第十五章:皇の混乱
「まさかこんなことになるなんて誰も予想できなかったからね・・・・・だからこそ驚くんだけどね、出来るだけ冷静に聞いて欲しい」
会議室の中では二つの席を三つの席を空けて残りで話し合いが行われていた。
「まず一番肝心な事なんだけどね、ボス華鈴が瀕死の状態だ、いつ立て直せるかもわからない状況なんだよ」
「なんだと!?鋭美、それは本当の事なのか?」
「私達はまだボスの状態を見ていないからわからないけど、それほどまでに酷いやられ方をしたの!?」
臼と木根が真っ先に抗議の声をあげるが、場の空気は沈んだままだった。
そこに華鈴を看ていていなかった梨理が扉を開けて入ってきて、さきほどの声が聞こえたのかまず先に華鈴の状態をいう。
「かなり危ないねー、でも辛うじて息をつなぎ止めるくらいにとどめている辺りは、多分手加減されたのかもね~」
暢気な声とは裏腹に目つきは完全に真剣そのものだった、まぁさきほどまで神経を集中して内部まで看ていたので仕方ないのだが。
梨理は空いた席の一つに座った、残る席は二つである。
「それでも危ない事にはかわにないの~だから当分は姿を眩ますかばらけて行動したほうが良いかな~華鈴は僕がみてるよ」
「梨理が残るというなら俺も残っておこう、俺一人いるだけで安全度はかなり上がると思うし、梨理との共闘は俺が適任だからな」
疾風はそう言ってこの要塞、『山岩』に残る事を宣言した。
「僕もちょっとだけ居るよ、まだひとつだけ用事があるからね・・・・・臼と木根はどうする?別に離れて行動してもいいんだけど」
「そうね、ならしばらくはあちらこちらで争いの種でも蒔いていましょうかね」
「そうだな、小さい事でも多くなれば大事になるからな、確か塵も積もればゴミになるだ」
「山でしょ?」
胸を張って間違った事を言った臼は、夫の失態は情けなさ過ぎると思った木根に羽交い締めにされていた。
「くる・・・・・し、い・・・・・!」
「木根ちゃ~ん、サドッ気たっぷりだね~・・・でもそろそろ止めないと彼が窒息死しちゃうよ~」
ハッと気づいた木根が手を離す頃にはもう臼はぐったりとしながら大きく深呼吸、いや過呼吸をしていた。
その様子を呆然とみつめる疾風は、梨理もあんなことするのかと妄想しながら恐怖を顔に表していた。
梨理は梨理で、自分はあんなことしないよ~と疾風に目で訴えていた。
その四人を端から見守る鋭美の位置はとてつもなく曖昧なものだった。
「まぁいいや、いつくらいにここを出る?」
「そうだな~・・・・・」「・・・・・明日にはでるわよ」
「了解、しばらくは自由に動いてくれて良いんだけど、また集まる時は僕か『道敷大神』が行くと思うから」
「二人一緒とかわないの?」
何を期待してかきらきらした子供みたいな瞳を向けてくる、木根と梨理。
この二人の考えが何となく分かった鋭美は顔をほんのりと染めて、
「行くわけないでしょ!だいたいなんで私があんな無愛想な奴に・・・・・!!」
「無愛想で悪かったな・・・・・まったく命を一つ削ってまでここに戻ってきたっていうのに酷い出迎えだな」
感情の全く籠もってない怒りの声が鋭美の後方下部の方から聞こえた。
振り向くと、幾分か小さくなった『道敷大神』がそこにいた、いやどう考えても小さくなっている。
周りはその姿を見て凍り付いたように動かない、それをみて嫌な気になったのかと思った『道敷大神』は、
「みんな俺がきら・・・・・・・」
「「「「「かわいいっ!!」」」」」
ハモッた、綺麗にみんな同じ事を考えていたようで、予想外の考えをしていた一人は呆然としていた。
その後、五人に詰問され続けた『道敷大神』が体を休める事になったのは、日が昇ってからだった。