3章 共有
昔作った小説なのであまり上手くないですね。
けど書き留めてた分は一日ペースで投稿しようと思います。
正直めんどくさいので!
三章 共有
彼女にとって救いの夜が明け辺りが黄金色に染まる、彼女は眩しさにより目が醒めた。
「起きたかい?おはよう。」
いつもとは違う奇妙な朝だった。
奇妙な朝だが声が聞こえるだけではないそれ以上に不思議な事が起こっている。
顔を覗き込む白衣に身を包んだ30歳代の男性がはっきりと見える、昨晩話をした彼だとすぐに気がつく。
彼だけが見えている訳では無い。
視界が鮮明に色付き長年のうちに忘れてた枠取りがされている色が見えている。
彼女は驚いた、そして気がついた、手の甲に冷たい何かが覆いかぶさっている。
彼女はすぐにわかった。
〈これは昨夜と同じ、頬を撫でた冷たい感触。〉
「あ…ごめん、君が寝たあと思いつきを試したくて手を握ってた」
彼は心の声を聞いてとっさに手を離した。
離した途端何かが途切れたように視界がいつもの靄のかかった物に変わる。
彼女はとっさに呼び掛けた。
〈もう一度、もう一度触って!〉
彼女の感極まる心の叫びに彼も驚いて即座に手を置いた。
その際勢い余って手を叩いてしまった。
〈いた!え…いっ痛い?〉
彼女は驚いた。彼が触れていると体の痛覚や視覚の感覚が鮮明に伝わってきた。
昨日まで諦めていた感覚が全身をめぐる。
少し黒点やぼやけは有るものの、いつもの全体的にぼやけて眩しいだけの天井は白く、ポールが伸び、そこから薄いピンク色のカーテンが伸びている、周りにはぬいぐるみなどが置いてある。
そこで彼女は気がつく。
〈あれ?目が動いてる?〉
彼女の視界、昨日までなら一部しか写せていなかった、だが今の彼女の脳には確かに周囲を見て得た視覚情報が届いている。
驚きの連続で頭が混乱している彼女に。
「上手くできてるみたいだね…」
どうやら彼の憶測が今の事象を起こしているらしい。
彼はその出来事を見て安堵する。
〈え?なに?え…〉
彼女は彼の言葉の意味を理解しようと必死に落ち着こうとする。
「えっと…君と僕の感覚を共有してみたんだ、君が起きる少し前に思いついてね…」
彼女は未だ驚いているが、次第に見知らぬ感覚に苛まれ恐怖心を芽生えさせていることに気がついた。
「君は慣れなくて怖いと思うがこれが人間としての普通なんだ、償いには足りないけど、君をこんな目に合わせてしまった僕が、今出来ることは擬似的にでも普通を取り戻す手助けをすることなんだ…」
感覚や視覚が戻って嬉しいが、それと同時にこの感覚を再び得ることにより得られる情報をどのように処理すれば最善なのか。
いつかは奪われるのではないか。
不安が彼女の心にまとわりつき、彼の善意を素直に受け入れるべきなのか迷わせている。
「僕は消えないよ、君のことがずっと気がかりで成仏できないでいるんだ、一種の地縛霊だよ、だから次第に慣れていこう。」
彼は迷う彼女を背にそう応えた。
彼女が少し落ち着いてきた頃、新たな2つの感覚が彼女を襲う
人は落ち着くと無意識の中に留めておいた感覚が現れる、眠気や脱力感といったものはその中に含まれる。
だが、その2つ以外の感覚が彼女を襲っている。
1つは空腹感、そしてもう1つは尿意だ…
彼女は尿意を覚える事により、1つの気持ちを覚えた。
〈後ろ向いて、お願い…〉
彼は彼女の感情を察して即座に背を向ける。
尿意は次第に収まってきた。
排出し終わると彼女は無意識に入っていく。
彼女は尿カテーテルにより排出しパックに溜まっていく不純物を隠せない。
そんな自分の不遇な在り方に憂鬱を覚えた。
ふと彼女の意識は戻ってきた、そしてパックに目を向ける。
排出したはずだがパックの中の不純物は増えていないように感じる、実際には増えているのだろう。
だが彼女には尿意を催した後のパックの記憶しか無い、何故なら恥じらった時にはすでに事は起こっていた。