:天罰、地獄の盾
『インデペンデンス』の屋上に十人前後の屈強な猛者が集まっていた。
「今日集まって貰ったのは他でもない、『悪魔の槍』が攻撃されて、ボス大井 雲明が行方不明になっているからだ」
「それが何か問題なのか?」
机の一方に皇が座って、もう一方に残りの全員が座っている。
その内の一人は『紡ぎの糸』に働きかけているチームのリーダーで、李 瞬といい、『地爆』を持つ。
地を爆発させることが出来る能力で、使い方次第ではかなりの応用が利く代物だ。
「いいか『悪魔の槍』だ、曲がりなりにも『悪魔の正義』の組織が攻撃を受けたわけだ、これは『七皇』の余裕の象徴だ」
「なるほど・・・・・やつらは俺達のことはさして驚異じゃないと見ているわけだな・・・・それで、どうするんだ?」
「今すぐにでも攻め込みたいんだが、いかんせん奴らの身を隠す能力は桁違いだ、出てくるのを待つしかないんだ」
「瞑を以てしても無理なのか?」
皇は残念をうに首を振る。
そこに瞑が入ってきた。
「皇様、報告がございます」
いつになく感情を表に出して、焦燥感を抱いているようだった。
「どうしたんだ?」
「実は、我々『天罰』と目的を一緒にしていると思われる組織が見つかりました・・・・」
「どこだ!それは!」
瞑はそこで口を紡ぐ、どうやら言いたくないらしかった。
だが言って貰わねば情報の交換などが出来ない、故に無理矢理にも聞き出そうとする。
「頼むよ、瞑・・・・どうしても教えて欲しいんだよ」
皇は皇子に人格を変える。
瞑はとても困ったように数歩後ずさる。
「卑怯です・・・!そんなの・・・・・・そんなことされたら言うしかないですか・・・!」
「言って貰いたいんだからしてるんだよ・・・さぁ、言ってくれないかな?」
どんどんと顔を寄せていく皇子、後ろに下がっていく瞑。
だがやがて壁にぶち当たり、下がる事が出来なくなった。
皇子はにこりとほほえみ、素早く、両手で逃げ道をふさぐ。
「瞑、僕の頼みでも聞けない?」
「あぅ・・・・・・・絶対、絶対私が漏らしたのなんていわないでくださいよね!!」
「わかってるよ、俺がそんな悪者に見える?」
「うぅ・・・・・ん・・・・えっとね私の妹知ってるでしょ?そこの組織がそうなのよ、今攻める準備を始めてるって言ってるわ」
「ありがとう、瞑」
皇子は軽く唇にキスした後、自身を引っ込める。
「瞑ありがとう・・・・でゎ、お前にはこれから任務を与える、妹の所に行ってその組織を調べてきてくれ」
「でも・・・・何か隠してるみたいでいやだな・・・・」
今度は皇はそのままの状態で瞑の顎に軽く手を添えて、優しく上を向かせる。
「大丈夫さ、俺は俺じゃないときでも約束はちゃんと護る・・それはお前が一番良く知っているだろう?」
そして軽いキスをおでこにする。
瞑は焦った表情を消して、今度は自分から皇の唇を奪う。
そのキスは10分くらい続いて、やっと皇を解放する瞑。
「行ってこい」
「任せといて・・・・・・皇、行ってくるね・・・・・・皇子」
そういって瞑は駆けていった。
「相変わらずアツアツだな、見てるこっちが火傷しそうだよ・・・・・それで、その組織には本当に何もしないのか?」
「あぁ、約束だからな、だが場所は突き止める、狙っている以上何か知っているはずだ、なら『八皇』が現れることもあるはずだ」
「しばらくは待機・・・・・ですかね?」
皇は静かに頷く。
反対側では久々の休みに喜喜としていた。
「嫌な感じがするな・・・・・・・何も起こらなければいいのだがな」
皇はそのまま、椅子に座り、寝てしまった。
再砂は『地獄の使者』の真上、空、いや空中に立っていた。
「感じる・・・・嫌な奴らだ・・・・・・・・・この戦いで、俺は死ぬかもしれんな」
その手には一粒の丸薬が握られていた。
「まぁ、護る為には仕方のないことだ・・・・・・だがこの丸薬を飲めば最後、俺は俺じゃなくなる」
一つで数億もまかなえるような気配が周りから迫ってきている。
再砂は丸薬を歯に挟む。
「だがそれでいい、俺は、俺がしなければならないことをするだけだ」
それをかみ砕いた。