醜悪
見るな、見るな、私を見るな!!常に視線を感じる…。誰だ?お前の目的は何なんだ!!!
その視線は、およそ気持ちのよいものとはいえず、むしろねっとり舌で嘗められるような感覚だ。己の存在の是非を問われているような、、、そう、査定だ。
この査定に終わりはない。美しい顔、美しい所作、美しい力…。決して油断をしてはいけない。奴らは、その油断で生じる一瞬の隙を狙っているのだ。奴らはハンターであり、獣であり、それ以前に同族であり、友達であり、家族であり、私の生みの親である。奴らは常に私を見ている。そして期待しているのだ。私が、自分たちとは違う、醜悪な獣になることを。
仮に私がその醜悪な獣に成り果てた時、奴らは狩りを始める。狩りは古来より退屈な人生を豊かにする娯楽の最高峰であり、その歴史は古い。昔はどこの世界でも刀なり槍なり弓なりと、形ある武器を使うことができたが今は違う。許可なくそういった物を使うと鎮圧される世の中になった。ならば、目に見えぬ武器を使えばよい。誰でも簡単に使うことができ、刀よりもスパッと斬れる武器を…。だから皆、昔の人よりも分厚い仮面を被るのだ。
今を守れ。世を守れ。大切な物を守れ。ならば決して目立つな。目立てば、己より先に大切な物をすべて狩られてしまう。ほんの少し、ほんの少しだけ刀身を見せるだけでよい。そして隙あらば、こっちから斬るのだ。やられる前に…。
こんな世の中であるので、皆常に誰かを観察する。斬れるか否かを観察する。もしくは、自分が斬られないようにするために観察する。静かな殺し合いは、今日も続く。
ー完結ー