再会
【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 9巻】
【11月30日 発売!!】
【あらすじ】
三作目の攻略対象だった男子が女の子に!?大人気乙女ゲー風異世界ファンタジー、衝撃の最新章――開幕!
攻略対象の男の子が女の子に!?
あの乙女ゲー三作目の時系列に突入し、
主人公と攻略対象たちをくっつけようと画策するリオン。
だがその目論見はすでにほころびを見せていた。
なんと攻略対象の一人が性転換し、女の子へと生まれ変わってしまったのだ。
しかも主人公は主人公で、ゲームには登場しなかったお付き騎士といい雰囲気という有様。
さらに王都では謎の組織の暗躍に連続殺人事件まで起き、収拾のつかない状態に。
果たしてリオンは、自分のことは棚に上げ、ゲームの正常なルートに戻すことが出来るのか!?
バンフィールド家本星ハイドラ。
その政庁に届いた情報により、朝から官僚や軍人たちが慌ただしかった。
領地として獲得した惑星エーリアスに、宇宙海賊の拠点あり。
その知らせを受けた元筆頭騎士クリスティアナは、任務中である部下と通信を開いていた。
その部下とは、任務中であるクローディア・ベルトラン大佐だ。
現在彼女は数百隻の艦隊を率いて、治安維持を行っていた。
遠く離れたクローディアと話すために、クリスティアナはモニター付きの通信機の前に座って深刻な顔をしている。
「クローディア、すぐに惑星エーリアスに向かってもらえるかしら?」
上官からの命令に、クローディアは毅然とした態度で答える。
『現在は宇宙海賊共の拠点攻略中です。ここが片付き次第、向かわせて頂きます』
クローディア率いる部隊が戦闘中でありながら、クリスティアナは呼び出していた。
あまり褒められた行動ではないのだが、クリスティアナは事態の深刻さをクローディアに伝える。
「惑星エーリアスに宇宙海賊共の拠点が見つかったわ」
『ここが片付き次第、早急に――』
「それでは間に合わないのよ。本星からも艦隊を派遣するけれど、間に合いそうなのはクローディアの部隊だけよ」
『――それだけ急ぐ理由があると?』
いぶかしむクローディアに、クリスティアナは僅かに声が低くなる。
「海賊共の兵器製造プラントが発見されたわ。まさか、エーリアスが本命だったなんてね」
『なっ!?』
先程までは落ち着いていたクローディアも、兵器製造プラントがあると聞くと目をむいて驚いていた。
兵器製造プラントの破壊は、クローディアの本命である。
何よりも優先するべき命令だ。
「エーリアスはバンフィールド家が獲得したばかりの惑星になるけれど、同時に統治する責任が発生します。バンフィールド家が海賊共の拠点を見過ごしたばかりか、武器製造に関わっていたとなれば今までの信用がなくなるわ」
新たに得た領地に海賊たちが使用する武器の製造拠点があった。
それはバンフィールド家にとって、信用問題に関わってくる。
「数年前にバークリー家は滅ぼしたけれど、バンフィールド家を敵視する帝国の貴族たちは未だに多い。奴らに弱みは見せられないのよ」
非常時に緊急で呼び出した理由を話すと、クローディアが一瞬視線を動かした。
頭の中でどのように対処するべきか、考えていたのだろう。
『必要最低限の部隊を先行させます』
「任せるわ。それから、可能ならばプラントは制圧。海賊共は捕らえなさい」
『捕らえるのですか?』
「支援者がいる可能性が高いわ。――リアム様から許可も得ました。特務陸戦隊も高速艦で派遣します。現地で合流しなさい」
『トレジャーですか? よく使用許可が出ましたね』
特務陸戦隊の別称は「トレジャー」。
現当主であるバンフィールド伯爵の持つ、精鋭部隊である。
本来であれば、伯爵自らの命令のみで動く彼らの派遣。
それだけ非常事態という証拠でもあった。
「これでも戦力的には不安でしょう。――現地の治安維持部隊を指揮下に加えなさい」
『――辺境の治安維持部隊など役に立ちませんよ』
辺境惑星の治安維持部隊と聞いて、クローディアの視線が冷たいものに変わるのをクリスティアナは見逃さなかった。
だから、あえて好きに行動させる。
「クローディアの判断に任せるわ。好きにしなさい」
通信が閉じると、クリスティアナは呟く。
「これはあなたにとってもチャンスよ、クローディア。過去を乗り越えなさい」
◇
バンフィールド家本星ハイドラ。
ハイドラの支配者である伯爵の屋敷は、屋敷自体が都市という規模であった。
屋敷の主である伯爵【リアム・セラ・バンフィールド】が、部下たちから届けられた報告を電子書類で確認している。
周囲に浮かんだ数十の画面を一瞥し、僅か数秒で確認すると鼻で笑う。
「バークリー家の置き土産か? 下手な拠点よりも厄介だな」
広い執務室に一人だけだったが、リアムの影から大男がゆっくりと出現する。
禍々しい雰囲気をまとった仮面をつけた男が登場しても、リアムは顔すら向けない。
現れた男に話しかける。
「――終わったか?」
大男に頼んだ仕事が無事に終わったのか尋ねると、相手は膝をついて頭を垂れた。
「はっ。執事殿の気がかりは一人の騎士が原因でした」
「騎士?」
リアムの前に、一人の女性騎士のデータが浮かび上がる。
そのデータを見て、すぐに目を細める。
「知り合いが辺境送りになって心配していた、か。俺に言えばすぐに安全な配属先を用意してやったのに」
最近執事が何かを心配しているようだった。
その調査を暗部に依頼したのだが、出てきた結果は拍子抜けするものだった。
大男は執事の気持ちを代弁する。
「リアム様を煩わせたくなかったのでしょう。それに、執事殿は不正を嫌います。知り合いだからと特別な扱いを望むとは思えません」
「あいつらしいな。――それにしても配属先はエーリアスか。運のない娘だ。だが、死なれても面倒だ。呼び戻して後方勤務に――」
騎士として最低評価のDランク。
そして運がない少女のデータを眺めていたリアムは、言葉を途中で止めると詳しいデータを閲覧し始める。
少女――エマ・ロッドマンの騎士学校時代のデータだ。
中でも機動騎士に関するデータを確認すると、右手を額に当てて天井を見上げて笑い始める。
「面白いやつがいるじゃないか」
主君が急に笑い出したために、大男が尋ねる。
「リアム様がお気に召す騎士でしょうか? Dランク評価が当然の娘ですが?」
笑うのを止めたリアムが席を立つ。
「高速艦を出す予定だったな? 丁度いい。“アレ”をこの女に届けてやれ。使いこなせるかどうかは――本人次第だけどな」
◇
惑星エーリアスから一時的に撤退した辺境惑星調査団。
その護衛を任された空母レメアだが、現在は剣呑な雰囲気に支配されていた。
主立った面々が揃った広い部屋では、立体映像を囲んで会議が行われている。
薄暗い部屋の中に、レメアの機動騎士部隊の面々も顔を出していた。
壁際から会議の様子を見守るエマは、レメアに乗り込んできた大佐を見ていた。
(教官)
元教官クローディア・ベルトラン。
クローディア率いる部隊と合流した護衛艦隊だったが、お互いに雰囲気が悪い。
やる気のないレメアの司令官が、クローディアに対して不満を述べている。
「艦隊が送られると聞いて待っていれば、機動騎士の中隊と陸戦隊が僅かだけですか? この程度の戦力で海賊の拠点を制圧しろとは、バンフィールド家の戦力不足も深刻ですね」
上層部に加えて、バンフィールド家そのものを批判する司令官にクローディアの部下たちが武器に手をかけようとしていた。
それをクローディアが手を上げて止めるが、本人も司令官の態度が腹に据えかねたのだろう。
「お前らの皮肉や嫌みに付き合うほど、我らは暇ではない。さっさとブリーフィングを終わらせるぞ」
クローディアが率いるバンフィールド家の私設軍は、現在の当主が再建した軍になる。
練度、質、士気――全てが揃った理想的な軍隊だろう。
逆に、レメア側は全てが揃わない壊滅的な軍隊だ。
両者は互いを憎んでいるようで、会議の場は最悪の雰囲気だ。
壁際にいたエマの隣には、壁を背にしてポケットに手を入れるラリーがいる。
クローディアを見た後に、エマに視線を向けて鼻で笑っていた。
「本物の騎士様たちは迫力が違うね。君とは大違いだ」
「そ、それはそうですけど」
比較されて見劣りがするのは仕方がない。
クローディアが率いてきたのは、騎士であればBランク以上という優秀な者たちだ。
クローディア自身はAを超えて「AA」という特別ランクである。
だからこそ、エマは現在が異常事態だというのを察していた。
(選りすぐった騎士たちを自ら率いてくるなんて、ちょっと普通じゃないよね? 何か理由があるのかな?)
敵拠点の制圧について説明するクローディアは、レメアの軍人たちに本当の目的を話そうとしなかった。
「――以上だ」
クローディアが説明を終えると、腕を組んで話を聞いていたダグが強引に前に出る。
「ちょっと待ってくれ。あんたら、本気で俺たちだけで敵拠点を制圧させるつもりか?」
階級が准尉であるダグが、大佐であるクローディアに無礼な態度で話しかけてしまった。
エマが慌てて止めに入る。
「ダグさん、駄目ですよ!」
「お嬢ちゃんは黙っていろ。俺たちは無駄死にする気はないんだよ」
クローディアの視線が一度だけエマに向けられたが、興味がないのかすぐにダグを見ると冷たい視線を向けていた。
「無駄かどうか判断するのはお前ではない。これは命令だ。黙って従え」
「はっ! 今まで放置しておいて、随分と都合がいいな」
「――お前たちのような半端者を使わねばならない状況だ。給料分くらいの仕事はしろ。それ以上は求めていない」
本来であれば厳しい処罰が与えられるべきダグの言動だが、クローディアは興味がないのか背中を向けて部下たちを連れて部屋を出て行く。
司令官が頭をかく。
「命が縮んだぞ、ダグ」
「悪いな、司令。だけど俺は、もう命を張るほど忠誠心なんて持ってねーのさ」
「俺も同じさ」
◇
「エマちゃんこっち!」
「ま、待ってよ」
無重力となった艦内通路。
モリーに手を引かれるエマは、格納庫を目指していた。
「あたしに届け物って何?」
「凄いよ! 見たら絶対に驚くって!」
興奮するモリーに強引に格納庫へ押し込まれると、そこでエマが見た物は失ったモーヘイブ二型の代わりとなる機動騎士だった。
機動騎士に近付くエマは、足下から見上げる。
格納庫の照明に照らされ輝く機動騎士は、以前に乗っていたネヴァンだった。
ただ、バックパックが違う。
スマートな騎士を思わせるシルエットをしているが、翼のような追加ブースターではなくロケットを二本背負った形をしている。
関節部が補強され、一般的なネヴァンよりも試作機に見える外観をしていた。
だが、間違いなく最新鋭の機動騎士――ネヴァンだった。
「――ネヴァンだ」
「本物だよ。本物のネヴァン! いいよね、最新鋭の機動騎士って!」
ネヴァンを前に興奮しているモリーは、機体の脚部に抱きついていた。
唖然とするエマの方に、パワードスーツ型の宇宙服を装備した兵士が近付いてくる。
陸戦隊仕様の戦闘スーツは、重量感もあって威圧的だ。
そんな威圧的な見た目だが、フェイス部分を開放すると女性の顔が見えた。
「エマ・ロッドマン少尉ですね? 受け取りにサインをお願いします」
差し出された電子書類にサインを求められるが、エマは頭を振る。
「あ、あの! 間違いじゃないんですか? あたし、Dランクで、その」
あたふたするエマに、女性軍人がサインを求める。
「間違いではありませんよ。早くサインをお願いします」
「は、はい」
サインをすると、女性軍人が確認して小さく頷く。
「――送り主から伝言を預かっています」
「送り主? え、誰ですか?」
「それはお伝えできませんね」
機動騎士の配備を判断するのは軍であり、個人が送ってくるなどあまりない話だ。
エマが貴族であればあり得たかもしれないが、一般人であるためそれもない。
「伝言は――『知り合いが世話になった』と」
「え? そ、それだけですか?」
「はい。ちゃんと伝えましたからね」
そう言って女性兵士が離れていく。
若木ちゃん( ゜∀゜)ノ「やっぱり宣伝って大事よね。今日は子分のエマちゃんにも手伝ってもらうわ。さぁ、モブせか9巻の宣伝をしちゃって」
エマ(;゜Д゜)「あの、あたしは子分じゃないんですけど? えっと――」
エマ(*´∀`)「【キミラノ】さんが開催する【次にくるライトノベル大賞2021】に この作品の本編である【俺は星間国家の悪徳領主!】がノミネートされています」
エマヽ(*´∀`)ノ 「投票は 【一日一回可能】 ですので、毎日でも本編の応援が出来ちゃいます。他の作品を応援してもOK! 皆さんで一緒に盛り上げていきましょう! あたしも頑張っちゃうよ!」
若木(#゜Д゜)「モブせかの宣伝だって言っただろうが!」
エマ(;・∀・)「す、すいません (この植物怖い) 」