第1回ラノベフューチャーキャス 放送後記
【概要】
現役のラノベ作家、書店員、ブロガーやラノベ読みが集い、
今後のラノベの未来について語り合った『ラノベフューチャーキャス』。
これは2時間にわたってお送りした内容を短くまとめた放送後記です。
【2018年12月21日(金)に放送】
今回のテーマは、
『ライトノベルをもっと多くの方に楽しんでもらうには』です。
※放送後記は、ツイキャスで実際に放送したものを文字起こしし、
相槌部分や重複した話題、テーマと関連性の薄い部分を大幅にカットして
再構成したものです。
【人物紹介】※敬称略
うぃず……北国のラノ担書店員。ライトノベル感想ブログ管理人。
夏鎖……夏鎖芽羽。ラノベブログ「本達は荒野に眠る」の管理人。
Valk…… ラノベブログ『勝手にラノベハスラー』の管理人。
柳川……柳川春海。ラノベ読みかつワナビかつラーメン大好きエロゲーマー。
epina……作家。代表作に『すべてのチートを過去にする異世界超科学』。
ちょきん……ちょきんぎょ。作家。代表作に『転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい』。
界達……界達かたる。作家。代表作に『姫ゴトノ色 -The Eyes of Blood-』。
うぃず:なんか、コメントで「切り込め切り込め!」って言われてるので、そろそろまともに切り込んでいきますか。
epina:なにを切り込めって書いてあんのかな。
うぃず:たぶん、どうして売れないのか的な話だと思います。
epina:そうですね、そろそろ人数的にもいい感じになってきましたし、本題に行きます?
うぃず:切り込みますか。はい、危険球行きます。『ライトノベル、どうして売れないのか』問題。
epina:はーい。本題でーす。
うぃず:はい。ライトノベル業界は現在、非常に窮地になっております。
たとえば、レーベルが凄い推して、書店側でも推してみたいなことをしても、40冊入荷したのが1冊も売れなかったりとか。そういうヤバイ時代になっております。
界達:おうふ……。
うぃず:みなさまは、ライトノベルが衰退しているのは実感されていましたか?
epina:バブルが終わったんだな、とは思いましたね。売れなくなっているというよりは、感触としては、元に戻っているな、という感じはしました。
うぃず:ああ……。
epina:今のようなライトノベルがまだあまりなかった頃に戻りつつある。いわゆる『スレイヤーズ!』とか、ヒット作以外が売れない、っていう時代に戻ってる気がします。
うぃず:その時代を過ごした人からすると、元に戻っていると。
epina:身も蓋もないことを言ってしまうと、いわゆる『売れていた時代』に戻すことはもう無理で、この状況をどう乗り越えて、滅びないようにするかを考える方が大事かなという気はします。
うぃず:epina先生はあれですか、延命処置って感じですかね。
epina:いや、ちょっと違って……私の頃って、ちょうど就職氷河期だったんですよ。バブルが弾けて、就職がしづからかった時代の人間なんですけど、みんな生き残りに必死だったんですよ。それに近い感じ。ライトノベルが今。レーベルとかもそうだけども。
まさに今、ライトノベル氷河期が到来していて、みんな生存するための戦略を必死に模索しているみたいな。あくまで私個人の感触ですけど。
うぃず:それは売り場でも感じますね。色々な戦略、挑戦を見るんですけど、中々どうも効果は出ていない。
epina:だからみなさん、それぞれあがいているとは思うんですよね。そういう時代が来てしまったので。
うぃず:そうですね。では、コメントの方にもちょっと触れますか。
軽く見てみると、『暇つぶしの手段が増えた』とか、『表紙が似たり寄ったり』だとか、『スマホのせい!』ってのもまさしくって気がするんですけど……まあスマホというか、コンテンツが増えましたよね単純に。
epina:コンテンツが増えたことによる娯楽の多様化は、ゲームとかにも言えますからね。ラノベだけでなく。
うぃず:もう中々、群雄割拠になってますからね。ラノベの敵はラノベではない、って感じがしますね。
epina:もうむしろ、ラノベ以外全部敵!
うぃず:ふふふ(笑)
epina:無料コンテンツも凄い増えたし、小説家になろうなんてものはその最たるものですし……もう、ここから逃れようなんてことは、恐らく不可能なんですよ。
うぃず:どんどん絶望が深まっていく……。
epina:上手くやり方を変えて食い込んでいかないと、ライトノベルもいずれ、全部無料にしないと読んでもらえないような時代が来てしまう恐れがあります。
うぃず:それは中々の地獄ですね。
epina:どう間口を広げるかだけど……そこまで行くとそろそろ私の領分を超えるので、そろそろ黙ります(笑)
うぃず:別に黙らなくてもいいですけど……僕ちょっと、夏鎖さんの『FGOでライトノベル読みが持っていかれちゃったイメージある』ってコメントを掘り下げたいんですけど。
夏鎖:FGOが賑わっていく過程を見ていて、若い人がラノベに流すはずだった時間やお金が、顕著な例ではFGOに流れちゃったのかなという感触があります。
うぃず:趣味費がすべてスマホゲームに吸われていると。
夏鎖:今のソシャゲに関しては結構、熱いストーリーが読めてしまう。そうするとラノベと食い合ってしまう、あるいは負けてしまうのかなと。
うぃず:僕が高校の頃も、かなりソシャゲに課金している人がいたんですけど、そういう人はもうそのゲームの話しかしなくて、本とか全然読まないみたいなんですよ。
夏鎖:ラノベは共有のハードルが高いんですよね。スマホ社会で簡単に他人と繋がれる中で、ラノベよりソシャゲの方が共有しやすいっていうのはあると思いますね。
うぃず:共有できるものはいつの時代も強いですよね。
Valk:高校生のいわゆるオタクと呼ばれる人は、大人と比較すると流行に左右されやすいという部分はあると思います。だからソシャゲに流れるのも仕方ないのかなと。
epina:そうですね。FGO以前からある流れだと思います。
うぃず:FGO以前だとオンラインゲームとかもそうでしたね。
Valk:というか、ライトノベルもその流行の一つだったんだと思いますよ、僕は。
うぃず:ラノベもムーブメントの一つで、それが終わってしまい次のが来てしまったと。
epina:ソシャゲがアニメ化する時代ですからね。もうラノベ原作とか廃れてしまい、売れているコンテンツからのアニメ化が主流になってしまうかもしれません。
うぃず:売れてるコンテンツからっていうと、最近ラノベではアズールレーンのノベライズが盛んに行われています。それは爆売れはしないが、普通に売れる。
でもこれはアズールレーンが売れているのであってラノベが売れているわけではない感じなので、アズレン終焉と同時に結局ラノベも売れなくなるのではと。
その顕著な例として、すでにもうFGO関連書籍が売れなくなってきているんですよ。
epina:えーそうなんですね。
うぃず:絶対王者のFGOですら下がってきています。今だとドールズフロントラインが人気出てきていますが、恐らくFGOほどの人気にはならない。
夏鎖:そうですね、アズレンほども来ないと思います。
Valk:そもそもFGOがよかったのはフェイトっていうコンテンツ力があったからこそですしね。
epina:確かにフェイト、いや奈須きのこの力かなぁ……。
Valk:たぶんそこまでしっかりした地盤がないと、一大ムーブメントにはなりづらいのかなと。
うぃず:ラノベも電撃とか、編集の力でのし上がってた部分はありましたね。今は落ち着いてきましたが。
柳川:共有の話についてなんですが、すでにコンテンツ産業では『感動の共有』がテーマになっています。音楽産業ではCDの売上が落ちた代わりに、ライブの売上が右肩上がりになっています。映画業界でも、応援上映や爆音上映などが人気を博しています。
うぃず:ラノベにどう応用するかですよね。それこそValkさんがやっている『ラノベビブリオバトル』とかでしょうか。ただビブリオバトル自体がまだマイナーかなぁ。
Valk:紙媒体では難しい。ニコニコ漫画でも動画と同じようにコメントが流れる仕様になっていますが、やはり読みづらく、動画の時のような一体感は薄いです。活字だけのラノベではなおさら難しいでしょう。
柳川:ラノベを声優さんが朗読するというコンテンツが出てきてますよね。
夏鎖:オーディブックのことですね。ちょっと前だと、君の膵臓を食べたいとか。でも七時間くらいありましたよねあれ。
柳川:下手したら普通に読むより長い(笑)
Valk:ネタバレを避けつつ広めるというのもラノベでは難しい問題ですね。
柳川:作品をリアルタイムで書きながら、音声として読み上げるスタイルはどうでしょうね。それを作家同士で書き合いをして、ユーザーに楽しんでもらうみたいな。
Valk:聞き流しながらで理解できると話となると、ジャンル的に日常系などに限られてくる上、結局地の文が邪魔になってしまいますね。
うぃず:さすがにすべて声優さんが読むのはコスト的にも厳しいので、自動で読んでくれるサイトがあったら楽かもしれませんね。
ちょきん:ボカロでよくね?
うぃず:そうかもしれませんね(笑)
あと最近、何故カノや継母など、宣伝に上手く漫画を使うラノベを見ますね。コミカライズとはまた違う手法です。
夏鎖:ラノベの中に漫画を入れるって昔からある手法ですけど、あんまり売れてる印象はないですね。
うぃず:しかし何故カノや継母は、書店でも手に取っている人が多いです。発売前に上がっていた漫画も出来がよかったので、効果があったのだと思います。
柳川:エロゲ業界ではPVが出た時が一番盛り上がるんですけど、ラノベはどうなんですかね。
夏鎖:タイトルとイラストが出た時でしょうか。発売前にはもう買うムーブになっているので、それほど話題する人が多くないのだと思います。
柳川:ラノベは発売前から、無名の作家でも期待されるってことがほぼないですよね。そこをもっと頑張ると、新人賞受賞作でも初動が上がるんじゃないかなと思いました。
夏鎖:広告費などの問題で難しいでしょうね。このラノ取っても厳しいレベルなんです。
うぃず:このラノに乗っかって、レーベルが色々な企画ができるようになるのは評価できます。が、このラノがものすごく売上に影響しているかというと、現場からはそうも感じていません。
柳川:エロゲ業界では、無名レーベルでもスマッシュヒットすることあるんですけどね。発売前からめちゃくちゃ注目されることもあります。でもラノベではほとんどない。
うぃず:なぜ今のラノベ読者は盛り上がれないんでしょうね。
柳川:コンシューマーが積極的に盛り上げにいってるかどうかの違いかなと思います。もっと僕たちオタクが盛り上げてあげるべきなのかなと。
夏鎖:ラノベってSNSで目立てないんですよね。読書自体、みんなでするものじゃないですし。
epina:私もそうですね。読書は自己完結するもので、あまり人に話したくない感じでした。
柳川:僕は逆でしたね。面白いものはとにかく人に勧めたい感じなんです。
epina:ラノベは一人飯って感じがする。さっき言ってた共有って話は、アニメ化になってから考えるものかなと。
Valk:シナリオゲームだったら大長編なものが多く、ユーザーも買う以上は期待する。でもラノベはそうじゃないので、それほど期待して買わないんですよね。そこも盛り上がらない問題なのかもしれません。
柳川:ものすごく分かる。ものすごく分かる。ものすごく分かる(笑)
ちょきん:本屋さんで本を買う人の理由で一番多いのは、本屋さんでの一目惚れ。SNSや公式サイトでの告知を見て買う人より多いそうです。だから書店員さんが推してくれるのが一番効果があると思います。
うぃず:書店の来客数も減っていて、下手すると若い人はコンビニで漫画を買ったりします。
epina:そういう人たちはもうしょうがないので、来てくれる人にいかに売っていくか。それが大事になってきますね。ほかには、外部でどれくらい有効な告知ができるか。
うぃず:私の書店はいわゆる専門店ですが、若い人は中々来ない、けどたまに見えられる方は、「こんな店あったのか」と目を輝かせて、面白そうと思ったラノベはマイナーなものでも買っていかれるんですよ。そういうのを見ると、書店さえしっかりすればラノベだってまだまだやれるのではないかと思います。
ちょきん:最近はSNSで、作家さんや編集さんに関する負のツイートも見かけます。が、今回のテーマは『ライトノベルをもっと多くの方に楽しんでもらう』じゃないですか。私たち作家側がヘイトツイートしていてもダメですよ。
うぃず:一種の不信感が出ちゃいますよね。ラノベ読みとしては心当たりばかりあります(笑)
ちょきん:「打ち切りになりそうだから助けて」みたいなツイートも見かけますが、あれは飯屋でたとえると「うちの店は客いないから誰か来て」って言ってるようなもの。やらない方がいいです。もっと明るいこと言った方がいいでしょうね。
epina:じゃあ盛り上げていくために、私たちはポジティブなツイートをいっぱいしていきましょうってことで。
うぃず:暗い話題より明るい話題の方がいいのは間違いないですからね。
<今回の要点>
・ラノベ業界は氷河期に突入している!
・ラノベの敵はソシャゲなど、ラノベ以外の全部!
・ラノベはソシャゲなどに比べ、感動の共有が難しい!
・最近では、宣伝に漫画を上手く組み込んだラノベがよく手に取られている!
・クリエイター側やラノベ好きでポジティブな情報を発信していくことで、ラノベ業界を盛り上げていけるかもしれない!
お読みいただきありがとうございます!
第1回でしたが、非常に内容の濃いキャスだったと思います。
「ところで界達、あんた序盤で『おうふ……』ってうめいただけじゃね?」
振り返ってみるとそうですね…笑 途中死んでたんです許してください。
実際の放送はこちらのURLからどうぞ!(>_<)
【https://twitcasting.tv/rano19254367/movie/514248175】
文責:界達かたる