」
「仕方ないな、安心しろ、私が責任を持って守ろう!だからお前は少し休んでいろ」
「たの・・・・ン・・・・・・――――――――――――ッ」
再砂は最後に何かを思い浮かべてとても、女の京でも惚れてしまいそうな笑顔を残してその意識を閉じた。
一瞬急激に冷たい顔になった後、すぐさま生気が戻ったようで、呼吸も安定した。
「っふ、まったく女言葉で話していたらいまごろこの組織のアイドルになっていただろうに・・・・・惜しい女だ」
可愛い寝息をたてながら再砂はとても静かに寝ていた、ふとその首元に目がいった。
とても血色がよくて、美味しそうで、ついその首元に自分の顔を埋めようとしてしまう。
「いつまでそんな隅の方でコソコソやっている・・・・・・おおよそ生き残るめどがたったんだ・・・さっさと出てこい」
「これからお前が何をするのか興味があったんだ、まぁ一閃から安全は聞いているから止めはしなかったが・・・・」
「何回かとても止めたかったんだぞ・・・・・そうじゃない?」
「当たりだ、ま、さっきのも止めようとは思わなかったけど、何しようとしてたんだ?」
端に気配を消して眺めている剛毅が出てきて、再砂の隣につき、おもむろにそれを抱きかかえる。
「連れて帰るのか?まるでナイトだな・・・・・いつか私もして貰おうか、フフフ」
「やめてくれ、俺は瞬夜だけのものなんだよ」
「そうか、少しカッコいいから残念だ・・・・・ところで質問の答えだが、私はただの『吸血鬼』だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう驚き飽きたよ、『悪魔』に『吸血鬼』に『七皇』を一人で凌駕する女だもんな」
「いいことだ・・・・・・これ以上驚かれて私の仕事を増やさないでくれよ」
そう言うと京は血に代わり管を伝ってどこかに行ってしまった。
剛毅は剛毅で、再砂を抱えたまま窓から砂の『才気』を使い砂の路を造る、目的地は『秩序』の組織だろう。