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仮想胃袋∞系ようじょはリアル底なし胃袋系女子  作者: 猫猫全猫
思惑よりも大事なご飯と2章
63/72

62品目:カースドール・キリミ

小説を閲覧いただきありがとうございます。

感想、評価、ブクマ等いただけましたら、作者は大変喜びます。

どうぞよろしくお願いします。

「お待ちしておりました。お客様」


 にこにこと愛想よく出迎えてくれたキリミ。

 それだけを見れば、無害で愛想の良い店員だろう。

 だけど、ここは巨大おにぎりの最深部でキリミの胸には不気味に輝く歯車が光っている。


 まさか、キリミと戦うことになるとは。


「魚王はどうしたんですか?」

「大変申し訳ありませんが、おにぎりの具として不適切だったので具材変更をさせていただきました」

「それでお前が出てきたというわけか」


 私をかばうように、ロジエさんが前に出てキリミを睨みつけた。

 腰に装備している魔導書を手に取って構える。攻撃の準備は出来ているとでもいうように。


「さぁ、どうぞ私を召し上がりください。お客様」


 どうぞと言われて素直に頂ける雰囲気じゃないんだけど。

 でもキリミは無防備に両手を広げて、さぁ食べろと言ってくる。


「どうしました? 食べないんですか? もしかしてギブアップでしょうか?」


 いや、ギブアップとかありえないから!!

 キリミの言い方にカチンと来た私は『食べる』の狙いをキリミに定める。


「食べるに決まってます!!」

「おい、くぅーねる。ちょっと待てっ!!」


 ロジエさんが引き留めるが、私がそれを無視してスキルを発動させた。


「キリミを『食べる』っ!!」

「ふふ。たっぷり召し上がってください。お客様」


 本当に拍子抜けするくらいキリミは無抵抗だった。

 『食べる』がキリミの右腕を奪う。口に広がるのは少量の金属。

 それから大量の藁。


「な、なにこれ? 藁?」

「藁? あいつはマキナだろ? なんで藁なんかが混じってるんだ」


 ロジエさんの言う通りだ。マキナのキリミから大量の藁が出てくるなんて。

 藁で出来たロボットてありなのかな? 自然環境に優しいエコロボット?


「だからって藁で作らなくてもいいだろう」

「うーん。そうですねぇ。まぁ、金属よりは食べやすくていいですけど」

「……藁がか?」

「はい」


 ロジエさんがなんか遠い目をしてる。私何か不味いことでもいったかな?


「あは。あはははっ。いいですねぇ。いい食べっぷりです」


 右腕が無くなったというのに、キリミはケタケタと笑う。


「最後まで召し上がってくださいよぉ。おきゃくさまぁ。このキリミを存分に味わってください」


 お代わりをご用意しますからね。

 キリミが告げると、右肩からはみ出た藁が伸びて欠けた右腕を再生した。


「もっと、もぉーっと。食べてくれないと困りますよぉ」


 ふむ。これは弱点を食べないと倒せない系か。

 恐らく胸のところにあるパーツを食べれば再生しなくなるだろう。

 

「パーツ丸ごと食わないと、すぐ再生するみたいだな」

「そうですね。お腹もぺこぺこですし、たくさん食べてやりますとも!!」

「え? あれだけ食べて、まだ減るのか!?」

「余裕で食べれますよ!!」


 腹ぺこアピールにロジエさんが怪訝そうな表情をする。

 何せイーターマンですから。腕一本程度じゃ物足りないんですよ。


「他の区画から連絡は……来てないか。ほどほどにな。間違っても倒すなよ」


 やっほー!! がんがん食べてるぞーーーーっ!!

 再びキリミをターゲットに『食べる』を発動させる。

 食べれば食べるほど再生する。つまりお代わりし放題ってことだ。

 お望み通り食べてやろうじゃないか。


「さぁ。召し上がれ?」

「いただきますっ!!」


 ***


 ロジエさんは見てるだけでいいですよ。

 そう言われたので、俺はくぅーねるの様子を見守っていた。

 もちろん、少しでも危険だと感じたらすぐにでも助けられる状態ではあったが。

 

 イーターマンという滅多にお目にかかれない種族を観察する絶好の機会だ。

 種族特性や固有スキルを確認するまたとないチャンスでもある。


「もしゃもしゃ……。ごくん」

「ふふ。お代わりはどうです?」

「いただきますよ!! はぐっ!!」

「うふふ。また食べられちゃいました。でも、この通り……再生しました。

 さぁさぁ。どんどん食べてくださいね」

「言われなくても!!」


(とても戦闘中とは思えない会話だな)


 くぅーねるの主な使用スキルは『食べる』。

 ナイフによる近接攻撃、もしくは遠距離攻撃を使用する。魔法は使わない。

 敵の攻撃には、守るよりも回避を優先している。なかなか良い動きだ。

 『食べる』を除けば、戦闘スタイルは盗賊に近い気がする。


 手数が少ないのが気になる。もう少しスキルの種類を増やすべきだろう。

 今のままだと『食べる』に頼りっきりだからな。


 総合的に判断すると、くぅーねるのプレイヤースキルは高い。


「本人は自覚がないようだが」 


 とても不遇種族を使用しているとは思えない。良い逸材だ。

 

「……例の件、考えてもいいかもしれない」


 ルゥリヒトから持ち掛けられた時は却下したが。

 

「このイベントが終わったら、誘ってみるか」


 ちょうど、ギルドに寄る用事もあることだしな。


 ***


 何かが可笑しい。

 それに気づいたのはくぅーねるがキリミを3回食べた時だった。

 いや、違う。違和感を感じたのはもっと前か。確かこのやりとりをした時だ。


 『そうですね。お腹もぺこぺこですし、たくさん食べてやりますとも!!』


 『え? あれだけ食べて、まだ減るのか!?』


 『余裕で食べれますよ!!』


 そりゃあアイツの種族はイーターマン。STM(胃)は無限だ。

 その気になれば1日中ずっと食べていられるだろう。

 だが、食べた後に腹が減ったというのには、違和感がある。


 味の感想を言うでもなく、ただただお腹が減ったと。アイツはそう言った。


「ぜぃ……ぜぃ……」

「うふふ。どうしましたかぁ? お腹がキツいのでしょうか?

 茶碗無視を平らげ、偉大なりを飲み込んだ貴方なのに」

「全然っ。お腹が……減って、減って……仕方ないっての!!」

「じゃあ、もっと食べてくださいよぉ。食べるスピードが落ちてますよぉ?」

「くっ。当然、『食べる』っ!!」

「あははっ!! そうです!! そうですよぉおお!! 食べてくださぁあーい!!」


 何だ。これは。

 キリミを食べるたびに、くぅーねるは苦しそうにしている。

 顔色が悪くなり、動きも鈍くなっていた。


 お腹が一杯で食べれないというのは、イータマンの仕様的にありえない話だ。

 じゃあ、何がアイツを苦しめているというのか。


(そういえば、パーティを組んでいたな。

 パーティ画面からくぅーねるのステータスを確認するか。

 どうもソロばかりやっていると、パーティ画面の存在を忘れる)


 近々、ギルドで迷宮の攻略もあるっていうのに、これは不味い。

 このイベントが終わったら、パーティでの戦いも慣らしておかないと。

 

 おっと、今はくぅーねるの方が先だな。アイツのステータスはどこだ。

 ……これ、だな。えーっと。状態異常のマークが。いつの間に。

 1つは怒り状態。これのせいで周りの声が聞こえない状態になっているようだ。

 もう1つは、少し厄介な状態異常が掛けられていた。


(何か企んでいるかと思ったら、そういうことか。

 だが、俺がいるのを忘れてもらっちゃ困るな)


 俺は密かに『アナライズ』を起動する。ターゲットはもちろんキリミだ。

 幸い、アイツはくぅーねるにかまけていて俺にはノーマークだった。

 ずいぶんと舐められたものだな。


 左目に映し出されるキリミの情報を見ながら、手にもっていた魔導書を開く。

 本質を見通す錬金術師に隠し事が出来ると思うなよ。


「禁書『人造精霊<レプロエレメンツ>』起動」


 ***


 お腹が痛い。苦しい。辛い。

 こんなに食べているのに、そんなことを感じるなんて初めての経験だった。

 何かが変だ。一度、食べるのを中止するべきだろうか。


「ふふふ。どうしました?」

「くっ」


 けれどキリミの顔を見ると、無性に腹が立って仕方ない。

 食べる手を止めることが出来なくなる。


「お腹がキツいのでしょうか?」


 違う。お腹は減ってるんだよ!!


「茶碗無視を平らげ、偉大なりを飲み込んだ貴方なのに」


 茶碗無視。偉大なり。美味しかったなぁ。

 って!! 余計なこと言わないでよ!! もっとお腹すいたじゃん!!


「じゃあ、もっと食べてくださいよぉ。食べるスピードが落ちてますよぉ?」


 こんにゃろー!! 食べて、食べて、食べまくってやるっ!!


「あははっ!! そうです!! そうですよぉおお!! 食べてくださぁあーい!!」


 口に広がる藁を咀嚼。そして、お腹の底から来る痛みに耐える。

 もう一口と、スキルを発動させようとした何かに阻まれた。

 

「『水人形<ヒュドール>。くぅーねるを保護しろ!!』」

「***。***」

 

 ロジエさんの声がしたかと思うと、私の体は水の中に閉じ込められた。


「ごぼっ!? ごぽぽぽっ!!(なにこれ!? ちょ、溺れるっ!!)」

「落ち着け。その水の中では呼吸は出来るはずだぞ」

「ごぽん(本当だ)」


 確かに言われてみると、全く苦しくない。

 それどころかとても居心地が良かった。

 水を飲んでみると、身体がぽかぽかと温まって胃の痛みが和らいでいく。


「****」

「ああ。助かった」

「***。*****?」

「問題ない。好きなようにしろ」

「***、**** ****」


 うーん。ロジエさんが人の形をした水の塊と話してる。

 けど、何を話しているかさっぱりだ。


「彼女の食事を邪魔なさるおつもりで?」

「何が食事だ。ずいぶんと失礼なもてなしだな」


 先ほどの嬉しそうな表情から一転して、増悪に満ちた瞳でロジエさんを睨みつけるキリミ。


「『飢餓の呪法』だろ」

「……っ!!」

「キリミ。お前の身体の構成素材。つまりこの藁にはその呪いが込められていた。

 食べれば食べるほど、腹が膨れるどころか減る一方の呪いがな」


 ロジエさんの手にはキリミの藁が一握り、握りしめられている。

 まさか、そんな呪いが仕掛けられていたなんて、どうりでお腹が満たされないわけだ。


「何でも食べるイーターマンの性質を逆手に取った実に有効な罠だ」


 ちょ! ろ、ロジエさん。私がイーターマンだって知ってたの!?

 うわー、あとで口止めしとかないと。あと、キリミ。良くも呪ってくれたな!!


「あーあ。バレちゃいましたかぁ……もっと持つかと思ったんですけどねぇ」


 ぐぬぬ、あっさり認めちゃってる。

 ロジエさんに呪いが看破されたキリミは、もはや丁寧に取り繕うのを止めた。


「それでぇ? あのイーターマンの次は貴方が私の相手になるんですかぁ?」

「いや。それはない」


 好戦的な態度のキリミに対して、ロジエさんはあっさりと否定。


「お前ごときに、なんで俺が直々に戦わなくちゃいけないんだよ。面倒くさい」

「なっ!?」 

「生憎だが、雑魚は間に合ってる。道中のおにぎり共で腹いっぱいだ」


 道中に出てきたおにぎりと、ここのボスであるキリミを一緒にしちゃ駄目だって!!

 ほら、キリミも怒りで身体がぷるぷるしちゃってるよ!!


「ヒューマンがっ!! マキナを侮辱するとはいい度胸ですねぇ!!」

「マキナを侮辱したつもりはない」

「今、この私を、侮辱しただろうがぁ!!」


 腕の一部を刀状に変化させ、キリミがロジエさんへと切りかかる。


 ガキンッ!!


 刃は突如現れた岩の壁に当たり、キリミは後方へ弾き飛ばされた。

 岩の壁はすぐに崩れ去る。いつの間にかロジエさんの隣には水の人形ともう1つ、土で出来た人形が追加された。

 

「土人形<ソルドール>。良くやった」

「□■□■。□■」


 うーん。こっちの人形も何言ってるか分からないや。


「よ、くも……よくも、よくもよくもよくも!! ヒューマンのくせにっ!!

 マキナよりも劣る下等生物のくせにっ!! よくも私をっ!!」

「キリミ。お前はマキナじゃないだろう」


 ロジエさんの言葉にその場の空気が固まる。

 

「ロジエさん。キリミがマキナじゃないって本当ですか?」

「ああ。この目で見たから間違いない」

 

 アナライズを使ったのか。

 キリミは先ほどの怒りはどこへやら、驚愕から言葉を失っていた。

 

「ちが……私は……マキナだ」


 何とか言葉を拾い、途切れ途切れにキリミはそう主張する。


「いいや。間違ってなどいない。お前はマキナじゃないんだよ。キリミ」 


 キリミの主張を踏みにじり、冷たい口調でロジエさんはきっぱりと否定した。

 「やめろ」「黙れ」とキリミはロジエさんに罵声を浴びせる。

 けれども、ロジエさんは止めなかった。畳みかけるようにその言葉を口にする。


「金属の鍍金に包まれた哀れな人形。それがお前の正体だ。

 そうだろ? 『レプロドールの藁人形』」

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