代償
これにて五章は幕となります!
お正月の暇潰しになれたら幸いです。
さて、今回は前書きを利用して宣伝を!
ヴァルキリー・バレット 1巻~仲間を失った傭兵の転属先は、空を舞う少女たちの学園でした~
【2月28日発売予定】
【あらすじ】
異形の化け物―偽獣―に仲間を殺された兵士【一二三蓮】は、復讐のため成功率数パーセントの強化手術を受ける。
※旧フェアリー・バレット
色々ありまして新たなシリーズとして再始動することになりました。
一巻は旧版に加筆を加えておりますので、どうぞヴァルキリー・バレット略称ヴァルバレもよろしくお願いいたします。
騎士学校の講堂にて、騎士たちが佐官教育の終了を告げられていた。
その中にはエマを始め、ラッセルやヴィクトリア……カルアの姿もあった。
終了を告げる将官の視線は、度々エマに向けられていた。
「本来であればもう少し早く佐官教育は終了する予定であったが、君たちも知っての通り今回ばかりは異例の事態であった。中には現場に駆り出されて勲章を得た者たちもいるようだな」
カールトン子爵家の艦隊を撃退……作戦に参加したラッセルなど、誇らしげに胸を張っていた。
ヴィクトリアも無事に生き残り、こちらも時折だがエマの方に視線を向けてくる。
そもそも、他の騎士たちもエマの方を見ていた。
「彼女がエースオブエースか?」
「前回の戦いでは撃墜王だったらしいな」
「生え抜きの中でも期待の新人だとさ」
周囲の視線を受けて、エマは顔を赤くして縮こまっていた。
(エースオブエースとか言われても困る! というか、撃墜王なんて言われても、あたしよりスコアが上の人は沢山いるよ!? あと、もう新人って年齢でもないから!!)
正式な騎士となってから随分と時間が経った。
エマは既に新米とは呼ばれる立場にない。
しかし、人の寿命が延びてしまった世界では……数百歳から見て百歳にならない者は子供扱いを受けることも珍しくない。
実際、佐官としてみればエマは若い部類だ。
教官を務めた将官が、騎士たちを前に言う。
「ここを出れば君たちは佐官教育を受けた者として部隊で扱われるだろう。教育は終了したが、これは始まりに過ぎない。それを忘れないように……君たちの活躍に期待する」
将官が敬礼を行うと、全員が返礼した。
エマはやっと終わったと思いながら友人のカルアへと視線を向ける。
しかし、カルアの方はエマを見ようとしなかった。
(カルア? どうしたのかな? 作戦が終わってからあたしを避けているような気がするけど……)
作戦中に何かあったのか? 心配になったエマは、後で声をかけることにした。
◇
講堂から出たところで、エマはカルアを捜していた。
そんなエマに声をかけてくるのは、ラッセルだった。
「ロッドマン中佐」
「ラッセル君?」
「……階級は既にロッドマン中佐の方が上だ。いずれ追いつく……いや、追い抜かせてもらう。だが、その時まではラッセルと呼び捨てでいい」
君付けは止めてほしいと言われ、エマは恥ずかしそうに頭をかいた。
「あはは、それなら呼び捨てにするね。それで、何か用かな?」
ラッセルは数秒だけ思い悩んだ顔をした後に言う。
「ロッドマン中佐……差し出がましいとは思うが、いつまで今の部隊にいるつもりだ?」
「え?」
何を言われているのかわからなかったエマが、鈍い反応を示すとラッセルが言葉を選びながら自分の言いたいことを説明する。
「勘違いしないで欲しい。以前のように彼らが腐っているとは思わないし、戦場での活躍を聞く限りは精鋭と遜色ない活躍をしている。あの部隊をあそこまで鍛えたロッドマン中佐の実力は、私も高く評価しているよ」
褒められていると感じて、エマは少しばかり照れてしまう。
「一時的にやる気を失っていただけで、元はバンフィールド家を守っていた精鋭でしたからね。きっかけさえあれば、あたしでなくても立ち直らせたと思いますよ」
「謙遜しなくていい。私はあの部隊を間近で見て、やる気を取り戻させようなどとは思わなかった。君の手柄さ」
「あはは、そう言ってもらえると嬉しいですね」
照れるエマを見るラッセルの表情は、どこか悲しそうだった。
「だからこそ、言わせてもらいたい。――いつまであの部隊にこだわるつもりだ? ロッドマン中佐は次のステージに上がるべきだ」
「……さっきから何を言いたいんですか、ラッセル少佐?」
技術試験隊を捨てろと言われているように感じたエマは、少しムッとしてラッセルに階級を付けて呼んだ。
ラッセルもエマの気持ちを察しているのだろう。
しかし、言わずにはいられないらしい。
「あの部隊は間違いなく精鋭だ。手元に置きたい気持ちもわかる。実際、私の指揮下に入ってくれたら心強いと思うよ。……けど、彼らは騎士じゃない」
見下したような発言にも聞こえるが、ラッセルの雰囲気からエマは違うと思った。
ラッセルは今のメレアを高く評価しているし、自分の指揮下に欲しいとまで言ってくれている。
ただ、今のエマがいるべき場所ではないと告げる。
「指揮下に置いて運用するならそれでもいい。ただ、君の直衛……小隊や中隊は騎士で揃えるべきだ」
騎士を取り入れろと言われ、エマはラッセルに声を荒げて抗議する。
「騎士不足の状況で配属を希望しても聞き入れてもらえませんよ。それに、あたしは今のままでも困っていません。同じ小隊のダグ准尉やラリー准尉だって付いてきてくれますし、中隊のみんなだって……」
声を発した際に大声となってしまったことを、エマ自身が驚いていた。
思っていたよりも、自分はメレアに愛着を持っていたらしい、と気付かされた。
ラッセルはそんなエマに忠告を止めない。
むしろ、そんなエマだから強く見切りを付けるように勧める。
「ロッドマン中佐は困っていないだろうな。けれど、他の者たちどうかな?」
「……何が言いたいんですか?」
「確かに彼らの士気は高い。君が言えばどこまでも付いていくだろう。けれど……騎士ではない彼らにはいずれ限界が来る」
騎士というのは幼い頃から鍛えられた超人であり、一般的な軍人と比べても高い能力を持っている。
アルグランド帝国で騎士が特別待遇を受けられるのは、一般人と比べて優秀だからだ。
特務陸戦隊のような一部例外も存在するが、一般人では騎士には勝てない。
ラッセルはエマに自分が何を言いたいのか、必死に伝えてくる。
「ロッドマン中佐が一般的な騎士であれば問題なかった。だが、もう君はバンフィールド家を代表するような二つ名持ちのエースだ。いずれ、彼らでは君について行けなくなる。それは、どちらにとっても良い結果に繋がらないだろ?」
理解して欲しい、というラッセルの説得にエマは困惑する。
「で、でも、今までは問題なかったし……それに、あたしが騎士を希望しても配属されるわけが……」
「本気で言っているのか? ロッドマン中佐が騎士を中心とした中隊の部隊編制を希望すれば、中央はすぐにでも騎士を集めるはずだ。それだけの活躍を君はしてきたんだぞ」
ラッセルはエマのように活躍できない自分を恥じているようだった。
悔しさを滲ませるが、それでもエマに忠告する。
「……どうするかは、ロッドマン中佐次第だ。中佐のいる技術試験隊が再編されるという話は聞いたし、タイミング的にもいいだろ? 私が言いたいのはそれだけだ」
ラッセルが去って行く背中を見ていたエマは、いつの間にか手を握り示していた。
「別に今のままでもあたしは……今のメレアのみんななら大丈夫だから」
◇
宿舎へと戻ろうとしていたエマは、待ち伏せしていたと思われるヴィクトリアに声をかけられる。
「来たわね、エマ・ロッドマン!」
「スピアリング少佐? あの、何かありましたか?」
ヴィクトリアが大股でエマに近付いてくると、顔を近付けて偉そうな態度で希望を出してくる。
「あなたがいる部隊は再編されるそうね? 規模も大きくなると聞いたわ」
「え、えぇ、まぁ」
「それなら私をあなたの部隊に配属させなさい」
「……え?」
偉そうな態度で配属を希望してくるヴィクトリアに、エマは目を丸くしてしまった。
エマに構うことなくケイは言う。
「帝国騎士の資格を持つ私が! この私が、あなたの部隊に配属されてあげるのよ。良かったわね、私を部下に持てて」
偉そうなヴィクトリアを前に、エマは両手を小さく上げて困った顔をする。
「あ、あたしが希望を出しても叶うとは思えませんよ。それに、どうしてうちなんです? スピアリング少佐なら正規艦隊も希望できると思うんですけど……」
すると、ヴィクトリアは悔しそうな顔をしながらエマを睨み付ける。
「……この前の戦いで、私は騎士が乗る機動騎士を五機撃破したわ。一般兵が乗る機動騎士なら十機以上は確実に撃破している。共同で戦艦だって撃破したわ……一隻だけだけどね」
「す、凄い戦果ですね。あはは、やっぱり帝国騎士って凄いなぁ~」
(発破をかけるために煽ったけど、やっぱりこの人も凄い)
最初は怯えているように見えたヴィクトリアだが、実戦に出ると期待されている働きをして見せた。
しかし、本人は不満らしい。
「嫌み? あなたはそれ以上の戦果を挙げたじゃない。敵旗艦を撃破して、ダリア傭兵団だって退けた……悔しいけど、今はあなたの方が実力は上だと認めてあげるわ」
「そ、そうですか……それで、どうしてうちに来るんです?」
どうして再編される艦隊を希望するのか尋ねると、ヴィクトリアからとんでもない理由を聞かされる。
「決まっているじゃない! 間近にいればあなたに私の活躍を見せ付けられるでしょ? いずれ追い抜いて、バンフィールド家に私こそが特別待遇を受けるに相応しいと認めされるわ。そして、いずれはナンバーズ入りを果たすの」
「……ナンバーズ?」
何を言っているんだろう? 首を傾げるエマに、ケイは頬を引きつらせる。
「あなた知らないの? クラウス閣下が筆頭騎士に選ばれた際に、ナイトナンバーとして「1」の数字を与えられたのよ。以前から優秀な騎士たちにはナンバーを与えて、独自の裁量で動かせる艦隊も用意するって話が出ていたじゃない」
「は、初耳です。あれ、どこかで聞いたかな?」
「ともかく! 私の配属を希望しなさい。あなたの側で、私の実力を嫌という程に見せ付けてあげるわ」
言うだけ言って、ヴィクトリアもエマに背を向けて去って行く。
何だか今日は色々と押し付けるように話す人ばかりだな、と思うエマだった。
◇
宿舎に戻ってくると、エマはカルアを見つける事が出来た。
自分の荷物をまとめて宿舎を出ようとしているところだった。
「カルア!」
エマは友人であるカルアに声をかけて近付くのだが……。
「エ、エマ……中佐」
……カルアのエマを見る目は怯えていた。
エマはカルアの反応に、自分が何かしてしまったのではないか? と考えて立ち止まって謝罪をする。
「あ~、もしかして、あたしが何かしちゃった? それとも、巻き込んだのを怒っている?」
作戦に参加させたことを怒っているのかと問えば、カルアは首を横に振る。
「違う。確かにエマに声をかけられたけど、参加するって決めたのは私だったから……それに、ヴァローナに乗れるって少し浮かれていたし」
どうやら、カルアの部隊にはネヴァンは配備されていなかったらしい。
ヴァローナでも十分と思っているようなので、現行世代のモーヘイブを使用しているのか? とエマは思った。
「それならよかった。ヴァローナはいい機体だよね。うちの部隊にはヴァローナを愛用している小隊がいてね。もういかに素晴らしいか周りに語っているくらいだし」
困った顔をしながら笑ってみせるが、カルアは少しも笑ってくれない。
嫌な予感がしながらも、エマはカルアに問う。
「……どうしたの、カルア? あたしを避けてない?」
カルアは視線ばかりか、顔までエマから背けていた。
明らかにエマを前にして怯えていた。
「エマは……凄いよね。戦場でもあんなに活躍してさ。昔は私の方が成績も優秀だったのに、今は真逆どころか遠い存在になっちゃった」
「あたしは別に昔と何も変わっていないよ」
「変わったよ!」
自分は昔と変わらないと思っていたエマに、カルアは現実を叩き付けてくる。
「エマは……変わったよ。昔は頑張って平均に届くか届かないかの騎士だったのに、今は同期の中でもトップクラスじゃない。そればかりが、軍全体でも上位に入る実力者だよ。普通の騎士でしかない私とは大違いだよ」
「ち、違う。カルア、あたしの話を……」
自分は変わってなどいない。
確かに評価はされているが、中身は昔のままだと伝えたかった。
しかし、カルアはエマを拒絶する。
「……私ね、軍を離れることにしたの」
「カルア?」
カルアは俯いたまま、最後までエマの顔を見ようとはしなかった。
「エマの活躍を見た後だと、自分が情けなくなってさ。騎士だから軍から完全に離れるのは無理だから、要人警護とかそっちに回るつもり」
「ど、どうして? せっかく騎士になれたのに……佐官にだってなれるのに!」
「……エマたちとは住んでいる世界が違うってハッキリわかったからだよ」
カルアは話を終えて、そのままエマの横を通り過ぎて行く。
エマはこの日、大事な友人を一人失ってしまった。
リアム(# ゜Д゜)「ティアとマリーはどこだ! このまま終わりなんて認めないからな! クラウス、奴らを俺の前に連れて来い! 奴らを後輩の前で辱めないと気が済まないぞ!」
天城(#´∀`)「この頃のお二人といえば随分と面白い恰好をしていましたね。クラウス様、後の処理はお任せいたします」
クラウス(;´д`)「……書籍版では主役のエマ中佐と、お二人の出会う場面もあると思いますのでどうかご容赦ください」 (私はどこで道を間違えて筆頭騎士になってしまったのか?)
五章はいかがだったでしょうか?
年末年始の暇潰しになれたのなら幸いです。
それから小説家になろうでは作品に評価やコメントが出来るようになっております。
そちらも利用していただければ作者として励みになりますので、是非ともよろしくお願いいたします。
次回更新は未定ではありますが、書籍に追いついてしまった英雄騎士の更新か、あるいは本編の悪徳領主の方を進めるか悩みどころです(^_^;)
今回のようなミスが起きないように、次回こそは気を付けたいですが……不安が残りますね。
それでは、今年も三嶋与夢をよろしくお願いします。




