エピローグ
【俺は星間国家の悪徳領主!】
が
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バンフィールド家本星ハイドラ。
クリスティアナの執務室にやって来たクローディアは、ある電子書類の許可を求めていた。
そこに書かれた内容を見て、クリスティアナが小さなため息を吐いて微笑する。
「エリートでも新人は数年Cランクで様子を見てから、騎士ランクの昇格を決めるのは知っているわよね?」
バンフィールド家では、エリートたちでも数年間はCランクとして扱う。
例外などなく、戦闘で生き残ってはじめてBランクへの昇格が見えてくるためだ。
エマのように短期間での昇格は異例になる。
「はっ」
返事をするクローディアに、クリスティアナは僅かに嬉しそうにしていた。
面倒な手続きを持ち込んできた部下が、成長の兆しを見せたのが嬉しかったからだ。
「まさか、クローディアがエマ・ロッドマン少尉をBランクに推薦するとは思わなかったわ」
「――私の評価が間違っていただけです」
素っ気ない返事をする部下に、クリスティアナは悪戯心が芽生える。
エーリアスで起きた事件の詳細は報告されており、クローディアの報告書について問題を指摘する。
「あの子の才能を見抜けたのは、あの方のみ。そう自分を責めなくてもいいわ。それよりも、メレアの脱走について不問にしたそうね。クローディアなら、これを理由に全員を除隊させると思っていたのに」
責任者である司令の大佐を銃殺し、残りは問答無用で除隊処分。
以前からクローディアが望んでいたのに、今回は選ばなかった。
「戦力として数えなかったのは私です。私の責任です」
「そうね。もっと効果的に運用していれば結果も変わったでしょうね」
クスクスと笑う上官を前に、クローディアが自分の責任について尋ねる。
「それだけですか?」
「罰を求めているなら、残念だけど諦めなさい。あなたを遊ばせておく余裕はないと言ったはずよ。今後も働いてもらうわ」
軍の規律から言えば納得できない結果に、生真面目なクローディアが難色を示す。
しかし、クリスティアナは譲らない。
そして、クローディアからの推薦されたエマの扱いを決める。
「――エマ・ロッドマンの昇格は認めます。ただし、配属先に関しては変更できないわ」
メレアから移籍できないと聞いて、クローディアが目を細めた。
どうして、左遷先に置いたままなのか、と。
「何故です? 今の少尉ならば――」
「特機とセットでなければ運用できない騎士をどこにでも配置できないわよ。それに、第三兵器工場からのご指名よ。少尉の部隊に開発チームを派遣したいと言っているわ」
アタランテを操縦して見せたエマに、第三兵器工場は特別チームを編成して送ると打診があったと告げた。
クローディアもエマの特殊な才能を考えて、仕方がないと受け入れる。
「しばらくは新型機のテストパイロットですか」
「メレア自体を試験部隊として運用します。ただ、少し面倒もあるのよね」
クリスティアナが小さなため息を吐くと、クローディアの前にメレアを母艦とした実験部隊の編制内容が表示される。
クローディアが顔をしかめた。
理由は、技術試験のためにメレアを改修する計画が出ているためだ。
その改修を依頼する先が問題だった。
「メレアは第七兵器工場製でしたか」
「――あの方を通じて、第三兵器工場の技術を入手するつもりね。そのために、メレアの改修を申し出てきたわ」
技術試験目的ならば、軽空母の改修が必要だろう――と。
「よろしいのですか? あの方を利用する真似は許されません」
クローディアが不快感を示すが、クリスティアナは頭を振る。
「その“リアム様”が、お許しになったのよ」
許可を出したのがリアムだと聞いて、クローディアは口をつぐむ。
クリスティアナは、エマ・ロッドマンの昇進もこの場で決定する。
「エマ・ロッドマン少尉は、本日付で中尉に昇進させます。初陣はともかく、今回の作戦での功績は大きいわ。――あの方に期待をかけられた騎士でもあるからね」
クローディアが僅かに驚きながらも、クリスティアナに礼を言う。
「昇進まで――ありがとうございます」
「いいのよ。今後は中尉にも働いてもらうことになるわ。報酬の前払いみたいなものね」
エーリアスの事件を経て、エマはエリート以上の出世を果たした。
ただ、クリスティアナはエマの今後を予想して心配する。
「大変なのはこれからよ」
◇
ハイドラにある自然公園。
見晴らしのいい場所に来たエマは、ベンチに座ってハイドラの景色を眺めていた。
エーリアスに向かう前と同じ景色だ。
昇進と昇格が知らされたが、エマ自身は正義について考える。
「あたしの正義って何だろう」
自分を悪と断言するリアムの話を聞いて、エマは自身が目指す正義について深く考えるようになる。
追いかけていた人が悪党を名乗っていた。
それがエマを悩ませる。
弱い人たちを守るために、騎士を目指した。
その思いは変わらない。
だが、その正義を体現するリアム本人は、自身を悪と認識している。
目指しているのが悪人だった。――追いかけるのは正しいのだろうか?
ただ、その悪人が自分よりも正しいように見えていた。
平和なハイドラの景色を眺めていると、エマは何が正しいのかと悩む。
そんなエマの隣に、知り合いの老人が腰を下ろした。
いつの間にか現れた老人に、エマは驚いた。
「お爺ちゃん!? き、来たなら声をかけてよ。ビックリしたよ」
「それは失礼しました。ですが、騎士が素人に近付かれて気付けないのは問題ですよ」
「そ、それはそうだけどさ」
落ち込むエマに、老人は微笑みかける。
「無事に戻られたようで何よりです」
「――うん」
「どうやら悩みがあるようですね。このブライアンでよいなら、話くらいはお伺いしますよ」
悩みを聞くという老人――ブライアンに、エマは空を見上げながら本音を吐露する。
「正義を目指していたのに、憧れた人が悪だったの。自分で悪党だって」
「あぁ、それは」
老人は口元に拳を当てて、何やら考え込む。
エマは相談を続ける。
「ずっと正義の味方だと思っていたのに、本人は自分を悪党だってさ。あたしは何も知らなかったし、何も見えていなかった」
目の前に広がる平和な景色を作りだしたのが、悪党だとはエマは信じられなかった。
だが、自ら悪党を名乗っている。
何が正しいのか、エマにはわからない。
何よりも、この景色を作り出すために悪党になったリアムの覚悟だ。
自分がのんきに正義を目指していたのが、恥ずかしくなってくる。
「あたしは間違っていたのかな?」
「――あの方はお優しい方です。故に、自分の行いを一番理解されているのでしょうね」
「え?」
老人がうつむき加減で、優しさについて語る。
「この惑星を守るために、強くならねばならなかったのです。誰よりも強く。そして、その手を血で染めるしかなかった」
「お爺ちゃん?」
「もしも、あなたがあの方を悪党と思われるのなら、それは間違いではありません。ただ、少しでも違和感があるのなら、その小さな違和感に耳を傾けてください。心に僅かでも違うという叫び声があるのなら――」
エマはそう言われて、立ち上がって胸に手を当てる。
そして、自分の心の声に耳を傾けた。
――リアムは悪である。
そう自分に言い聞かせると、奥底で違うと言う少女の声が聞こえた気がする。
それは幼い頃のエマ自身。
あの日、アヴィドを見て騎士を目指すと決めた少女が、大声で違うと叫んでいる気がした。
目の前の景色を見ろ、と。
あたしは信じている、と。
幼い頃のエマは、まっすぐな瞳でそう自分に語りかけてくる。
昔の自分に怒られたような気がして、エマは涙を流して微笑む。
涙を拭いながら。
「――悪党には思えないよ」
そんなエマの姿を見て、老人は目尻を指で撫でた。
エマの答えが嬉しかったのだろう。
「そう思っていただければ、あの方も救われるでしょう」
老人も立ち上がる。
「これからが大変ですぞ。特機を受け取るということは、それだけの働きを期待されているのと同じですからね」
「うん」
エマは老人の言葉で、新たな決意をする。
(落ち込んでいる暇なんてない。あたしはこの道を進み続けるって決めたんだから)
あの人の後ろを追いかけて、一体何が見えるのか?
まだ、エマには想像もできなかった。
老人が去って行く。
「若き騎士の未来に、このブライアンは期待しておりますぞ」
最後にエマに言葉をかけた。
ただ、エマはここで気付く。
「あれ? どうしてお爺ちゃんがアタランテのことを知っているの? え? も、もしかして――お爺ちゃんってお金持ち!?」
ブライアンが誰と繋がっているのかまでは、エマには想像がつかなかった。
リアム(;・∀・)「……身近な人間が俺を少しも理解していなかった。ちょっとしたホラーだな」
天城( ・∀・)「旦那様、宣伝でございます」
リアム(#´∀`)「盆栽に言われるまま宣伝する俺じゃない」
天城( ・∀・)「旦那様、アレはブライアン殿の盆栽ではありませんよ。寄生されて困っていると仰っていましたからね」
リアム(#・∀・)「――そいつを見つけたら燃やしてやる」
エマ( ;∀;)「うわああああ!! 【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です9巻】 が【11月30日】に発売です! 今回から新章も開幕し、新キャラも多数登場するので是非とも書籍を購入してお確かめください!!!」
ブライアン(*´ω`) (エマ殿ファイト! ですぞ)
※これにして【外伝1章】は終了となります。
いかがだったでしょうか?
俺は星間国家の悪徳領主! の世界を別視点から楽しんでいただけたら、作者としても嬉しく思います。
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