一章 呪われた青年
一章 呪われた青年
『この戦いは主の御前に捧げるものだ』
隊の前方で司祭が声を荒げ、音楽隊がラッパを吹く。石の雨が降り注ぐ中、先人隊は既に前方眼下に広がる黒い波へとかけていく。
レコンジスタ西側、マフディア帝国との国境に入るここは既にレコンギスタの生い茂る緑も少なりつつある。
己の国土の足と勝手がかわり足を取られる兵士は格好の的である。砂漠の地を昼夜駆け回るマフディア帝国の騎馬兵は土地間のないレコンギスタ兵の周りを周回し、時には雨を降らせ、時にはレコンギスタの兵に藻の用に絡みついた。
『ありゃぁダメだな』
ラッパ音より少し遠く離れた丘の先で右手で日の光を遮りながら顔に小麦を生やした持ち主が後ろに確認するように呟いた。
白い彼が声をかけた青年は少し肌に赤みがあった。青年は無表情のままであった。
『ちっ連れねえな』
愛想の悪い連れはそのままにして白い彼は更に首を後ろに返し声を張った。
『お前ら、本日の我らの神はあちらのランチをご所望のようだ。粗相のないようにな。』
手をこまねぎながら喋る白い上着を着た彼の胸元は大きく赤くTの文字が刻まれていた。
『おーっと焦るんじゃないぞ、まだ食事は始まったばかりだ。まだ行ってはならんぞ。今行っては手ぶらで神の御前に出向くことになる。そんな不信仰はしちゃいけねえ』
彼は時折同じような口調で喋りだすくせがあるようだ。手綱を引き、馬を反転させながら後方の人間を確認するとざっと30人ほどいるように見える。体つきをごまかすようにつけられた甲冑の持ち主たちの顔は兜のせいではっきりとは見えないがまだそれほど歳をとっているように見えない。14,5歳といったところか、、、
『ん?どうしたセベク?』
赤みがかった青年のことである。岬から戦況を確認しようとしたのだ。相変わらず表情に変わりはない。表情がないというか、単に当てつけで冷たくしているようにも見える。青年は顔を見上げた。空は青く、鷹が飛んでいた。
半刻が過ぎたころラッパの音が無くなった。前線にいた兵が黒い波に飲み込まれ、次は自分の危険を感じ、音楽隊が走りだしたのである。管楽器から土の打楽器へと変貌する。
『ありゃあ、やられちまったかあ』
呑気に頭をかけながら言うが、彼は味方なのである。
『きたきたきたぁ』