:角理の覚醒
「『才気』にはそれぞれの力を増幅させる為の『情』というものが存在するって知ってたかしら?」
「いえ、そのようなことは知りませんでした・・・・・・・『情』とはどういうものなんでしょうか?」
「そうね、例えば私の場合を取ってみるとね、『肯定の意思』と『望む心』なの」
紗代は近くに置いていた黒板にその二つを書く。
「『情』には陰陽の二種類があるの、この場合陰の部分は『肯定の意思』なんだけどね、陰は統一されたものなの」
「それは一体どういう事ですか?」
角理が首を捻っている、紗代は自分の手をかざしてその上に水を収束させる。
「陰は海派生の『才気』を持っている全ての者の情にあたり、自分の行動に一変の不安も躊躇いも無くなった場合に働くのよ」
紗代は水を落として黒板に書いてある『肯定の意思』の下に、陰、と書く。
余談だが落とした水は、大きい男物の服の真上に落ちて、それにしみこんでいた。
「そしてもう一つ、陽の『才気』、これがとても厄介なものなんだよ、何しろ自分でしか感じる事が出来ないからね」
紗代は黒板の『望む心』の下に、陽、それから、厄介モノ、と書き加えた。
「私の場合は特殊な事で感じたんだけど、本来ならいろんな経験していく内にわかっていくもんなんだけど・・・・・」
黒板に書いてある二つの間に大小関係を表す記号が書き加えられる。
「陰と陽、どちらが強いかと言われればそれはもちろん修得困難な陽の方になる」
「どの程度の違いが出るんですか?」
「普通の力を1とするとね、陰ではその十倍程度、陽ではさらにその十倍!・・・・まぁ人それぞれの誤差はあるけどね」
紗代は黒板に数字を付け加える。
「私が知る限りでは、陰でおおよそ二十倍程度、陽ではそれに加えて百倍程度の力の上昇を知っているわ」
「それは個人的な見解なんでしょうか?それとも何かそういう計るものがあるのでしょうか?」
「いいえ、前のボスがね・・・・・あ、ここも一応組織なんだよ、それでね、そのボスがそういうのに詳しくてね」
「それでそのボスはもういないんですか?」
「生憎死んだ訳じゃないけどね、組織を去ったのは事実よ」
紗代は別段気にした風もなく話す。
本来なら組織を抜けた者はその組織に何らかの追っ手を付けられる事が多いのだがそんなことしているようではなかった。
「話を戻すよ、あなたにはまず『情』を知って貰う事といつでも出せるようにして貰うわよ」
「でもそんな事知らなかったから・・・・・どうすれば良いんですか?」
「一つは簡単よ、だってみんな統一されてるんですからね、まず陰の『強い束縛』を身につけて貰います」
「それはどんな感じの事なんですか?」
「胸を締め付けられるような感覚やら、何かに支配されているような感じよ」
角理はふむふむと頷いている。
出来そうかと紗代が聞くと、まったくもって不本意だと言いたげな顔で、
「出来そうです」
っと返してきた。
紗代はそれをみて角理に少し才能があると理解した。
「じゃあ、始めようかしら、初めてそれを考えてすれば絶対外的影響が出るからすぐわかる」
始まった瞬間、小屋を真上から白い雷が襲った。