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再びの騎士学校

 惑星ハイドラ……そこはバンフィールド家の本星である。


 現領主の意向で緑と融和する都市計画が進められた結果、都会ながらも緑も豊富で暮らしやすい惑星となった。


 高層ビルも多いが密集していないので息苦しさは感じず、他の惑星などよりも発展しているため人の出入りも多い。


 ハイドラの軌道上に用意された宇宙港には、相変わらず数多くの宇宙船が出入りを繰り返しており経済活動の活発さを物語っていた。


 そんなハイドラだが、エマが離れている間にも発展をし続けていた。


 以前は食糧プラントがあった場所には、手狭になったことを理由に商業区画へと変わっていた。


 都市が更に拡張されているし、惑星内の別の大陸に第十八都市の建造も始まったそうだ。


 そんなハイドラの首都とされるのは、バンフィールド家の屋敷がある場所だ。


 巨大なバンフィールド家の屋敷を囲むように、ドーナツ状に広がっている首都がエマの故郷だ。


 以前はそうではなかったが、他者から見ればエマは大都会に生まれである。


「開発が進むから来る度に景色が変わるなぁ」


 ハイドラの首都育ちのエマだが、慣れ親しんだかつての光景は姿を変えていた。


 昔は首都近辺にも田畑があったのだが、今ではなくなってしまった。


 任務でハイドラを離れることが多いエマにとっては、故郷の姿はめまぐるしく変わっていた。


 そんなエマが前にしているのは、騎士になるため辛い日々を過ごしていた騎士学校だ。


 ハイドラにある騎士を育成する学校は、バンフィールド家が大急ぎで用意した物だ。


 ハイドラ全体でいくつも存在しているが、学校名は第一など数字が割り当てられているだけだ。


 エマが入学したのはハイドラで初めて開校した第一騎士学校である。


 校門の前に立って騎士学校で過ごした日々を思い返していると、後ろから声がかかる。


「そこに立っていると邪魔になるぞ」


 エマがハッとして振り返ると、そこに立っていたのは【ラッセル・ボナー】だった。


 金髪の短い髪を逆立てた気の強そうな顔立ちの青年は、エマと同期の騎士だ。


 騎士学校時代は親しくなかったが、任務で一緒になってからは友人と呼べる関係になったとエマは思っている。


「ラッセル君!」


「……君は相変わらずだな」


 佐官になっても相変わらずなエマを見て、ラッセルは小さなため息を吐いた。


 ラッセルの視線はエマの階級章に向けられた。


「少佐になったのだから少しは落ち着いたらどうだ?」


 ラッセルがどうしてこの場にいるのか? 疑問に思っていたエマだが、ラッセルの階級章を見て理由を察した。


「ラッセル君も佐官教育を受けに来たの?」


 少佐になったことを誇らしく思っているラッセルは、胸を張って答える。


「あぁ、つい最近になって昇進を告げられてね。すぐに佐官教育を受ける手続きをしたんだ。それにしても、君まで少佐に昇進しているとは思わなかったよ」


 ラッセルはエマが少佐になったのをつい最近の出来事、と思っているらしい。


 エマは照れながら頭をかいて訂正する。


「少佐になったのは連合王国との戦争の時で、ついこの前に中佐の内定をもらったの。いい加減、佐官教育を受けなさいって中央からの命令もあってさぁ」


 あはは、と笑顔で言うエマにラッセルは頬を引きずらせていた。


「……まさか君に昇進で先を越されるとは思わなかったよ。それ以前に、中佐になるまで佐官教育を受けてこなかったのか? 君は何をしているんだ?」


 佐官には相応の働きが求められるのに、それをしてこなかったエマにラッセルは呆れ果てていた。


 エマはラッセルから視線を逸らし、人差し指を付き合わせて事情を話す。


「試作機や実験機のテストが続いていて、離れられる状況じゃなかったから……」


「それでも長期休暇くらいあっただろ? その際に佐官教育の申請を出せば、中央が臨時の部隊長を派遣してくれたはずだ。君……もしかして、佐官教育から逃げていたんじゃないのか?」


 ラッセルが鋭い視線で追求してくると、エマは冷や汗を流した。


 図星を突かれて戸惑っていると、更に懐かしい声が聞こえてくる。


「あれ? エマとラッセルじゃない? お久しぶりね、お二人さん!」


 エマとラッセルが声のした方に顔を向けると、そこにいたのは垢抜けた同期の騎士がいた。


 茶髪を伸してメッシュを入れ、騎士服の方も短いスカートにヒールの高いブーツ……ほとんど原型のエマと違って改造を施していた。


 エマはその人物を見て声を上げる。


「カルア! 久しぶり~!」


 エマが駆け寄ると、カルアが受け止めるように互いの両手を握り合った。


「エマも元気にしていたみたいね? というか、もう少佐になったの? 同期で出世株のラッセルと並ぶなんて凄いじゃ~ん」


「あは、あははは……」


 出世の話題を避けたかったエマだが、カルアの階級章を見れば大尉だった。


「あれ? カルアはどうしてここに? 再教育でも受けに来たの?」


 指摘されたカルアは、自分の事情を話す。


「大隊長の推薦を受けて、先に佐官教育を受けに来たのよ。ほら、バンフィールド家って騎士不足でしょ? 更に指揮官クラスは人手が足りないから、暇ならさっさと終わらせておきなさい、ってね」


 そうだったのか、と納得していると居心地悪そうにしていたラッセルがわざとらしい咳払いをしてから二人に言う。


「二人とも、再会を喜び合うのはそこまでにしておけ。そろそろ教室に向かうぞ」


 エマはカルアと顔を見合わせ、そして微笑み合った。


「そうだね。行こうか」


「積もる話は後でいくらでも出来るからね~」



 佐官教育を受ける騎士たちを集めた教室では、准将の階級を持つ騎士が教壇に立っていた。


 准将の騎士は教官を務めており、扇状に広がった階段教室で生徒たちに視線を巡らせる。


「最近は当家の騎士学校を出た若手が、佐官教育を受けるようになってきたな」


 佐官教育を受ける騎士の中には、バンフィールド家に流れてきた騎士たちも含まれていた。


 彼らは他家で騎士になったが、様々な事情でこの場にいる。


 佐官教育を受けさせられるのは、バンフィールド家の流儀を教えるためだった。


 ただ、そんな事情も変わりつつあった。


 エマが周囲を確認すると、自分たちと同世代や一つ上の世代……バンフィールド家の騎士学校を出た生え抜きたちの姿も多かった。


 バンフィールド家の騎士学校で育った騎士たちが、ついに佐官になり始めた証拠だろう。


 教官はエマたちを前に言う。


「生え抜きの騎士にも、そして当家に流れてきた騎士にもここでは等しく佐官教育を行っている。そこに優劣はない。君たちがここで一つでも多く学び、現場に貢献できるようにするのが我々の仕事だからだ」


 教官の物言いにエマは少しばかり疑問を持った。


 首を傾げていると、教官は詳しい事情を話すことなく今後の予定について話をして一日目が終わった。


 入学式など存在せず、ただ事務的な内容を告げられただけだ。


 ただ、最後に教官が言う。


「……それから、第一騎士学校を出た騎士たちは慰霊碑を確認しておけ」



 第一騎士学校の中庭に用意された慰霊碑……半透明な大きなモノリスが設置されていた。


 エマとカルア、そしてラッセルが慰霊碑の前に立つ。


 エマは周囲の違和感を感じ取り、二人に確認する。


「中庭が賑わいそうな時間なのに、候補生たちが誰もいないね?」


 佐官教育を受ける騎士たちの姿は見られるが、騎士になろうとしている候補生たちの姿はどこにもなかった。


 事情を知らないエマに、カルアが説明する。


「短期教育で騎士を育てる時代は終わって、今は佐官教育まで含めた本物の騎士学校が出来ちゃったからね。ここに候補生たちはいないわよ」


「そうなの!? というか、カルアは詳しいね」


「だって、私はハイドラの防衛部隊に配属されているからね」


 ハイドラの守りを任されていると聞いて、腕組みをしていたラッセルがつまらなそうにする。


「一定の評価は受けているということか」


「何だか棘のある言い方に聞こえるわよ。ラッセル、あんた相変わらず態度がでかいわね」


 候補生時代はエリートのラッセルに口出ししなかったカルアも、経験を積んだことで同期を恐れなくなったらしい。


 ラッセルは組んでいた腕を解くと、慰霊碑に手を触れて呟く。


「卒業生のラッセル・ボナー……同期たちを抽出」


 ラッセルが言い終わると、慰霊碑の表面に文字が出現して並べられていく。


 そして、そこにエマたちの同期の名前が羅列されていった。


 エマが目を丸くする。


「こ、こんなに……」


 慰霊碑と聞いて嫌な予感はしていた。


 騎士が派遣される現場には死亡するリスクが付きまとう。


 だから、自分たちの同期が死んでいてもおかしくないとは思っていた。


 思ってはいたが、現実に受け止めるのは別問題だ。


 カルアは先程まで違って苦々しい表情をしていた。


 知り合いらしい名前を指先で触れている。


「……優しい子だったのにね。死んだら意味なんてないじゃない」


 羅列されている名前の中には、エマと騎士学校で苦楽を共にした騎士たちもいた。


 一緒に食事をした女友達もいれば、喧嘩した者もいる。


 良い奴も、嫌な奴も……自分たちの同期が数多く死んでいると見せられ、現実感に打ちのめされているとラッセルが口を開く。


「教官は僕たちに浮かれている場合じゃないと教えたかったんだろう」


 エマは教官の話題が出ると、気になった物言いを思い出す。


「そういえば、教官が私たちと他の騎士に優劣はないとか言っていたよね? あれ、どういう意味だったのかな?」


 ラッセルは慰霊碑を見つめながら答える。


「生え抜きの我々と、他所から流れた騎士の間で溝があるという話がある。実際、現場でも生え抜きが増えてきているからな。他所から流れてきた騎士には居心地が悪いのさ」


 エマは思う。


(やっぱりそういう意味か)


 薄々は気付いていたが、ラッセルが言うのなら間違いないのだろう。


 カルアの方は実際に現場で苦労しているらしい。


「生え抜きの私たちにしてみれば、上でふんぞり返っている余所者も面倒だけどね。まぁ、うちの上層部は全員余所者っていえばそれまでだけどさ」


 現場で何かあったのだろうか? エマがそう思っていると、ラッセルが鼻で笑う。


「確かに今の上層部にバンフィールド家の生え抜きはいないが、数多くの功績を打ち立てた超一流の騎士たちばかりだ。無能はバンフィールド家で生き残れないのさ」


「それ、私たちが無能だっていいたいわけ?」


「さぁ、どうかな? 愚痴をこぼす前にさっさと出世して上層部に食い込んだ方が、健全で建設的だと思っただけだよ」


 余所者に対して愚痴を言うカルアに、ラッセルはラッセルで思うところがあるらしい。


 二人が睨み合いを始めるとエマが二人を執り成す。


「二人ともそこまでにしようよ」


 すると、カルアはエマに忠告する。


「エマはわかってないでしょ? 余所者は他所の流儀を押し付けてくる奴もいるし、忠誠心なんて持っていない連中も多いのよ。私は現場でそういう連中と関わっているから詳しいのよ」


「え、えっと……」


 エマが困っていると、ラッセルが火に油を注ぐような発言をする。


「随分と問題児が押し込まれている部隊にいるようだな。そうなると、本星を守っているだけで、君がいる部隊は重要拠点を守っているわけではないらしい。なる程、評価を改める必要があるようだな」


「あんた、本当にいちいち腹が立つ事を言うわね」


 またしても二人が睨み合いを始めるので、エマは教官の話題を出さなければ良かったと後悔した。


「二人とも、とりあえず喧嘩は止めようよ……せっかく生き残った同期同士だよ」


 エマの視線は慰霊碑に向けられる。


 三分の一、とまではいわないが、それでも多くの同期たちを失っていた。


 エマは思う。


(あたしたちもいつか……ここに名前が載る日が来るのかな?)


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書類作業補助するメイドの人工知能購入するとかないかな。 よい人材旧軍の人材鍛えるだけじゃ人数的に無理が出てきそう。
そろそろエレンとご対面かな でもユリーシアにも出て欲しい 主人公が第三兵器工場の特機に乗ってるのに未だに出番が無い
そうか、ブライアンの爺様ぐらいか最初の最初からいるのは
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