:天使と悪魔
章わけにはあんまりこだわってないです;
すいません
一閃は立ち止まっていた。
鋭美、『道敷大神』の牽制に行った後だったのだが、二人はとりあえずはブラックの者。
目の前には確実にそれ以上と捉えるべき存在が立っていた。
「遅かったね~、もうちょっと簡単にあしらって来るかと思ったよ、まぁ待つのは嫌いだから早く来てくれて嬉しいけどね」
「紅葉、貴様どうやってここにきた、俺の感覚が正しければ瞬間移動をしているような感じだったぞ」
「正解!さすがは一閃だね、そう私は瞬間移動してきたんだ・・・・・これだけでもう、私が何をするかわかるよね?」
「俺を殺しに来た、これでまず間違いないだろう、だが問題はそこじゃないんだよ」
「私達にあなたを殺せるような術は無いはず、なら何故出てきたか・・・・それが聞きたいんでしょう?」
紅葉は一閃を見透かしたかのように見る、一閃はその目を普通に見返した。
二人の間の地面がひび割れた。
「聞きたいとは思わない、俺に適わない事がわからない奴らだって『そこ』にいるさ、ただ少し失望したんだよ」
「失望?それは私があなたの慈悲に甘えていない事を言っているのかしら?言っちゃ悪いけど迷惑だったわ」
「そういう割には随分と積極的に入ってきたじゃないか、それともそれはお前の意思じゃなかったとでもいいたいのか?」
「そうよ、元の『私』がそれを望んだからそうしたまで、そっちの意思に反すれば動きが鈍るからね」
二人の視線が外れる事はない、二人とも、瞬きの回数すらも減らして見つめ合っている。
「あなたがこんな愚行さえしなければ『私』は幸せだったのに、あなたはやってはいけないことをやってしまったの」
「俺の目的が貴様らにわかるとは思えんな、少なくともその目的の真相には誰も辿り着けないはずだ」
「あら、それは何でかしら?そんな大言を吐くには相手を見た方がいいわよ、もしかしたら私に心を覗く能力があるかもしれない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・目的はなんだ?」
「さっきあなたが言ったんでしょう?私はあなたを殺す為に来たのよ、それが私の最終目的」
「そうか、質問が悪かったな・・・・・・・どうやって?」
二人の間のひび割れた地面はビシビシと不快な音をたてながら軋みに軋んでいる。
「あなた、それ代替物でしょう?」
一閃はその言葉に初めて眉を寄せる。
「私以上だったあなたがその『存在』をこの世界に顕現すればなんらかの影響が出てしまう」
「だが、俺はお前とは違うぞ、なんていっても俺は堕『天使』、いわゆる『悪魔』だからな」
「『悪魔』も、流石に世界の影響は考えると聞いたわ、そりゃそうよね世界が変わると自分たちはどうなるか分からない」
「愚かな『悪魔』もいるかもしれないだろう、完全に無いとは言い切れない」
「でもそれは代替物でしょう?見たわよ、あなたがいた学校の屋上、死んだように眠る『本物』のあなたを」
視線が揺らぐ、いや、間に在る空間がゆがんで視線が強制的にゆがまされているようだ。
その歪みはだんだんと大きくなっていき最終的にはこの世界から隔絶された広い空間となった。
一閃は初めて視線を外して、辺りを確かめる。
「ここは・・・・・・貴様、何をする気だ?」
「私?私は『私』を召還するのよ、でも世界を歪ませる事は主の意思に反する、ならばあなたをこちらに持ってくるまでのこと」
「ということはここは『天界』で間違いないのか?俺がいた頃と違って随分と殺風景になったものだな」
「『天界』ではないわ・・・・・もう、あなたの存在は『天界』の許容範囲ですら凌駕してしまうほどに大きくなってしまったから」
一閃が視線を戻して、二人はまた見つめ合うことになる。
「・・・・・『現世』と『天界』の狭間だな、考えられるのはもうそこしかない」
「正解!やっぱり、あなたは最高ね一閃・・・・・これからあなたを戦えると思えると・・・・ゾクゾクしちゃうわ」
紅葉の目がドロドロと染まっていく。
「それでも私がここに顕現できる時間は最大で10秒、これであなたを倒したいわ・・・・・でも、無理でしょう?」
「ああ無理だ、そんな短時間で俺を殺せる野郎は一人もいない」
「殺せる人がいるってことね・・・・」
その言葉に一閃が初めて殺意を表に出した。
それはあたりの空間を歪ませ、何もない虚空にひびをいれるほどに強力なものだった。
「何か知っているのか・・・・・・?」
「さぁ、どうでしょうかね、私を倒せば聞けるかもしれないわね・・・・・・・加減出来た時の話ですが!」
途端、辺りの空気が清浄になった。
そう、決して有り得ないほど正常で清らかで、そしてどこまでも濃い、濃すぎる殺意があたりに充満する。
「行きますよ一閃、せいぜい瀕死にまではしてみたいですかね!!」
「っふ!やってみやがれ!『天使』の分際が!」
有り得ないほど澄み切った殺すという気持ちが込められた純白の炎が一閃に飛びかかる。
対してそれに対抗するのは、これまた有り得ないほど濁りきった殺す気持ちが込められた真紅の炎。
白と紅、善と悪、『天使』と『悪魔』。
互いに相容れぬ者同士の戦いは今、切っておとされた。




