6章 後悔
六章 後悔
泣いている声が聞こえてくる部屋には彼女の不遇に対する、悔しさと切なさ、彼女の母の悲しみが満ちている。
彼女の母親も痛いほど自分の娘が置かれている状況をわかっている。
お互いに何もできない事、相手の気持ちがわかると感じた事が苦痛だった。
そして時間が経ち泣き止んで、何か思い詰めてる顔をする母は急に彼女の首元に手を掛ける。
「栞菜、一緒に死のう?私もう耐えられない、娘がこんな状態なのに何も出来ない、希望も無い。辛いのよ…。」
母はそう言いながら弱々しい腕に力を込めた。彼女は恐怖と苦しさ、痛みをその動かない体に受けている。
だが、初めての感覚では無い。
彼女はこの息を出来ない頭が機能しない感覚を頻繁に感じていた。
〈苦しい、痛い助けて。〉
彼女は心の底から恐怖する。
彼と出会った他時とは違う死ぬという恐怖が彼女を襲う。
彼はそれを察し、手慣れたように母の首元を撫でた。
彼女の母は我を取り戻し彼女の首元から手を離しまた泣く。
「ごめんね、痛かったよね。
私親なのに子供を殺そうとするなんて、ごめんね。」
そして母親は足早に病室を後にした。
〈毎回、お母さんを止めてくれてありがとう。〉
栞菜には確証がなかった。
だが、彼が守ってくれていたことを察した。
「君のお母さんも苦労してるんだね、僕には彼女に、自分がやっていることを気づかせるきっかけを、与えることしかできないんだ、ごめんね。」
彼は死んでしまった自分の不甲斐なさを深く後悔した。