:それぞれの目標と鉄壁の砂
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旧立帝國高校特別クラス、その部屋にまた一人仲間だったものが入ってくる、そして仲間になるであろう。
「久しぶりだな昴」
真っ先に声を掛けたのは元帥代理の麗香ではなく、一組織『覇光』の副隊長、彰だった。
その横では『近衛』の三番手冥が昴を確認し、軽く会釈する。
「よくきたわね昴、おかえりなさい」
多分自分が組織を抜けて翔汰に会いに行った事を知らない麗香に対して少々悪い気がした昴は、
「心強い人が後からくるよ~」
とだけ言って自分の席に着いた。
皆別段興味も持たずそれを流す。
それがちょっと不思議だったのか、何故かと訪ねると答えは一瞬に彰から返ってきた。
「翔汰だろ、もうあいつしか考えられんからな」
「水鏡さんもぬけたのでは?それに剛毅さんだって」
「水鏡は帰ってきてる途中だ、剛毅は知らないが、再砂ならやってくれるさ」
「そうですか・・・」
「そうよ、じゃあもう一度話すのもしんどいから今度はあんた達の意見を聞こうかしら」
麗香はそう言って彰、冥、そして昴を順に目で見る。
彰は、ダルい事は嫌だ、俺は命令に従うだけだ、などという雰囲気を大いに醸し出して黙りこむ。
「そうですね、一閃様も抜け、麗香様もお忙しいようですから、『近衛』を・・・・私に任せてくれませんか?」
「いいわよ、それは私も頼もうと思ったの、私の目的遂行にはちょっと弊害になるかもしれないから」
「謹んでお受けいたします、何かあればすぐに呼んでください」
冥はやはり軽く頭を下げる。
だが、彰は知っていた、深く頭を下げればバランスを保てないようなドジッ子だということを・・・。
その後何故か頭をはたかれる彰。
「そんなわけありません」
「心を読むな、心を・・・・!」
麗香は最後に残った昴をみる。
「昴、あなたの意見、目的はどうかしら?」
正直なところ今の昴には是には答える事はできない。
『闇の影』が潰れて、この立場にいることさえ不安に思っている昴にはこれといった意見や目的を提示出来るわけがなかった。
そしてなによりここには、大切な、彼が近くにいなかったから。
でも、言いたい事はあった。
「わかりません、ですが・・・私は翔汰についていきます、何があろうと、絶対に離れたりなんかしたくない!」
「そう・・・・・いい目標だと思うわ、頑張ってね」
話は一段落、そしてまた昴のために麗香が自分の目的を話そうとしたところで、廊下からどたばたという雑音が響き始めた。
「彰さん!!彰さんはいますか!!」
多分全速力で走ってきたのだろう、ゼィゼィと荒い息をで肩を上下させながら『覇光』の構成員が何人か入ってきた。
「どうしたんだおまえら?水鏡はどうした?」
彰は入ってきたやつに近寄る。
「彰さん!すぐに向かってください!水鏡さんが呼んでいます!」
「何かあったのか?」
「『紡ぎの糸』の追っ手を撃退しています、いつまで保つかわかりません、それに・・・」
「なんだ?」
「水鏡さんに彰さんを呼んでくるように言われました」
それを聞いた時、微かだが彰の顔がゆるんだ。
それをばれないように隠して、顔を引き締める。
「わかった、すぐいく、どこらへんだ?」
「土蜥蜴の丘です!」
「わかった、お前等は待機してろ、俺が向かうからその間に、水鏡の居場所を元通りにしておけ」
素早く身を翻しその部屋を出ていく、その後を冥が無言で追いかける。
「久しぶり、と言うには少々凶暴な顔だな」
「お前が瞬夜か」「あなたが瞬夜ね」
まったくもって揺るがなく完璧に息が合った悪魔のようなペアを前にしてさえ霞むことさえない存在感を放つ少女の姿。
「あぁ、今は再砂という名で通ってるんだ、だから再砂と呼んでくれ」
その存在感はどのように考えてもこの世界に存在していいものの範疇を越えている。
その事に気付いた二人は少し黙りこむ。
その様子が予想通りだったのか、不敵な笑みを浮かべて再砂は一歩前にでる。
「っで、『八皇』屈指のペアがこんな弱小、それに世界になんの影響も及ぼさないような組織に何のようだ?」
「それは・・・・」「この組織を潰すため」
「潰す・・・・いったいどこにそんな必要があるんだ?」
ここは『地獄の使者』の領域から大きく外れて、よほど強力な探知能力を保有した、光や闇系の『才気』でないと気づけない場所。
それを『才気』を極力抑えている状態で、まったく『才気』を感じさせない再砂が感づいてしかも接敵してきたのだ。
「この組織は一閃が戻る為のものだと報告されている」
「早めに潰しておかないと戻られると厄介でたまりませんわ」
「確か名前は・・・穂蔵 臼、穂蔵 木根だったか、『八皇』で間違いないか?」
「それも正解ではあるけど、満点ではないですよ」
「今は一人賭けているので必然的に『七皇』と名乗っています」
「そうか、『七皇』か、なら殺す理由はなくなったか・・・殺したくない、さっさと去れ」
再砂はまるでゴミをはたくかのように手であっちにいけというような仕草をとる。
その仕草がそうとう癪に障ったのか臼は地面を踏みつけた。
次に来るのは衝撃、そして地面より岩が突出して再砂に襲いかかる、その数、数百。
だがそれを大きく下がるだけで躱す再砂。
「この程度では領地を踏む事さえ無理だ」
「私達をこの程度扱い、少々頭に来ましたよ、三下!」
襲うのは雨のように降り注ぐ水の槍。
あまりの威力のため、地面や襲いかかった槍を砕き、土煙がまう。
「やったか!?」
いままでこれで少なくとも傷をつけなかった事はない。
華鈴でさえ、己の能力を駆使しなければ防ぐ事は出来なかった、そんなモノを・・・、
「これだけか?」
一瞬、二人の脳裏に悪魔のような恐怖の感覚が埋め尽くした。
そしてそれは必然的に土煙の中にいるものを恐怖の対象と認めてしまった。
「ふんっ・・・所詮はこの程度か、今度は断言しよう、お前達は絶対に俺を越える事は出来ない!」
再砂が腕を振りかざすと、地面よりあり得ない量の砂が二人を襲う。
「私は『盾』、『地獄の使者』を他一切全てから守り抜く使命を請け負った再砂だ!!」