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傭兵

※外伝二章の次期は、原作小説【俺は星間国家の悪徳領主! 5巻】の序盤となっております。


リアムが首都星で大学生として暮らし始めた頃ですね。

「今回の任務で騎士長を任されたクラウスだ」


「エマ・ロッドマン中尉であります!」


 喧嘩を治めたクラウスと話す機会を得たエマは、緊張しながらも騎士礼をしていた。


 ただ、クラウスに対して恐怖心などは抱いていない。


(教官よりも覇気を感じないけど、本当に凄い人なのかな?)


 内心で失礼な感情を抱くのは、エマの教官であったクローディアの影響が強い。


 彼女はAAという雲の上の存在であったが、クラウスは自分と同じB級騎士だ。


 それでも実力はクラウスの方が上だろう。


 しかし、手が届かない実力差は感じなかった。


 クラウスはやや穏やかな表情で、エマを見ていた。


「試作実験機のテストパイロットだね」


「知っていたんですか?」


「特務中の部下の情報は、上司として知らないとまずいからな」


 エマの中で、クラウスは真面目に仕事をする上司という印象が植え付けられる。


 クラウスの部下である大尉が、エマの横で残念そうにしていた。


「それなら引き抜きは無理ですね」


 肩をすくめて見せる大尉に、クラウスはやや呆れた顔で注意する。


「他部隊から引き抜きは止せと言っているだろうに」


 中佐と大尉の会話とは思えないが、二人の会話で部隊内の雰囲気が悪くないのだとエマは察することが出来た。


 大尉はクラウスに軽口を叩く。


「うちの部隊を強化するためですよ。クラウス隊長殿の負担を軽くしようという、涙ぐましい部下の気持ちを察して下さい」


「他部隊からのクレーム処理をしているのは私なんだが?」


 大尉がナンパやスカウトをすると、その苦情はクラウスに届くようだ。


 大尉が手を合わせる。


「いつも感謝しております」


「――新型の受領が控えている。教育カプセルや機種転換訓練もあるから、遊びも程々にしなさい」


「了解です」


 男装の麗人という印象が強い大尉だが、クラウスに対しては女性的な魅力を見せていた。


 随分としたっているようだ。


 ただ、エマは新型の方が気になる。


 騎士が新型と言うなら、それは機動騎士のことだろう。


「第七の新型を受領するんですか? それってもしかしてあたしたちも!!」


 エマはすぐに壁の方を向いた。


 そこに表示されているのは、第七が開発した新型機【テウメッサ】だ。


 スマートな機動騎士で、その頭部は狐を思わせるデザインをしている。


 既にバンフィールド家の一部に配備されており、活躍しているという噂はエマの耳にも届いていた。


 今回の任務では装備の更新も含まれているため、騎士たちは「もしかしたら新型を受領できるのではないか?」という期待を持っている。


 瞳を輝かせているエマに、クラウスは表情を変えずに伝える。


「悪いが、第七の生産状況の兼ね合いもある。君たちの部隊に新型が配備されるかは、現時点では不明だ」


「そ、そうですか」


 自分にはアタランテがあるのだが、せめて同じ小隊――同じ部隊にも新型が配備されて欲しかった。


 それだけでも、生存率は大きく変わってくる。


(新型がもらえたら、みんなもやる気を出してくれるのかな?)


 部下たちの顔を思い浮かべていると、先程まで黙っていたチェンシーがエマに近付いてくる。


 無遠慮に顔を近付け、あと一センチで鼻が触れる距離となった。


「え? あ、あの?」


 黒く底の見えない濁った瞳で見つめられたエマは、怖くて動けなくなった。


(か、体が動かない!?)


 いつの間にか体が震えて、冷や汗も噴き出していた。


 騎士として圧倒的な実力差があるのを感じ取り、体が恐怖に震えていた。


 何よりも怖いのは――相手の強さが未知数という点だ。


 クラウスがチェンシーを止める。


「チェンシー、中尉から離れろ」


 クラウスもチェンシーの危うさを感じ取ったのだろう。


 ただ、大尉の方はチェンシーに対して口出しも出来ないようだ。


「この場で暴れるなんて勘弁して欲しいわね」


 エマは次の瞬間にも自分が殺されるイメージが次々に湧き起こり、ガタガタと震えてくる。


「あ、あ――」


 最初は興味深そうにエマを見ていたチェンシーだが、怯える姿にガッカリすると距離を取る。


 腰に手を当てて。


「勘違いだったみたいね。――あなた、つまらないわ」


 チェンシーが背を向けて歩き去って行くと、エマはようやく解放された安堵から大きく呼吸をする。いつの間にか、息を止めていたようだ。


 その場に座り込もうとするエマを大尉が支えた。


「あいつに睨まれるとは、君も運がないわね」


「ど、どうしてあたしなんかを」


「時々いるのさ。戦うことしか知らない騎士もどきってやつがね」


「もどき?」


「戦争が大好きで、自分が死んでも構わない頭のネジがぶっ飛んだ奴らよ。強い奴がいたら挑みたくなるらしいわよ」


「あたしなんて全然弱いですよ」


 自分を卑下するエマに、クラウスは優しく語りかける。


「あいつは問題児だが、実力を見抜く目は本物だ。中尉に何かあると感じ取ったのかも知れないな」


 そう言ってクラウスは、問題児のチェンシーを追いかける。


(あたしの中に才能?)


 すぐに思い付いたのはアタランテの操縦だった。


 誰も乗りこなせなかった機体を操縦できたというのは、挫折が続いたエマにとっては自分が騎士であっていい理由である。


 ただ、それ以外には名にも思い付かない。


(あたしには――アタランテの操縦以外には何もない。それ以外は何もないや)



 第七兵器工場のドッグに、三隻の戦艦が停泊する。


 持ち主は傭兵。


 傭兵団の名前は【フィート】。


 率いるのは美しい女性の【サイレン】だ。


 黒い髪に赤目という彼女は、第七の関係者と話をしている。


「補給と整備をお願いしたいのだけれど?」


 品のいいお嬢様風に接すると、第七の関係者は困った顔で頭をかいていた。


「うちで補給や整備を受ければ、他より割増しになりますよ。傭兵団なら、他で受けた方がいいと思いますけどね」


 半官半民とはいえ、帝国軍の軍事力を支えている兵器工場だ。


 軍や帝国貴族以外のお客となれば、扱いが悪かった。


 第七の関係者は、親切心から他で補給や整備を受けたらいいと勧めている。


 だが、サイレンは退かない。


「急がないと次の仕事に間に合わないの。それに、次は大きな仕事だから、念入りに整備しておきたいのよ。――なんなら、新型だって割増しで買うわよ」


 大仕事の前の準備と聞いて、第七の関係者は小さくため息を吐く。


「請求額を見ても怒らないで下さいよ」


「ありがとう」


 サイレンは微笑むと、第七の関係者に尋ねる。


「それから――新型はどこに行けば見られるかしら?」



 第七兵器工場にある機動騎士保管エリア。


 そこに並べられていたのは、売れ残りとなった商品だった。


 そのうちの一機の足下では、エマたちが機体を見上げている。


 エマは素直な感想を呟く。


「――狸?」


 テウメッサと違い、丸いフォルムをした重厚感のある機動騎士は【ラクーン】。


 ラクーンはテウメッサよりも先に完成しながら、正式採用されずに在庫として何百機と保管されていた。


 第三小隊の面々を案内してきたドワーフの班長【マグ・マ】は、深いため息と共にラクーンについて話し始める。


「こいつは“マッド・ジーニアス”が開発したうちの最新鋭機だ。見た目こそ可愛いが、性能だけならテウメッサにだって負けてねーよ」


 マッド・ジーニアスという二つ名に、エマは少し引いてしまう。


 天才だがマッドという部分が、いかにも危険人物のような気がしてならない。


 一緒に突いてきたパーシーなどは、二つ名を聞いて顔をしかめていた。


「流行を無視したところが、本当に第七らしいわね。それにしても“あいつ”が関わっていたのは本当だったのね」


 どうやらパーシーは、マッド・ジーニアスなる人物を知っているらしい。


 興味を持ったのはモリーだ。


「そんなに凄い人なんですか?」


「紙一重の天才ってやつね。バンフィールド家の専属って話だけど、知らないの?」


 逆に質問されたエマとモリーは、顔を見合わせてから頭を振る。


 バンフィールド家がそのような人物を専属にしているという話は、噂でも聞いたことがない。


 パーシーは腕を組む。


「気難しい奴だから、貴族様のお相手はしないと思っていたわ」


 パーシーの評価を聞いて、マグは顔を背けて笑っていた。


「お嬢ちゃんは、そんな風に見られていたのか? ――まぁ、確かに気難しいわな」


 エマはラクーンを見上げながら、一つ疑問を抱いた。


「そんな凄い人が造ったのに、採用されなかったんですか?」


 マグは俯いて頭をかいた。


「――不運ってやつだな」


「不運?」


 採用されなかった理由をマグは語り始める。


「要求スペックは全て満たしていた。だが、バンフィールド家の騎士様たちが求めたのは、一部のエースしか乗りこなせないような特機だったのさ。テウメッサは、ラクーンから汎用性を捨てた機体だ」


 その話を聞いて、モリーは倉庫内で保管されているラクーンたちに悲しそうな顔を向けていた。


「量産機としてなら需要がありますよね?」


「テウメッサよりも安いが、モーヘイブと比べれば高いからな。あんたらの領主様が大量に買ってくれることを祈っているぜ」


 第七に派遣されたバンフィールド家の関係者たち――特に上層部の人間が、今回の装備更新について現在話し合っていた。


 状況によっては、この場に並ぶ機体はバンフィールド家が買い取ることになる。


 エマはラクーンたちを見上げながら。


「うちに来てくれたら、きっとみんな喜ぶのに」


 ついてこなかったラリーやダグを思い浮かべるエマは、彼らが新型機を受領すればやる気を出してくれるのではないか? そんな未来を想像する。


 モリーも同じ意見だったのか、エマに話しかける。


「いいね。そうなったら、うちが完璧に整備してあげるよ」


 二人がそんな話をしていると、パーシーが小さくため息を吐いた。


 余所の機動騎士に興味を持つのが面白くないようだ。


「アタランテがあるのだから、ネヴァンで揃えなさいよ。その方が見栄えもいいわよ。それに、バンフィールド家の主力量産機は第三のネヴァンですからね」


 バンフィールド家を支える機動騎士は、第三兵器工場製のネヴァンタイプだ。


 伯爵がどこよりも早く採用した次世代機ネヴァンは、バンフィールド家にとってなくてはならない存在だろう。


 マグがパーシーに詰め寄る。


「そのバンフィールド家が、うちのお嬢ちゃんに量産機の開発を依頼したんだが?」


「――本当にあのマッドは余計なことをしてくれたわね」


 騒がしくなってくると、倉庫内に他の客が現れる。


 第七の関係者が連れて来たのは、どうやらお客さんのようだ。


(うちの関係者じゃないから、他のお客さんかな? 随分と綺麗だなぁ)


 同じ女性ながら見惚れてしまう魅力を持っていた。


 エマがそちらに顔を向けると、黒髪の女性が気付いて微笑んでくる。


 すぐに案内してくれる第七の関係者に顔を向けると、倉庫内に保管された特別な機体を指さす。


「あの機体はどうして金色なのかしら?」


 倉庫の中には金色に塗装された趣味の悪いラクーンが用意されており、それを女性が気にかけていた。


 気に入ってはいない。


 ――むしろ、センスを疑っているようだ。


 第七の関係者が困惑しながら説明する。


「あれは特機ですよ。他の機体よりも性能は二割増しですからね。それに、使われているのはレアメタルの特殊装甲ですからね。特注品ですよ」


「それにしたって、金色はないでしょうに」


「本当はお得意様にお届けする機体だったんですよ。ただ、性能と引き換えに、アシスト機能は完全に取り払っていますけどね。オプションで取り付けるのも難しいですし」


「その分、性能は高いのよね?」


「もちろんです。とんでもないじゃじゃ馬ですけどね」


「見た目と色以外は気に入ったわ」


 気に入ったと言われるも、関係者は頭を振る。


「こいつは販売していませんよ」


「――それは残念ね」


 そう言って、女性は倉庫を出て行った。


若木ちゃん( ゜д゜)「ついに明日は【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 10巻】の発売日ね。巻数が二桁になるって結構凄いわね。……そのうち、このあとがきのアイドルである苗木ちゃんが登場したのは、どれくらいになるのかしら? もっと出番が増えてもいいと思うの」


クレアーレ( ○)「アニメ【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です】の【9話】が本日より放送、配信されるわ。そっちも楽しんでね!」


若木ちゃん(#゜Д゜)「あちきの邪魔をしないで!」


クレアーレ( ○)「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です だけど、スピンオフ漫画【乙女ゲー幼稚園はモブに厳しい幼稚園です】もドラゴンエイジさんで7月号からはじまるわ。そっちも楽しんでね!」

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― 新着の感想 ―
[一言] リアムに売るなら金色だわなw
[良い点] アタランテは一度破壊されて金狸で立ち向かうパターンか。
[一言] 金色…肩に「翻・鉾(ポン・ポコ)」とかデザインされていて欲しいなwww
感想一覧
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