:折れた槍、ブラックとは
『悪魔の槍』本部があった場所はもう、ぼろぼろで崩れ果てていた。
それの引導を渡した本人と、本来護るべきはずの者は互いに建物を壊しながら死闘を演じてた。
「槍を右手に、先端を針の如く、神速の突きを再現・・・大剣を左手に、軽量、薄さは紙、強度はダイヤモンド」
「そんなもの効かないよ」
雲明の右手に握られた神速で突き出される槍を、光速で躱す鋭美。
時折左手の大剣を混ぜるが、鋭美には見えているかのようにさけられてしまう。
だが、鋭美には傷がいくつかついている。
「っち、他にもなに仕掛けているな」
鋭美が距離を開けると同時に雲明が言う。
「弓をこの手に、矢は一で百を、全ては追跡、当たれば爆発」
水が槍から弓に代わり、大剣はそのまま矢となる。
躊躇わず放つ。
鋭美に当たるまでは一瞬だが、その間に大剣はいくつにも分裂して個々に鋭美を襲う。
「それは厄介だね~・・・・まぁ、当たらないんだけどね」
当たらない確実な自身があり、鋭美には確実に避けられる能力があった。
だが――――――。
「矢は追跡だ、さらに、一つ一つは展開、面として敵を襲え」
矢の軌道がかわり碁盤目状に並列になり、展開して速度はそのままで、開いた傘のようになる。
何処に逃げようが面は躱すことが出来ない・・・・・故に、鋭美は雷を自身にまとわりつかせ、そのまま、面を突破する。
向こうではやはりボウッとした雲明がそこに悠然と立っていた。
「その『才気』、いろんな武器を使えるとは、反則じゃないですか?」
「反則じゃないですよ、こういう『才気』なんですからこういうもんなんです、それよりよそ見はいけませんね」
鋭美を背後から大剣が襲う。
よく見れば、大剣にはいくつもの繋ぎ合わさった後が残っており、それが先ほどの矢の集まりだとわかる。
「卑怯な手を・・・!」
「先手必勝を主とするあなたの言う事じゃないでしょ、それにこちらは注意をしましたよ」
「ッチ!めんどくさいな、周りに迷惑とかいろいろ考えてたけどやめだ!一瞬で殺してやる!」
鋭美がイラつきと共に自身が放てる最高の『才気』を解放する。
ゴロゴロと雷が天空で鳴り響く。
「水は・・・・・・・私の周りにつき二層、外層は鉄分をおおく含ませろ」
「そんな防御簡単に突破して見せてやろう、そして二度と僕らに会いたくないような精神状態にさせてやる!」
雷鳴がどんどんと強く大きくなっていく。
「結界を模せ、出来るだけ多くの数だ、すべてを強化、貫通しない、雷の一部を浸食しても構わない」
水が雲明の周りを薄く何重にも張られていき、さらには天空を覆う、雷鳴を響かせる雲にまで覆い被さる。
鋭美にはその行動がとてつもなく腹が立ってしまったようだ。
「無駄だあああああああああああああああああ!!!!!!!」
一瞬、あたり一面、目視で『悪魔の槍』を確認できる程度に遠くにまで光が景色を、飲み込んだ。
「生死は確認しないよ、生きているとは思わないからね・・・・でも、もし生きているというのであれば!!」
鋭美の体中を雷が通り、同化する。
「追ってきな、また・・・返り討ちにしてやろう・・・!」
鋭美はその場から、空気に溶けるように消え去った。
雷が直撃した場所、そこにはいくつかの膨らみがあった。
ふくらみが動いて・・・――――――。
さっきまでいた場所に変わらず彼が立っていた。
「本気だったか?」
「いや、ちょっとは加減したよ~、この世界が滅んだら僕と一閃のラブコメが始まらないでしょ」
鋭美にしては普通の声質で返事をしてきた。
「もとからそんなもんない、誰がお前なんかとラブコメを展開するかよ、演じさせられるこっちの身にもなれよ」
「君じゃないよ『道敷大神』」
「俺は何も言っていない」
「俺だよ・・・・ば~か・・・・・!!」
鋭美が吹っ飛ぶ、すぐに『才気』を展開しようとした『道敷大神』も展開する前に飛ばされた。
二人が立っていた場所には一閃が拳を振った状態で止まっていた。
「少々、見過ごせない単語が出てきたから制裁を加えようと思って参上した・・・・なんちゃって」
「そんなことのためにか・・・・『阿修羅』」
「そんなことのためにだ、『道敷大神』・・・俺が来たのはそっちのほうだがな、鋭美」
一閃は『道敷大神』を無視して、鋭美の方にむく。
「僕が・・・・何か言ったかい?それとも、そういう口実で僕に会いに来てくれたのかな?」
「この世界が滅んだら・・・・っと言ったな、その脆弱な力でよくもそんなたいそれたことが言えるな!」
「ブラックである僕にそれが出来ないとでも思うの?」
「ブラックごときの力でそんなことが出来るとでも言いたいのか?」
鋭美の質問をオウム返ししていく一閃。
「一閃、あんたもブラックでしょ、僕と同じなのに何でそんなに自分を下げるような事いうのかな?」
「そうだな、ここは見逃しといてやる、殺したい奴もいるが時期じゃない、だが、世界はお前ごときでは滅ぼせん」
それだけ言って、一閃は帰っていった。
「結局何しに来たんだろうな・・・・ん、華鈴からの招集だ、行くぞ、俺が案内する」
「わかった、いくよ」
鋭美は不機嫌な顔をより一層不機嫌にして、先に行く『道敷大神』の後を追った。
そろそろそれぞれの才気の説明でもしようかなぁ・・・




