バンフィールド家の悪魔
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大気圏に突入したレメアは、そのまま低空飛行で敵プラントへと突き進む。
敵プラント真上から降下すれば迎撃される可能性を考え、地上からの強襲となった。
ただ、敵も気付いていた。
隠していた監視衛星や、地上に配備していた監視装置ですぐにレメアの接近に気が付くと迎撃用の設備を展開する。
レメアのブリッジでは、無理な作戦を考えたクローディアに対して不満が噴出していた。
「ただの突撃を作戦なんて言いやがって!」
司令官がシートに座りながらそう言うと、オペレーターが悲鳴のような声で報告してくる。
「敵プラントは迎撃準備が完了していますよ!」
「だろうな。真上から降下していたら蜂の巣だった」
大気圏外から直接降下しようものなら、迎撃されて沈んでいただろう。
オペレーターが涙目になっている。
「空から攻撃して破壊すれば終わりでしょうが!」
責められた司令官が、帽子を深くかぶって視界を塞ぐ。
もう何も見たくないという態度だ。
「俺が知るかよ! 何が精鋭だ。ただの馬鹿の集まりだろうが」
すると、ブリッジに僅かにハウリング音がした後で、イェーガー部隊の隊長となったクローディアの声が響く。
『イェーガー部隊は全機出撃せよ』
オペレーターが目を見開く。
「こんな速度で航行している最中に、ハッチを開いて機動騎士を出せってか!?」
司令官は帽子を脱ぐと、クローディアにレメアの部隊は出せないと伝える。
「自殺行為だ。うちの連中は出撃させられない!」
『最初から貴官らを数に数えていない。お前たちは、我々を敵プラントに輸送するだけでいい』
戦力外の扱いを受けて、司令官は一度歯を食いしばる。
そして部下たちに命令する。
「ハッチを開けてやれ。――どうなっても知らんぞ」
◇
レメアのハッチが開くと、そこから次々にネヴァンが飛び出していく。
空中に放り出されたネヴァンたちが、重力下を想定した追加パックのブースターを点火して加速する。
さながらミサイルの先端に機動騎士を取り付けたような姿だ。
コックピット内にいるクローディアの体が、僅かにシートにめり込む。
「この加速度は、ネヴァンでも耐えられないか」
ある程度の加速度ならば、コックピット内のパイロットを完全に守ってくれる。
コックピットの性能を超えた加速度を出すネヴァンたちは、レメアを追い抜いて敵プラントを目指す。
配置された迎撃システムが起動して、砲台がいくつも出現するとネヴァンたちがその手に持ったライフルで攻撃を開始した。
光学兵器で砲台がいくつも潰されていく。
クローディアのコックピットには、部下たちからの報告が届き続ける。
『母艦の邪魔になる迎撃システムの排除を完了しました』
『敵プラントを視認』
『こちらを迎撃するつもりですね』
急接近するネヴァンたちに、敵プラントは持てる限りの装備で立ち向かうらしい。
クローディアが口角を上げる。
「我々を相手にするには足りなかったな。ブースターをパージ」
クローディアのネヴァンがバックパックのブースターを切り離す。
部下たちの機体も同様にブースターを切り離すと、ブースターのみが敵プラントへ向かっていく。
それらを迎撃する光学兵器の直撃を受けて、ブースターは爆発した。
クローディアのネヴァンが、バックパックの翼を広げると加速していく。
大気圏内だろうと空を飛ぶネヴァンたちが、更に低空飛行で敵プラントを目指した。
敵プラントに設置された光学兵器の砲台からは、レーザーが何千と発射されている。
それらは全て避けきれないが、受けたところでネヴァンの装甲に問題はない。
表面が熱されて赤くなるが、すぐに元の色を取り戻す。
光学兵器用の特殊処理が行われており、立ち止まって受け続けなければ問題なかった。
「お前ら、お出迎えだ」
砲台が無意味と判断した敵が、実弾兵器を装備した宇宙海賊向けの機動騎士――ゾークを出撃させる。
その手にはマシンガンや大型ライフルを持っており、ネヴァンに向けて発砲する。
銃撃が雨のように降り注ぐが、クローディアたちはそれらを避けて敵プラントへとたどり着いた。
クローディアのネヴァンが、ゾークの一機に蹴りを放って頭部を破壊した。
容赦なく倒れたゾークのコックピットに、ライフルを向けてビームを放って止めを刺す。
「――海賊共は皆殺しだ」
クローディアの冷たい声に、部下たちが「おう!」と答えて周囲に攻撃を開始した。
敵機に襲いかかると容赦なく撃破し、プラントに設置された砲台を次々に破壊していく。
◇
海賊の一人が、商品であるゾークのコックピットに乗り込む。
まだビニールのようなシートが張られた出荷前の機体だが、乗り込んできた敵と戦うために駆り出されていた。
「くそ。くそ!」
まだ若い海賊は、この世界で成り上がろうと決めて組織に入った。
海賊になって数年目で、まだ下働きをしていた。
いつか自分も海賊船に乗って、部下たちを率いる立場になりたい。
そんな夢を持っていた。
だが、そんな若い海賊はコックピットの中で震えている。
配属されたプラントは、組織の大事な収入源だ。
ここに配属されたという時点で、見込みありと判断されたようなもの。
一見すればただの工場だが、非常時ともなれば隠し砲台が出現して要塞へと変貌する自慢の基地だった。
だが、そんな基地から黒い煙が何ヶ所からも上がっている。
ガトリングガンを持ったゾークを操縦する若い海賊は、自分たちのプラントで暴れ回っている敵が誰か聞かされていた。
工場内の設備の隙間にできた通路を進みながら、敵に出くわさないことを願う。
「俺は組織で成り上がるんだ。こんなところで、あの悪魔共と遭遇するなんて冗談じゃない。俺はもっとビッグになる男なんだよ」
震えてガチガチと歯が音を立てていた。
このまま逃げてしまおうか?
そんな気持ちを何とか押し殺して、命令通りのポイントへと向かう。
曲がり角を通り過ぎると、味方のゾークが灰色の機体にレーザーブレードでコックピットを焼き貫かれていた。
「ひっ!」
こちらに気付く敵機。
だが、ベテランの乗るゾークが建物を飛び越えて、二機も増援に来てくれた。
ベテランが若い海賊に怒鳴るように指示を出す。
『立ち止まるな! 殺されるぞ!』
「は、はい!」
ガトリングガンを構える。
だが、味方がいては攻撃できないとトリガーを引くのをためらっていると、味方が襲いかかったネヴァンがレーザーブレードを振るう。
味方の一機が両腕を切断されると、蹴飛ばされた。
もう一機がマシンガンで攻撃するが、敵機の装甲が弾いてしまう。
敵機は左手に持ったシールドで、味方機のコックピットを殴りつけた。
装甲、そしてパワー。
どれもがゾークを圧倒する敵機の一撃は、味方機のコックピットを押し潰していた。
僅か一瞬の間に味方が二機もやられてしまった。
「あ――あぁぁぁ!!」
怯えて操縦桿のトリガーを反射で引いてしまうと、ゾークが持っていたガトリングガンが火を噴く。
弾丸は周囲の建物も貫いていくが、気にしている余裕がなかった。
何しろ相手はネヴァンだ。
バンフィールド家が正式配備を進める次世代の量産機は、若い海賊が乗るゾークとは性能が違いすぎる。
また、乗っているパイロットの質も違った。
「お前らを倒して、俺は英雄になるんだあぁぁぁ!! バンフィールドの悪魔がぁぁぁ!!」
泣きながら、漏らしながらコックピット内で叫ぶ若い海賊。
だが、目の前にいた角突きのネヴァンは、一度跳び上がるとブースターを吹かして急接近してくる。
ガトリングガンを持ち上げるよりも早く、ネヴァンがゾークに接近した。
ゾークのカメラに、ネヴァンの顔が近付いてモニター画面が埋め尽くされる。
「っあ!?」
コックピット内が激しい衝撃に襲われる。
きっと押し倒されたのだろう。
操縦桿を動かすが、ゾークには何の反応もない。
「くそ! 外れを引かされた!」
乗せられたゾークが、欠陥品だったと嘆く。
だが、それを否定する声が聞こえてくる。
立ち上がったネヴァンが、右腕にゾークの腕を握っていた。
握り潰すと、空いた手にレーザーブレードを握らせる。
『機体の責任ではなく、パイロットの技量の問題だ。さて――』
容赦なくレーザーブレードをコックピットに突き刺そうとするネヴァンに、若い海賊が必死に訴える。
「待ってくれ! と、投降するから! 逆らわない。約束する!」
死にたくないという一心で懇願するが、ネヴァンに乗ったパイロットの声はどこまでも冷たかった。
『――雑魚に興味はない』
若い海賊が最後に見たのは、モニターの映像が途切れてコックピット内が暗闇に包まれた後――レーザーブレードの光がコックピットまで届いた瞬間だった。
◇
基地内の砲台を潰し終わると、クローディアのもとに電子戦用のパックを装備した味方機が近付いてくる。
『隊長、自爆装置の類いは発見されませんでした』
「だろうな。ここは海賊共にとっても貴重な収入源だ。下手に爆破などさせられないはずだ」
基地に自爆装置を置くことで、敵が容易に侵入できなくするメリットが存在する。
ただ、海賊というのは軍隊ではない。
人間関係のトラブルから、自暴自棄になり基地を自爆させた話など数多く存在する。
そして、簡単に自爆できない装置を設置した時は、こんな話があった。
敵に乗り込まれて自爆を決定したが、操作方法を忘れて自爆できなかった――だ。
また、安易に自爆を選択させるよりも死ぬまで戦わせたい場合もある。
クローディアは、今回はそのケースだと考えていた。
「よし、陸戦隊を降ろせ。プラント内の制圧を任せる」
『我々は周辺の警戒に入ります』
機動騎士では大きすぎて、基地内の制圧には向かない。
ここからは陸戦隊の出番となる。
しばらくすると、レメアから出撃した小型艇三機がプラント内に着地した。
パワードスーツに身を包む兵士たちが、次々に外へ出る。
素早く施設内へと侵入していくと、建物内部での銃撃戦が開始された。
設置された迎撃システムや、武装した海賊たち。
それらを特殊部隊が次々に破って内部へと侵入していく。
手際の良さにクローディアも気分がいい。
「これで幹部連中を捕らえれば終わりか」
クリスティアナの依頼も達成が見えてきたところで、電子戦パックを装備した味方機がクローディアに焦りながら報告してくる。
『隊長、基地周辺に敵を確認!』
「外に配置していた部隊か?」
クローディアもレーダーで周囲を索敵するが、ノイズが酷かった。
カメラを最大望遠にして敵機を探れば、遠くにゾークが何機も確認できる。
基地を囲むように現れたゾークの数は、一千を超えていた。
「こいつらどこから!」
プラント内の規模から、事前に保有する戦力は割り出していた。
そのため、必要最低限の数だけを用意していたが――敵が想定より上の戦力を投入してきた。
そして、基地内で爆発が起きる。
「何が起きた!?」
『基地内の海賊船が爆発しました。我々ではありません!』
「――自ら退路を断っただと」
信じられない出来事が続く中で、クローディアは決断する。
「内部は陸戦隊に任せる。我々は外の対処だ」
『し、しかし、弾薬が』
「海賊共の武器を調達する。武器のアクセスコードを解析し――」
敵機が武器を使用しないように、使用可能にするにはアクセスコードが必要とされた。
それを解析し、武器を現地調達する。
だが、またも爆発が起きる。
「今度は何だ?」
『――弾薬庫が爆発したようです』
これまでよりも大きな爆発が起きた。
周囲の建物を巻き込んで吹き飛んだその場所は、武器や弾薬が保管されている場所だった。
若木ちゃん( ゜∀゜)「モブせかは不滅! だから私も不滅! みんなのアイドル苗木ちゃんです」
エマ( ・∀・)「どう見ても若木なのに?」
若木ちゃん(#゜Д゜)「私の中ではまだ苗木で通るのよ! 年齢詐称って言った奴、今日は夢に出て朝まで宣伝してやるから覚えておきなさい! 私のことしか考えられないようにしてやるわ」
エマ( ・∀・)「 (聖樹っていうか呪いの木かな?) ――乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です9巻が 11月30日 に発売されます! 電子書籍のご予約も開始したので、そちらもチェックしてくださいね」
若木ちゃん( ゜∀゜)「私も活躍するから絶対に書籍を購入して確認してね! 本当に活躍するから! 私、嘘つかないから! 」
エマ(・∀・) (あたしも人気が出たら書籍に登場できるかな?)