春の雪
暖炉の前で揺れる椅子に座る
老婆がゆっくりと話す童話の
幻みたいな世界のことだと
今日を迎えるまで思っていたよ
外は季節外れの雪が舞い
浮き立つ街の熱を冷ましている
白い世界に想いを馳せるけど
雪はアスファルトを黒く染め上げる
うずくまって歩く人を横目に
桜の花は凛々しく咲いている
滲み出ている少しばかりの
奇跡を抱きしめて生きたいよ
知らない物語を紡いでいくのは
誰かじゃなく自分自身だと
冷たい風を頬に受けては
見上げた桜は舞い落ちる
溶けていく雪と
混ざり合って踊る
世界はそう あの時見た
幻のようなんだ
いつかこんな奇跡みたいな
暖かさで誰かの心を溶かせたらな
読んでいただき、ありがとうございました。