第四章:それぞれの想いと祭
予定より少し早く更新します!
何故かって?
たまたま両親がいなかったからですよ!
ハッピーです♪
でわ、楽しんでね♪
小屋には一閃、麗香、愛、大介がいる。
「良かった、無事に手紙が届けてくれたようだな、それと改めて久しぶりだな、大神、それから大涯も」
「ふん、お前も随分成長してるの、一人前に俺に一分隊をつかうとは、恐れ入ったぞ?」
「愛で良いって前から言ってるでしょ?・・・・・って誰かに同じ事言ったような・・・・・デジャブ?」
小屋の中にある二つのソファーの内の一つに、愛と大介は寄り添うようにしながら座っている。
もう一つのソファーには一閃と麗香が座っているが、一閃の方が麗香と適度な距離を取って座っている。だからといって近づいても拒むことはないのだろうが。
「それにしてもごめんなさいね、配下に目が行き届いてなくて、迷惑かけたでしょ?何か欲しいものとかあるかしら?」
愛は申し訳なさそうに頭を下げる。
もちろん先日までの『悪魔の正義』の偵察部隊の件である。愛は自分の事のように感じているが、実際裏で根回ししていたのは『紡ぎの糸』の重鎮だったらしい。
大介はもちろんそいつに徹底した罰を与えたが、おそらくもう解放されているだろう。
「別にいい、俺はアレが護れりゃそれでいいんだ、それに本気になったらアレくらい一瞬だ・・・・・と思うしな、まぁどうせ納得いかないだろうから貸し一つって事で」
一閃は自慢するようでもなく事実のようにそう言う。
「愛さん、祭りを私と回りませんか?」
「ええそうしましょう、でも待って、もう少しこの人のぬくもりを感じていたいの、もう少しだけ・・・・・」
愛はもう一度、今度は深くキスをしてから唇を離し、麗香と共に祭りに向かっていった。
残ったのは一閃と大介だけだ。
「まだ・・・・・護り続けていたのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、俺にはそれしか無いからな、大介こそどうなんだ?」
一閃は目の前の大介を直視し視線をはずさない。大介も離さずその真意を見透かそうとしている。まぁ一閃の心をのぞける人間などいるわけがないのだが。
「なんのことだ?」
「愛のことだよ、まだ思い続けているのか?てかさっきのを見た限りじゃあそうなんだろうな」
大介はそれにはしばらく間をおいて、
「当たり前だ、俺にもそれしかないんでな」
「護るハズだったものが自分と真逆の道に行ってもか?・・・・・いや、答えは当たり前だ、だな」
「あぁもちろんだ、もう彼奴も誰かを守れる人間になったという事さ、いいことだろ」
大介はおもむろに立ち上がる。
「誰か案内人が欲しいんだが・・・・・さすがに少し変わっているらしいからな、いい歳して迷子にはなりたくない」
「用意しよう、楽しい祭りだ、楽しんでくれ!」
大介は小屋を一人で出ていった。
一閃は携帯を取り出し、
《冥、今暇か?》
《何でございますか?一応祭りの見回りで忙しいんですが・・・・・ぃぇ、これは見回りというのか・・・・・》
最後の方はゴニョゴニョとした感じで聞こえないかった。
《誰かと見回っているのか?》
《えぇ・・・・・はい、『覇光』の彰と一緒にいますが・・・・・何か用事でございますか?用があるならすぐに向かいますが?》
《いや、誰かと一緒ならそっちを優先しろ・・・・・祭り、楽しめよ!どうせデートだろ!》
《え!いえ!ちがっ・・・・・!》
一閃は一方的に電話を切り空いてそうな人材を思い浮かべ、そして次なる番号をプッシュする。
《もしもし、こちらは・・・・・》
《空いてるだろ?『紡ぎの糸』の大介の案内役してくれないか?そんな暗いとこに引き籠もってると陰キャラのなっちまうぞ?》
《・・・・・まぁ空いてるのは確かですけど・・・・・なんかむかつく、ハイハイ回りますよ!回ればいいんでしょう!》
《ありがとうな、京くらいしか頼めるヤツが思い浮かばなかったんだ、よろしく頼む、すぐに正門前だ》
《りょーかい!りょーかい!やればいいんでしょ!》
《よしっ!切るぞ》
一閃が電話を切ろうとしたところで、向こうから、
《ちょ!いっせっ!待ちなさい!》
《どうしたんだ?》
《電話終わりのキス》
《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ、じゃあ切るぞ》
一閃は電話にキスして通話を切り、携帯をポケットにしまった。
旧立帝國高校の年に一度の最大文化行事、テオヤオムクイ今この辺り一帯を取り巻いている。
このテオヤオムクイは『悪魔の正義』や『紡ぎの糸』を中心とする多くの世界組織からいろんな人たちが来ることで有名だ。
この祭りは表向きには確かに、国際交流に最適で『紡ぎの糸』としても重要な行事だ。故に周りを見るだけで『紡ぎの糸』の名だたる構成員を見る事が出来る。
だが自由すぎる故の悪点もある、ひとたび裏を見ると、そこは泥沼の底とも言える。
出入りが完璧に自由で世界組織がなかなか攻め込めない地域でもあるからだ。
「そこで役に立つのが我ら『闇の影』です、意義は?」
誰も何も言わない、それはこの組織にとっては何よりもの肯定の意。
「さりげなく、客を護るのよ、じゃあ散って」
昴はそれだけ言って、表通りに出た。その顔には少しやつれた様子が見える。
「お疲れさん」
不意に後ろから声をかけられ、昴はすぐに後ろを向く。
「別に背後を取った訳じゃないぞ、ただちょっと一緒に祭りを見ないかなと思ってな、大丈夫だ聞かなかったから」
翔汰は壁にもたれて、カンジュースを昴に差し出していた。
昴はそれを受け取って、飲む。
「翔汰の飲みかけなら良かったのに・・・・・」
昴は気付いていないようだがこのカンジュースをあけていない。
「そうか?良かったなそれ飲みかけだぞ、遠回しに言えば間接キスだ」
翔汰は昴の手を取り飛び上がり、建物の屋根に昇った。
「久しぶりに、俺の『才気』を解放する、昴は特等席で見ていてくれ」
昴はゆっくりと頷くと、翔汰は己の『才気』『暴風』に力を込める。
普段は一閃の制止で本気を出すことは許されていないが、今回はサプライズをするようだ。それを昴には特等席で見せてくれるようだ。
「行くぜ!」
翔汰のかけ声と共に、雲の動きは変わる。
翔汰の頭上を中心に渦巻くような雲に変わり、真ん中にポッカリとあなが空いている。
そこから竜巻状に具現化した風が降りてくる。
翔汰はさらに力を込めてその風を制御し、頭上で球体に固定し、そこにさらに新たな風を加えていく。
すると、風の球体が小さく光り始める。
風が電子単位で分解し、それが何らかの反応で光を放っている。
翔汰はその状態を長時間維持し続け、そして、
「最後だ、これは中心にいる昴、お前だけに分かるものだ!行くぞ!!」
ハッ、と声を上げて翔汰は風の球体を分散させる。
その後完全に風が元に戻るくらいに、昴は幻想的な光景を目にする。
「キレイ・・・・・・!」
光っているものだけが残り昴を中心に広がるような無限の星のような光の世界。
それは一瞬だけだが、決して忘れることが出来るようなモノでは無かった。
「どうだった?」
「いい・・・・・すごく良かった、また今度許可が出ても私を呼んでくれる?」
昴は立ち上がり、翔汰に背を向ける。
その背中に翔汰の厚い胸板がつき、腕が昴を包む。
「当たり前だろ・・・・・お前以外の誰に見せるっていうんだよ」
そこで、昴の意識はとんだ。
「え?・・・・・そうか、そうだったな、こいつのはこうだった」
昴の『才気』はレッドラインの一、『夜陰』は自分の姿を闇や陰にとけ込ませることが出来るものだ。
だが『才気』の闇系統に属するこれは、能力に見合った反動がつく。
昴の場合、それは睡眠時間であり、これは『夜陰』を行使した代償だ。
翔汰は昴を担ぎ、『法度』に戻っていった。
「どうなの、一閃は心開いてくれた?」
「いえ、しかし会ったときよりよりは確実に良くなってますよ愛様」
祭りで一番人気の屋台に並びながら、愛と麗香は無駄話をしている。
「愛でいいわよ、さっきも言った気がするけど、彼は、一閃はよっぽどな闇を心に持ってるわね」
「闇・・・・・ですか?」
二人は少しずつ進む行列に着いていきながら、
「えぇ、しかもかなり深い所に・・・・・過去に嫌なことがあったのか、何か重大な悩み事のどちらかを・・・・・」
「はぁ・・・・・まぁその件は今度一閃様に問いただしてみます、今は祭りを楽しんでね、愛」
「もちろん!そのつもり!!」
麗香と愛はようやく屋台に入ることができた。
中では椅子が数席あるだけの質素なものだった。
「なるほどこれなら進みが遅い理由に納得がいく・・・・・もっと席を多くすればいいのに」
中から一人の男が出てきた。
見覚えがある、確か『覇光』の柿崎 彰、戦闘意外に関しては水鏡か一閃の言うことしか聞かない変わり者だ。
「いらっしゃい!何にしますか?」
麗香は無難に普通のラーメンを注文する。
「ラーメン一丁!!」
愛はしばらくメニューと睨めっこして、お奨め特大激辛ラーメンを注文した。
「良いのかい?食べきれなきゃ店の手伝い・・・・・もとい、恥ずかしい格好で客引きだぜ?」
「恥ずか・・・・・!い、いいわよ!この『悪魔の正義』を纏める愛がこんなところでまけを認めるわけにはいかない!やってやるわ!!」
愛は挑戦的な目で彰を真っ向から直視する。
彰はニヤッと笑って厨房に声をかける、こういう風に、
「死者一人!辛さはマックスだ!!」
そう言った後彰も厨房に戻っていく。
しばらくして水が運ばれてきた、一人の可愛い格好をしたウェイトレスによって、
「お水で~す!おまちどうさま!」
「・・・・・冥?あなた・・・・・」
冥は客が麗香と気付くと、慌てて厨房に戻っていった。
直後聞こえてくる怒声、そしてショボショボと冥が戻ってきた。
「ようこそ!お、お越しくださってありがとうなな、なのです!おいしいラーメン食べてげ、元気になっちゃってくく、くださいね!」
それだけ言うと顔を真っ赤にして、厨房に戻っていった、直後聞こえる頬をぶつような音。
また、しばらくして顔を腫らした彰が厨房から出てきた、その手には二つの大きさの違う器があった。
「へい、おまち!塩ラーメンと・・・・・」
麗香の前に小さい方のラーメンを置く、
「特大激辛ラーメン、地獄ラーメンだ!」
二周りもデカい器にもりもりに乗せられた具と一部分だけ見せつけるようにポッカリと間場所から覗く、凶悪な赤色。
「そちらのラーメンは一人で食べてろよ!見張りもつけるからな!」
「わ、分かったわよ!一人で食べるんでしょ!一人で!一人・・・・・で、ひ・・・・・」
愛は目の前に置かれた地獄ラーメンの迫力に圧倒される。
彰は厨房にいる冥を呼び、愛を見張っておくように言って、厨房に戻っていった。
「大丈夫ですか?」
「え!え、えぇ!大丈夫よこのくらい!」
食べ物に対して愛は震える手を押さえていた。
唐突に冥が思い出したように言う。
「これは準備段階でのお礼として手伝ってるんですが・・・・・罰の服何ですが、アレは死にたいくらい恥ずかしいですよ」
愛は意を決して箸で具を掴み、口に持っていく。
「ん?案外いけるじゃん!これなら全部食べ・・・・・」
「あの人性格は少し悪いですから、そろそろきますよ」
「え?何・・・・・が・・・――――――――――――!!!!!」
愛は水を大量に飲み干すが、
「ん~~~~~~ん~んんんん~~ん~ん~~~!!」
声を出せないらしい、立ち上がり急いで出口に行こうとする、その様子を見ていた冥が、
「あ!出るんならその上の文を読め!って言ってましたよ」
愛は一応確認の為、上に顔を上げる、そこに一枚の紙が貼ってあった。
{食べれず逃げるのは負け犬の所行、食って逃げるのが本当の勝ちである}
愛はしばらく呆然とその紙を眺めていたが、すぐに椅子に戻って続きを食べ始めた。
数分して、愛は自ら食べきれないと彰に宣言した。
「大介様ですね?お待たせしました、私は京といいます、あなたの案内役を任されました、よろしく」
京は大介に片手を差し出す、大介はそれを握り、
「大介でいい、こちらこそよろしくだ」
二人は校門から、中に入っていく。
「この祭りには初めてかしら?」
「いや、何回か来たことがあるんだが・・・・・すっかり忘れてしまった」
京はおおかたの大きな屋台を回ることにした。
「じゃあ一番人気のラーメン屋なんてどうかしら?並ぶのに苦労しますが結構有名のくせにこの日しかあかないんですよ、一食の価値ありです」
「そうだな、そう言えば昼はまだだった、どのくらいかかりそうだ?」
「場所はすぐそこですよ、ただ並ぶのに時間かかるだけです・・・・・ほら見えてきました」
まっすぐ前に、行列の出来た屋台があった、しかも、
「この店のラーメンをた・べ・て!」
そう甘い声で恥ずかしい格好をしながら客引きをする露出狂ともとれるような服装の女性がいた。
大介は固まる・・・・・何せその露出狂が愛だと分かったからだ。
「あの・・・・・行きたいですか?」
京は遠慮気味に大介に来た。
大介は、
「止めておく、他の場所を教えてくれ」
そう言ってその場から足ハヤに立ち去っていった。