一章 呪われた青年
配給が終わりセレウス共青年達が食膳の祈りを捧げ、団欒の時を過ごしてるのだが時折金属音が目立つ。
『おいいつまでやってるんだ』
セレウスの声が休戦協定になり二人も一家の団欒になることになった。
T字軍といっても一つの国が遠征しているわけではなく、またレコンジスタ近隣には同じくしてイエム教を崇拝する国があり、同じ志をもったものが集まってくるのである。
ゲブが所属するケルニウムはレコンジスタから見て北東に位置するため東にあるウルシャリウムにはレコンジスタに近いことになる。と言っても国境はさほど遠くないためマフディア帝国に入るころには合流することになり、いわばレコンジスタとケルニウムの連合国になるわけだ。民衆も交えた即席の連合国がどうなるかは誰もが想像できるであろう。といってケルマニウムの気質はどうも生真面目というか、生まれながらのことを全うする、いわば職人タイプの人間がほとんどなので聖地に行かなくても普段の信仰で事足りるため、わざわざ戦地に足を運ぶ民衆はいない。現にゲブの軍に民衆らしき姿はあまり見られない。むしろ顔つきだけで戦いに長けている感じがする。ケルマニウムにとってはむしろ罪人を異国の地に飛ばすことで国土治安を良くする計らいもあったかもしれない。
セレウスとゲブは若い時知人だったそうだ。
『いやーそれにしても腕を上げたなセベク、その年でそれを使いこなすのは大したもんだ』
ゲブはそう言うがセベクが持つ大剣は成人でも扱うことは到底できないような代物である。
『ありがとう』
不愛想な青年も少し嬉しそうに答える。
『なんだよおいここで食うのかよ。お前の分はあっちだろ』
『まぁ硬いこと言うなよ』
先ほどケルマニウムの人間は生真面目だといったがゲブは少し違うようだ。腰から銀カップを取り出し俺にもよこせとセレウスの前に差し出した。
『たくしょうがねえな』
口ではそう言いつつ、というよりゲブがカップを差し出す前には配給されたボトルが差し出されていた。戦場で知り合いの顔があるというのはやはり安心感があるのだろう。それとも普段連れ添ってる人間が不愛想すぎるだけかもしれないが。
『とりあえず俺たちの隊は明日後続が合流してから動きだすんだがお前らはどうするんだ』
食事が進んだところでゲブが言った。
『俺たちはユダの方に向かうことにするよ』
『じゃあまたお別れかよ。おいセベク、この甲斐性なしの面倒頼んだぞ』
無言で頷くセベクの口元が笑っていたのかセレウスは抗議した。機械文明が発達した世では見られない空の元、談合が飛び交った。