:再び集まろうとする仲間達
水鏡は彰に『地獄の使者』に戻っているように指示を出した。
自分もすぐに戻ると言って。
「やっと戻れるな、『地獄の使者』に・・・」
「そうね、私は一刻も早く戻りたかったよ」
彰と冥は、帰りの路についていた。
「・・あの時、何で水鏡に力を貸したんだ?」
「気付いてたの?」
「もちろんだろ、俺を誰だと思ってるんだ?」
「私を怒るの?」
「いや、ただ、その動機だけは知っておきたいと思っただけだ、どちらにせよ、俺は負ける気だったんだが・・・」
彰は淡々と言うが、事実あの水鏡でさえかなわないような力を彰は持っていた。
だが、それは使わないようにしていたのだ。
「彰にも気付いて欲しかったのよ、あなたが水鏡さんに気付いて欲しかったことと同じ事を私はあなたに」
冥はそれだけ言って歩くスピードを速めた、その耳が赤く染まっているのを必死に隠しながら。
彰は冥の歩くスピードに自分のスピードを会わせた。
「そうか、ありがとな」
そのまま静かに歩いて行く、二人仲良く、寄り添いながら。
旧立帝國高校の特別クラスには今二人の人間がいた。
「ここの人数も減ったな・・・なぁ、麗香」
部屋のすみ、いつもの場所にいるほうがボスの隣、つまりはまた、いつもの席にいるほうに声を掛ける。
「そういうこと言わないの、再砂、私は私の目的を果たせればそれでいいのよ、それ以外は余分な行動」
「良い考えだ、でわ俺もそれに同乗させて貰おう、俺の目的は例えどんなことがあったとしても、『地獄の使者』を守り抜くということだ」
俺もソレは守る、そうだけ言って、窓の外を眺める。
「きたな・・・」
ボソッと呟いたそれを麗香はきくことが出来なかった。
そこに一組のカップルがはいってきた。
「久しぶりだな、麗香」
「お久しぶりです、麗香様、彰と冥、ただいま戻りました」
正規の『地獄の使者』の構成員でわない二人だった。
彰は我が物顔で一つの席を陣取る。
その後ろで控えめに冥は立っていた。
「えらく違うんだな・・・性格的に」
再砂はボソッとそんなことを呟いた。
「瞬夜がそんなことを言うなんてな」
「彰、俺の名前は瞬夜じゃ無くなったわ、俺は再砂、真『地獄の使者』の最強の守護者だ!」
彰は呆然と見つめていたが、全てを理解したように頷くと微かに笑った。
「っで、何のようかしら?彰、それに冥」
「良い知らせだ、水鏡が帰ってくる、『覇光』の復活だ」
故に、と続け、
「俺は『覇光』に、冥は『近衛』にいく・・・これからもよろしくな」
ソレを聞いた麗香は、安心したように胸をなで下ろして、
「よかった・・・これで私は私の目的に集中できる、ありがとね、彰、冥」
「麗香様、目的とはなんですか?」
冥が聞くと、先に再砂が反応して、
「俺はソレを聞くわけにはいかない、だから外にいる・・・終わったら呼びに来い、彰お前が一人でな」
「俺か?・・・わかった、終わったらいく、何処にいるんだ?」
「そだな、じゃあ俺の部屋で待っている、必ず一人で来いよ」
そう言って入口から出ようとして、冥の横を通るとき、冥だけに聞こえるように、
「お前にとって不利益はないことだ、不安にならなくていいぞ」
そうだけ言って全速力で駆けていった。
心持ち部屋の空気が軽くなったみたいだ。
「自分の砂まで離さなければならないほどのことなのか?」
「??・・・まぁいいわ、二人には聞いといて貰う、私の目的、私の意思を」
麗香は静かに話し始めた。
「まず初めに、私の目的、それは、一閃を守ること、一閃が守ろうとした全てを守るということ」
胸に手を当て心持ち顔を赤らめた麗香が言う。
彰と冥はソレを黙って聞く。
話は、始まったばかりだ。
「もう一度いきてやろう、なんだって?・・・・水鏡」
「大介さん、俺は『地獄の使者』に戻ります、『紡ぎの糸』を抜けます」
ゴクゴク普通のカフェの店に二人はいた。
一人は何処の誰でも知っているような有名人、『紡ぎの糸』総指揮大涯 大介。
もう一人は最近『紡ぎの糸』に入った元『地獄の使者』『覇光』のボス、大空 水鏡。
二人は今あることについて話し合っている。
「『紡ぎの糸』は繋がりを重んじる組織だ、故に脱退など認められないと言っているだろう?」
大介はウェイトレスを一人呼んで、コーヒーを注文する。
「お前もいるか?」
「結構です」
後甘いケーキも頼む、そう言ってまた正面の水鏡を見る。
「何故急に抜けたくなったんだ?そもそもあちらで地位が無くなったからきたのであろう?何故戻る必要がある?」
大涯の目は一瞬たりとも水鏡から離されない、そう、怖いくらいに。
「俺はやるべき事があったんです、だから戻りたい」
「そんな理由で戻りたいのか?そも、もしそのやるべきことが出来なかったらどうする?また逃げてくるのか?」
ウェイトレスがケーキとコーヒーを運んできた、大涯はソレらを受け取り、コーヒーに砂糖とミルクをいれる。
それでも目だけは此方を向いているようだった。
「どうするんだ?多少力を付けたようだが所詮はその程度、俺クラスかそれ以上のやつらがくれば楽に負けてしまう力だ」
「・・・・・・・・・・それでも、戻りたいんです」
「ふむ、それほどの硬い決意か、だが、もう少し早くにそれに気が付いていればよかったな、今ではお前は俺の部下だ」
コーヒーを啜り、少し間をおいてから、
「優秀な部下を見放すほど、俺は余裕はない」
「ありがとうございます、ですがそれでも俺は行きます、なんと言われようが、例え許可されなくともいきます!」
「『紡ぎの糸』を敵に回すということか?」
いつになく敵意を剥き出しにした目が水鏡を射抜く。
その威圧感に多少後ずさる水鏡。
「別段自慢するわけではないんだが、俺の組織はどこに居ても必ずお前をみつけだす、そして必ず追いつめるだろう・・それでも行くか?」
「・・・部下達はもう戻る道に付いて戻っている最中です、後は俺だけ、もし攻撃するというのであれば俺は、戦います」
多少怯んではいるがそれでも精一杯力を篭めて睨み返す水鏡。
それを見た大介は、楽しそうに笑い、ケーキを頬張る。
「いいだろう、ならばその指揮は俺がとらせて貰おう、気を付けろよ、お前が背負っているのは、仲間の命だ」
大介は電話を掛ける。
《大涯だ、至急多くの兵を募ってくれ、出来るだけ強いのを頼んだぞ!》
その後二、三交わした後電話を切る。
「何をしてるんだ水鏡、早く行かねばお前の仲間が死んでしまうぞ」
「そんなに早くあつまるわけが・・・」
「水鏡、集まるからこそ『紡ぎの糸』は『悪魔の正義』に対抗できたんだ、それはいつも変わることのないこの組織を強みだ」
不敵に笑い、勘定を済ませる。
「それに俺はこう見えて用心深いんだよ、気をつけろ、精鋭しか集めてないからな」
水鏡がハッと気が付くと辺りを囲まれていた。
すぐさま雷を脚と同化させる。
「水鏡、俺を楽しませろよ、さもなくばお前は死に、やりたいことは永遠に為せなくなるからな」
水鏡の姿は消え、何人かの精鋭部隊は吹き飛んだ。
大介は倒れる精鋭達の真ん中で鬼の様に立つ水鏡に目を細めながら、
「戻る気は・・・ないんだな?」
「はい、すこしの間でしたが、大介さん、ありがとうございました!」
「フン・・・!さっさと行け、俺はまだお前を諦めたわけじゃない、帰るまで仲間を大切にしろよ」
『地獄の使者』の治安地域線をこそこそとまたぐ女性がいた。
「まだ、ばれてないよね・・」
ゆうっくりゆうっくり入っていく影の足を砂が捕らえる。
「おかえり、昴・・・翔汰はどうなった?」
再砂は笑顔で昴を迎える。
昴は多少引きつりながら、それをあんまり出さないようにして再砂を見る。
「大丈夫だ、俺はお前が出ていった時から知ってる、それよりも翔汰はどうした?」
「必ず戻ってくるわ」
昴はそうとだけ言って表情をかたくする。
「なるほど、それ以上は聞かないで欲しいってわけか、安心しろ無粋な真似はしねぇよ」
再砂は昴を捕まえていた砂を離す。
「早く自分の席に行け、そこでこれからのことを麗香が話している、それでも聞いてこれからどうするか考えるんだな!」
再砂の姿が消えると、昴は言われた通りに学校に行こうとするが、何かを思いだして、その足を違う方に向ける。