69品目:共感する第二胃
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「うわ。これは……まずいことになったな」
シロウトナガスウオ。
南瓜王カボチンヘッド。
今までシークレットボスを食べたあと、私のステータスには劇的な変化が起こってきた。
そして、今回もまた1体。私はシークレットを食べた。
3体目のシークレットボス……カースドール・キリミ。
シークレットボスを食べた恩恵は、通常のレベルアップによる成長とは比べ物にならない。
だからこそ、胃以外はALL1のピーキー高難易度キャラのイータマンで、私がここまで進めてこれたといっても過言ではない。
「おんちゃんのいうことをきいて、ステータスを確認しといて良かった。
もし、思い込みで確認していなかったとしたら……」
最悪の光景を想像して身震いする。
看板称号の効果に助けられてたし、PTを組んでたことで気が緩んでいたのかもしれない。
自分のステータスを確認して、私は自分の甘さを痛感することになった。
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キャラネーム:くぅーねる(女)
種族:イーターマン【Eaterman】
ステータス一覧
LV:18
JB:調理人(駆け出し)
HP:90
MP:25
SP:33
STM:∞
STR:33
VIT:53
DEX:53
INT:19
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レベルは上がってた。うん、それは良し。
あんな大変なシークレットボスを倒したんだから、最低でも1は上がってると予想していた。
問題はステータスの方。今回、シークレットボスを食べたが劇的なステータス上昇はなかった。
それどころか、逆にHPやVITがマイナスになっている。
「イーターマンにも身体に合う食材と合わない食材があるってことなの?」
イーターは世界の均衡を無視して全て食べ尽くす種族。
それが知能を持った種族であるイーターマンは知能と共にオリジナルとは違う特性を取得したのかもしれないな。
少なくともキリミは私と相性が良くなかった。
食べても食べてもお腹が満たされないのは辛く厳しい戦いだったもんね。
「はぁぁぁ。試合に勝って、勝負に負けただなぁ……」
レベルはあがったけど、ステータスとしてはレベルダウンだ。
せっかく苦労して食べたシークレットボスだけど、今回は残念な結果となってしまったか。
「敵を食べても必ずステータスのプラスとなるとは限らない」
それが分かっただけでも、大きな収穫だと前向きに考えよう。
「というか、なんでもかんでも食べて全部プラスになっていくなら、ゲームバランス崩壊だよね。
最初さえ耐えてずっと食べ続けたら最強キャラになっちゃうもん」
『食べる』にもリスクがある。
それを知ったところで、今更食べるのをやめるつもりはない。
何が食べるとプラスになって、何がマイナスになるのか覚えていく必要はありそうだけど。
「結局のところ、『食べる』ことで覚えていくしかないよね!」
こっちは道草食って死んだことだってあるんだから。
今更食べることを恐れたりはしないのだ。イータマンらしく、食べて食べて食べるべし!
「あとは、スキルと神器も確認しておこう。こっちはどうなってるかな」
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メインスキル
★食べるLv12<エンラージLv10、識別(味覚)Lv10>
★無限を秘めし4つの胃袋(2/4)Lv2<消化促進Lv2、状態異常耐性、
★共有する第一胃、New:★共感する第二胃、精神異常耐性>
拾うLv2<高速採取>、投げるLv5<精密Lv3>
生産スキル
調合Lv5<識別(視覚)LV1>、調理LV1
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スキルはざっとこんな感じ。
よかった。スキルレベルまで下がるってことはなかったみたいでちょっと安心した。
大きな変化といえばやっぱり新しく追加された胃のスキルかな。
「共感する第二胃、か。2つめの無限の胃袋。さて効果は?」
私はさらにスキル名をタップして、付属スキルの説明を確認した。
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付属スキル:★共感する第二胃
1:神器:ラーズグリーズを装備した状態で発動可能。相手の思胃を捕縛キャッチすることが出来る。形のないものを取り込む事ができる。
2:捕縛した思胃を自分の思胃と融合させることで以下の効果を得る。
・相手の思いに共感し、バフもしくはデバフを得る。
・共感しすることで、相手の経験したことを追体験して経験値を取得する
・相手の意識が自分より強い場合、精神を乗っ取られる。相手の意思が自分より弱い場合、相手を支配してしまう。最悪精神を食い尽くしてしまう。
3:この胃に収められたものは■■■■の糧となる。
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「ええっと? どういうこと?」
思ってたより謎なスキルだった。形のないもを取り込むことができるとは……。
呪いも形はないよね。で、このスキルのおかげで私は形のない呪いを食べた。
追体験して経験値を取得……あ、キリミを食べた時にみた記憶のことかも。
「物理的なものじゃなくて、精神的な、えっと概念てきな? ものを食べることができるって解釈でいいのかな?」
じゃあ肉体がないゴーストとかふわっとした存在を食べることができるかもしれない。
ふさっとした存在。ふわふわ……わたあめみたいな味がするのかな。じゅるり。
「で、相手の精神状態に応じて、私にいい効果がでたり、逆に悪い効果がでると。
ううん……使いどころが難しい。経験値をもらえるのはわかりやすいし、良い効果だね」
その次の説明がこれまたこのスキルを扱いにくくさせる文章になっている。
「共感した相手の思いが私より強かったら、私が乗っ取られてひどい目にあう。で、逆に弱過ぎたら、これは……え、相手がやばいことになるの? 廃人?」
相手を支配してしまう。最悪精神を食い尽くしてしまって、怖い説明だ。
いや、これどうしようか。今の私じゃ上手く使える自信がない。
幸いというか神器を装備してないと発動しないなら、スキルの暴発の心配はしなくていい。
「しばらくは封印しとこう……」
キリミに対して上手くこのスキルが発動したのは偶然だな。
おそらく、リトルヒーローの効果とPTを組んだ恩恵があったからキリミに乗っ取られずに済んだだけ。
それがなかったら、きっと逆に操られて即座にクエスト失敗だっただろう。
今にして思えば、ギリギリの綱渡り状態だ。
「『この胃に収められたものは■■■■の糧となる。』これもなんか、不穏なんだけど」
最期の説明は全く不明。何かの糧になるらしい、以上。
■■■■ってなんだろう。レベルが不足していて見れないのか。
無限の胃袋の時みたいに、スキルが育ったら判明するのかもしれないね。
「ステータスといい、スキルといい……なんでこんなことに」
もしやこれがキリミの呪いなんじゃ……。
脳裏でキリミがざまぁみろと高笑いする光景がよぎる。
「じ、神器! 神器も確認しよう! さすがに良いものでしょ。
なんといっても神器なんだし、ヘッドドレスからもらったものだし」
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神器「ラーズグリーズ」
堕ちた戦乙女ヘッドドレスから授かった刃の欠けた包丁が真の姿を現したもの。
小さな英雄の力に反応して、戦乙女たちが刃に宿り力を貸す。
ATK:444 斬、打
装備固有スキル
「神降ろし」:戦乙女が装備に宿り、神器の持ち主に力を与える。
「計画を壊す者」神降ろしによって降臨する戦乙女。「食べる」を「食らう」に変化させる。
■■■■の■■を制御する。
ラーズグリーズ
私は自由を愛するものの味方。神々の思惑もその身に宿る血の支配も。
貴方が望まないものたちから解放しましょう。
貴方を阻む計画全てを破壊しましょう。
私の小さな英雄様。どうぞ英雄らしく思うままにお逝きください。私は貴方とともに。
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「ひえ。こわぁ……」
なんだこのフレーバーテキスト怖すぎる。いや神器だから性能は強いよ。文句はない。
だけど、なんなのこのちらほら見え隠れする不穏と死は……。私、殺されるの?
「私が死んだら連れて行きますよっていう宣告にしかみえない……」
私は死なんて望んでないからね! だから死から解放してね!
えっと……ちゃんと守ってよ!? 頼むよラーズグリーズ!!
「こほん……この説明を見ると、ラーズグリーズ以外の戦乙女も神器に宿りそうな感じがする」
戦乙女たちが刃に宿り力を貸す、と書いてある。
つまり戦乙女は複数いて、条件に応じて神器に宿る戦乙女が変わるのかもしれない。
そして小さな英雄の力に反応、とあるから神器を発動させる条件の1つとして、リトルヒーローのセットが必要なんだろう。
「■■■■の■■を制御……。■■■■の……一体、何を制御する必要があるの?」
■■■■の正体はなんなのか。
「う、ぐぅうっ……!!!!」
■■■■について考えるだけで、ぞっと全身に寒気がした。
ぎゅっと心臓を冷たい手で握りしめられてるような痛み。
「はぁはぁ……。こ、これ以上、深入りするのは、やめよう……」
私はいつの間にか膝をついて、肩で息をしていた。
アリアが悲鳴をあげて、こちらを心配そうに見ている。
もう大丈夫だよ、アリア。
無理やり頭からソレを追い出してしまえば、噓みたいに身体が楽になった。
今はソレについて触れない。それが正解のようだ。
ステータス。新しいスキル。神器。そして、私の中にある未知の何か。
とりあえず、私の状態は理解できた。よし。
「気分転換に茶碗無視でも食べようっと」
頭を使ったらお腹が減る。これは現実だろうが仮想だろうが変わらぬ真理である。
私はエイジスさんにお土産としてもらっておいた、お持ち帰り用茶碗無視を取り出すと、スプーンですくってあむっと口に放り込んだ。
感想、誤字報告ありがとうございます。




